高校生小論文コンクール
「金融と経済の明日」第8回高校生小論文コンクール(平成22年)
講評
「金融と経済の明日」第8回高校生小論文コンクールは、「あなたのライフプランと働くことについて考えよう」「超高齢社会におけるこれからの年金・保険」「世界における日本の経済について考える」「日本経済を活性化する将来有望な産業とは」「消費者としてのルール」「その他(自由テーマ)」の6つのテーマに対し、全国から1,188編の作品が寄せられました。厳正な審査の結果、特選5編、秀作5編、佳作50編の入賞作品が決まりました。特選の5編を紹介します。
特選・金融担当大臣賞「これからの消費者を育てるために」は、「お金を体で感じることが難しい」電子マネーの普及による身近な消費生活の変化から、お金のあり方の変容とその危うさに目を向け、将来のより良い消費者を育てるための金融教育の必要性を論じた作品です。「お金の重要性が理解できるようになれば、そのお金を使って手に入れるものの大切さも分かるようになる」という筆者が提案する金融教育のアイデアの具体性や、着眼点の良さ、多重債務問題にも触れる視野の広さが高く評価されました。
特選・文部科学大臣賞「世界に誇る『時間の正確さ』を産業化へ」は、ニューヨークを訪れた際に再発見した日本社会の「時間の正確さ」に着目し、これを商品化することを提案しています。人やものを時間通りに届ける「高い定時性」は、「日本の強み」だとし、例えば物流システム全体と一体化して世界へ提供するなどにより「日本発」の商品やサービスの評価が高まり、日本経済が活性化すると述べています。伝統と文化が育んできた「当たり前のこと」を商品化するとのユニークな発想が支持されました。
特選・日本銀行総裁賞「今、日本の観光産業について考える」は、我が国が有する有形・無形の歴史・文化遺産を地域の発展に活用することを考え、「日本遺産」として世界に発信する手立てを論じています。「文化を産業に押し上げる」ツールとして、インターネットの有効性に着目しました。3Dなどの最新技術を活用したコンテンツが、「直接見たいという強い欲求へと導く」と、具体的な提案をした点が高く評価されたほか、グローバル化の対抗軸として地域の多様性の価値に着目したことも好感を集めました。
特選・全国公民科・社会科教育研究会会長賞「命の値段」は、祖母の病気をきっかけに、高額療養費制度など、病気の人やその家族を支援するしくみがあることを知り、医療制度の現状と今後を考えています。国の医療費負担は増加を続けているが、「安易に医療費を抑制してしまえば、現場の医療が疲弊する」と、制度の本質や課題を的確に捉え、医療現場が健全に機能するシステムづくりと財源の裏づけを早急に行う必要性を訴えました。資料を読み込み、社会全体に関わる問題を考察した点が高く評価されました。
特選・金融広報中央委員会会長賞「超高齢社会の中で年齢という壁を壊す」は、年金制度を軸に、社会保障問題を分析し、「定年以上」の人々のパワーを生かした新しい社会づくりを提案しています。高齢社会の現状を理解し、「意欲あるシニアに働く場を提供する機会をしっかり設けること」を提言しました。「定年以上」の人々を介護や保育、農業の新戦力と捉える自治体の例を紹介し、「働くことは社会に貢献すること」であり、「仲間とのつながりを実感できる」とシニア側のメリットも指摘しています。社会の活性化に向けて元気な高齢者に注目した着眼点が高評価につながりました。
このほか、地域おこしや経済活性化策、超高齢社会への対応や年金問題への対応、農業の将来を、ニュースや新聞などを参照しながら論じた作品が入賞しています。小論文では、ただ感想を述べるだけではなく、自ら考察したことを意見や提言として他者に伝えることが重要です。
また、今回、文献やデータを参考にしつつ自らの考えを論じたり、論拠の一部として使用する作品が多くみられました。このように、データや資料を活用することは、説得力のある小論文を書くことにつながりますが、利用した情報の出典は明記する必要があります。小論文の仕上げ段階において、誤字脱字などをチェックするとともに、出典を明記しているか、しっかり確認して下さい。