金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2019
先生のための金融教育セミナー
「新学習指導要領の下での金融教育」
講 師
教職員支援機構
大杉 昭英 次世代教育推進センター長
学習指導要領は、「これからの教育をどうしていくべきか」という「問い」への答えとして作られたものです。知識の伝達だけにとどまらず、子どもたちが学んだことを実社会や実生活の中で生かしていけるようにするにはどのような教育が望ましいのか。その「問い」の答えが学習指導要領であるわけですが、このような教育を目指すようになった背景を考えることで、学習指導要領をより理解しやすくなると思います。
この背景には、OECD(経済協力開発機構)が、子どもたちにこの力が身に付けば、自分の生活を豊かにし、かつ社会がうまく運営されるであろうとして定義したキー・コンピテンシーというものがあります。コンピテンシーは能力という意味で、キー・コンピテンシーは次の三つに集約されます。1.異質な集団で交流する能力、2.自律的に活動する能力、3.相互作用的に知識や情報などの道具を用いる能力です。この考え方を源流として、日本でも、育成すべき資質・能力の三つの柱、つまり、生きて働く「知識・技能」を身に付けること、未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」を育成すること、学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養を目指しているのです。だからこそ、学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」というスローガンが掲げられています。
ただし能力は身に付け方を教えただけでは育ちません。たとえば、自転車は乗り方を子どもに口頭で説明しただけでは乗れるようになりません。考える力も考える学習活動があって初めて身に付きます。判断力や表現力も同じです。そこで、能動的・協働的な学習活動、つまりアクティブ・ラーニングが重視され、「主体的・対話的で深い学び」を通して、資質・能力を育成することが求められるようになりました。特に活動の質を保証する「深い学び」については、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して自分の考えを形成したり、問題を見い出して解決策を導き出せるようになることが目指されています。つまり、知識とコンピテンシーの両方を身に付けることが必要ということです。
金融教育を展開する際に意識すべき概念や視点として、「希少性」、「選択」、「トレード・オフ」、「効率」、「公正」等があります。たとえば、自分が持っているお金では欲しいもののうちどちらか一つしか買うことができないという「希少性」、では自分はどちらを買うかという「選択」、そして選択するときに、自分にとって善いことは果たして社会にとっても善いことだろうかと考える「公正」という視点です。日常生活の問題を、金融・経済に関わる知識を活用しながら判断するときに、公正で持続可能な社会を形成していけるようにすることが金融教育の目指すところです。
基調講演の模様
講師プロフィール
公立学校教員、広島県教育委員会指導主事、文部省初等中等教育局教科調査官(社会・公民)、同視学官、岐阜大学教授、国立教育政策研究所初等中等教育研究部長、教職員支援機構次世代型教育推進センター上席フェローを経て、2018年より現職。
- 主催:金融広報中央委員会、福島県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、福島県、福島市、福島県教育委員会、 福島市教育委員会、福島県小学校長会、福島県中学校長会、福島県高等学校長協会