金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2019
先生のための金融教育セミナー
「新科目『公共』における主体的・対話的で深い学びを実現する授業展開」
(高等学校1~3年、政治・経済、現代社会、公共)
講 師
東京都立西高等学校
篠田 健一郎 指導教諭
【進行・コメント】 教職員支援機構 大杉 昭英 次世代教育推進センター長
<実践発表>
今日ご紹介するのは「NPOをつくろう」という活動で、前任の先生の時代から約16年続いている活動です。高校1年生の3学期に総合的な学習の時間を使って行っています。この取り組みのねらいは、教科の枠を超えて今まで勉強してきたことを総動員し、自分は何者なのか、自分は社会から何を期待されているのかを見つめ直す機会をつくることです。
人は失敗から学び、失敗の数だけ成長します。学校という枠の中で取り返しのつく失敗をたくさん重ねて、のびのびと成長してもらいたいと思っています。短期間で覚えた知識は比較的すぐに忘れてしまいがちですが、試行錯誤して苦しんでやっと得たことはそう簡単に忘れません。授業では、本当に教えなければいけない部分は教師がきちんと説明しますが、その場合でも考え方や見方といった部分を中心に説明し、あとは生徒と色々なやりとりをしながら進めていく形をとっています。生徒は、体験を通して自ら知識を得たり、互いに教えあったりして成長していきます。そのために、外部の方やOB・OGの力も借りて、色々な経験をさせる仕掛けを作るようにもしています。この「NPOをつくろう」の活動も、本校が使える資源を使い切る気持ちで行っています。
この活動は、社会的課題を見い出して解決に向けて問いを立てて答えを探る活動です。生徒は企画書を作って、プレゼンテーションを重ねます。企画書には「グループの名称」や「コンセプト」、「企画の強み」、「企画の目標(受け入れられる見込みや継続性)」を書き込みます。プレゼンのときは模造紙を使います。今の高校生はパワーポイントでさっと作れてしまいますが、あえて模造紙でアナログにやることに意味があると思っています。これまでの生徒の作品例としては、「農家が6次産業化できるよう応援する」、「マイノリティのスポーツを紹介する」、「社会的弱者への差別や偏見をなくすための啓蒙活動をする」などがあります。どの例を見ても、生徒と社会との接点があることや、色々な教科の学習成果が出てくることがお分かりいただけると思います。また、この活動はグループに分かれて行いますが、グループ名やコンセプトがしっかりしているグループはうまくいくことが多いです。グループ名なんてと意外に思われるかもしれませんが、ここがしっかりしていないと途中で方向性を見失ってしまいがちです。
世の中にはレベルの高い授業実践がたくさんあると思います。そういう実践ももちろん大切ですが、今日は「これなら自分にもできそうだな」と思っていただき、先生方の学校に持ち帰って、今後の授業のヒントにしていただければと思っています。
<ワークショップ>
各グループで一つずつNPOを企画し、企画書とポスターを作成しました。各グループの代表が一斉にプレゼンテーションを行い、代表以外のメンバーが他グループの発表を聞いて情報収集しました。その後、各グループ内で情報を共有して自分のグループの発表内容に修正を加え、最終プレゼンと投票が行われました。最も票を集めたグループが最後に全員の前で発表を行いました。どのグループも真剣で、熱を帯びた議論や発表が行われました。
<コメント>
大杉昭英先生より、次のようなコメントがありました。
金融広報中央委員会発刊の『金融教育プログラム』に「金融教育の4つの分野と重要概念」が明記されています。4つの分野の1つに「キャリア教育に関する分野」があり、その中に「社会への感謝・貢献」があります。篠田先生の実践は、「NPOをつくる」活動を通してまさにこの部分を実現したものでした。
篠田先生がグループの名称やコンセプトをしっかり考えることが大切と仰っていました。グループの名称を考えることは全体像を掴むこと、企画のコンセプトを考えることは色々な知識を結びつけて体系化して一つのものをつくることにつながります。また、実現可能性を高めるために資金調達を考えさせることは非常に重要だろうと思います。そして、企画書の最後の項目にある「受け入れられる見込み、継続性」という視点、つまり自分の計画を客観的に見直して、調整して、修正していくという過程がこの活動には組み込まれていました。学習指導要領の「社会に開かれた教育課程」の発想のとおり、社会と自分を結び付けた金融教育がもたらす大きな働きを見せていただいた、大変充実した実践だと思います。
実践発表・ワークショップ3の模様
- 主催:金融広報中央委員会、福島県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、福島県、福島市、福島県教育委員会、 福島市教育委員会、福島県小学校長会、福島県中学校長会、福島県高等学校長協会