金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2019
先生のための金融教育セミナー


「新科目『公共』における主体的・対話的で
深い学びを実現する授業展開」
(高等学校1~3年、政治・経済、現代社会、公共)
講 師
東京都立西高等学校
篠田 健一郎 指導教諭
【進行・コメント】 玉川大学教育学部 樋口 雅夫 教授
<実践発表>
今日ご紹介するのは、総合的な学習の時間で行ってきた「NPOをつくろう」という活動です。高校1年生の12月もしくは1月から3月までの期間で行っています。この取り組みのねらいは、自分に何ができるのか、自分にできる社会貢献は何か、社会から自分は何ができるようになることを期待されているのかを考えさせることです。
人間は失敗から学ぶものです。学校という枠が守ってあげられるところで失敗を重ねて、「なぜ失敗したんだろう」と考えることから、成功への足掛かりを掴んでもらいたいと思っています。教師が手助けすることは簡単ですが、そうすると生徒は伸びません。教師はサポーターとなって生徒の活動を見守ることが大切です。生徒たちはきっかけがあれば自ら知識を得るようになります。そのために色々な経験をさせる仕掛けを作ります。この「NPOをつくろう」の活動の場合も、実際にNPOを立ち上げた方に来ていただいてお話を聞いたりしながら、イメージを作っていきます。
この活動では、最終的に企画書を作ってプレゼンをします。学校の小ホールでクラス代表チーム8チームがプレゼンテーションを行い、地元の人などに指導・講評いただくということもしております。生徒の作品例として、「農家が6次産業化できるよう応援する」、「子どもの外遊びを支援する」、「訪日外国人観光客に使ってもらうアプリを開発する」などがあり、「地元の商店街を活性化する」というプレゼンでは、商店街の方にお褒めの言葉をいただいたこともありました。
この活動は、生徒がこれまで学んできたすべてを出して、みんなで意見をぶつけ合って作り上げていくものです。その中で単なる足し算ではなく化学変化が起きることがこの活動の良いところです。話し合うことで批判されるアイデアもありますし、言葉の持つ力を再認識することもあります。一緒に活動する仲間のことをよく知る機会にもなります。それが社会に貢献できる人材を育てることにつながると思っています。この後のワークショップでは、先生方にこの活動の一部を体験していただきます。本校の総合的な学習の時間の歩みの一端を感じていただき、活用できる部分があればぜひ持ち帰って活用していただければと思っています。
<ワークショップ>
各グループで一つずつNPOを企画し、企画書とポスターを作成しました。各グループの代表が一斉にプレゼンテーションを行い、代表以外のメンバーが他グループの発表を聞いて情報収集しました。その後、各グループ内で情報を共有して自分のグループの発表内容に修正を加え、最終プレゼンと投票が行われました。最も票を集めたグループが最後に全員の前で発表を行いました。どのグループも真剣で、熱を帯びた議論や発表が行われました。
<コメント>
樋口雅夫先生より、次のようなコメントがありました。
篠田先生のご発表とワークショップは、まさに10年後の高等学校一年生の授業であったと思います。現実社会の諸課題を取り上げ、それをいかに解決するかというところまで考えて発表するという内容は、2022年から実施される科目「公共」の「持続可能な社会づくりの主体となる私たち」の項目と合致しています。
小学校や中学校で、「こんな社会になったらいいな」、「こんなことが実現できたらいいな」と夢を膨らませるわけですが、高等学校の段階では「その夢が実現できるのか」を現実社会に即して考える力が求められます。そして、実現可能かどうかを考えるときに大切なのはやはりコストや費用対効果という観点です。篠田先生のご発表の中に「金融教育」という表現は出てきませんでしたが、活動はしっかりと金融教育の考え方に根差していたと思います。また、10年後の公共の授業の姿と申し上げたのは、来年小学校1年生となる子どもたちが、10年後、高校1年生となって、それまでに身に付けた知識や経験をふんだんに活用し、論拠をもとに他者に説明する授業が展開されていることを願っているという意味です。
また、篠田先生のワークショップには、様々な手法が組み込まれていました。屋台村方式を取り入れたポスターセッション、さらにジグソー法を取り入れて、得られた知識を結集し自分たちの考えをより良くしていく手法などです。その観点からも非常に汎用性の高い内容であったと思います。10年後、さらにはその先を見通して子どもたちの人生を切り拓いていくために、先生方のまた明日からのご尽力に期待をしたいと思います。

実践発表・ワークショップ3の模様
- 主催:金融広報中央委員会、鳥取県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、鳥取県、鳥取市、米子市、 鳥取県教育委員会、鳥取市教育委員会、米子市教育委員会、鳥取県小学校長会、鳥取県中学校長会、鳥取県高等学校長協会