金融教育公開授業
2011年度 金融教育公開授業(全国リレー講座)
長崎県金融広報委員会
長崎市立橘中学校
金融広報中央委員会
長崎の実施報告
「金融教育公開授業 in 長崎(橘中学校)」(11月2日開催)
長崎市立橘中学校は、長崎市東部の高台に位置しており、「自立 敬愛 創造」との校訓のもと、期待する生徒像として「自ら考え、自ら学ぶ生徒」「礼儀正しく、思いやりのある生徒」「きまりを守り、公共心のある生徒」を掲げ、熱心に教育に取り組んでいます。生徒たちは、橘湾を眺望する校舎で、日々、勉強やスポーツに勤しんでいるほか、ペーロン大会(競漕競技)などの地域活動にも積極的に参加しています。
同校は、長崎県金融広報委員会より、金融教育研究校(平成23年度)の委嘱を受けており、金融教育活動の一環として11月2日(水)に3年2組「社会科」で公開授業「身近な生活とお金・価格との関係について」を行いました。また、公開授業に引続き、生活経済ジャーナリストのいちのせかつみ氏による「世界一おもろい経済学」と題する講演会が開催され、全校生徒が参加しました。
▼ 参加者内訳:
生徒562名、開催校教員32名、教育委員会2名、他校教員2名、地域の方1名、合計599名
1.公開授業
身近で具体的な事例を通して、生徒たちが「商品(モノ)」の「価格」の決まり方を考え、経済についての関心を高めるべく、「身近な生活とお金・価格との関係について」と題した授業が行われました。
まず、地球儀、世界地図、パズル、チョークあるいは机・椅子といった学校生活で馴染みの深い「モノ」の写真を示し、それぞれの「価格」がいくらだと思うか、生徒たちに発表してもらいました。各人から発表された「価格」には相当のばらつきがみられたほか、正解(実際の価格)と大きく乖離しているケースもあり、生徒たちの「価格」に関する関心はとても高まりました。
次に、1)夜間のスーパーでのお弁当などの値引き(30%引きや半額のケース)、2)野球観戦のチケットの当日券と前売券の価格差(当日券の方が高い)、3)清涼飲料水の販売形態での価格差(球場内で紙コップに注いでもらう方が球場外の自販機の缶より高い)といった事例を写真や実物で提示し、なぜ同じ「商品」なのに「価格」が変化したり、異なる「価格」になったりしているのか、といった点について生徒たちに考えてもらいました。その後、グループで討議し、グループ毎の考えをまとめたうえで発表してもらい、さらに全体で討議しました。さまざまな角度から多様な意見が出ましたが、それぞれのケースに関して「時間」や「時期」あるいは「人件費」といったいくつかの共通のキーワードに到達しました。そして、生徒たちは、「価格」の決定には、「商品を売る立場(売りたい立場)の人」と「商品を買う立場(買いたい立場)の人」の双方の意向が大きく関わっていることを理解しました。
2.講演会
公開授業の後、いちのせかつみ氏から、「世界一おもろい経済学」と題する講演が行われました。
講演に先立つ開会挨拶において松添校長は、当日、自らの預金を解約して持参したお札の束を全校生徒に提示しながら、お金を稼ぐこと・貯めることの大切さや苦労について自身の経験に基づいて話をしました。その上で、お金を有効に活用することの重要性にも言及し、「お金は人を幸せにもするし、不幸せにもする。皆さんにはそうしたこともしっかりと理解してほしい」と話しました。
こうした挨拶も踏まえ、講演の冒頭で、いちのせ氏は、開催校の教員に「今欲しいものは何?」と質問し、「車」「彼女」「海外旅行のチケット」といったさまざまな答えを聞き出しながら、夢を実現するうえでのお金の重要性や計画的に対応することの大切さを説かれました。また、世界中のお金持ちの血液型がバラバラであることに基づき、血液型と金銭感覚に関係があるかのような俗説を明快に否定した上で、お金にまつわるさまざまな話に振り回されて不幸にならないためにも、自らの頭でよく考えて行動することが重要であることを強調されました。
続いて、将来参考になるデータとして、サラリーマンとフリーターの生涯賃金の大きな違いが示されました。また、プロスポーツ選手や芸能人など有名人の高額年収(本業の報酬のほかCM収入なども含む)についての事例紹介もありました。ただし、有名人の年収は、実績や人気で大きく変動するといった厳しい現実についても説明がありました。
その後、「コンビニ」の入口の場所や商品配置、あるいは「チラシ」のレイアウトや表現、さらには店舗内装や看板の「配色」などについて、売り手側が売り上げを伸ばすために人間の習性や心理を応用して工夫を凝らしている点に関して、身近な具体例に基づいて詳しい解説がありました。中には、チラシに「ゼロ円」と大きく表示されていても、小さな字でさまざまな条件が付されているといった注意を要する事例もあり、こうした事例も紹介しながら、いちのせ氏は「買い物は、売り手と買い手の知恵比べ」であることを説明されました。
結びに、「携帯電話」が取り上げられました。長い目でみた場合、携帯電話の利用料金はとても多額に上るとの試算結果とともに、「携帯依存症」のチェックポイントが示されました。また、携帯電話を介したさまざまなトラブル事例が紹介され、架空請求など悪徳業者の被害に遭わないよう注意する必要があることが紹介されました。加えて、携帯電話のインターネット機能を使った掲示板での何気ない一言が他人を傷つけたり、ブログでの安易な写真掲載が法令違反となってしまったりするケースを紹介し、自らが「加害者」となってしまわないよう、他人への思いやりや十分な知識・配慮が必要であることが強調されました。
生徒たちからは、「普段何気なく利用しているお店やチラシに売り上げを伸ばすためのさまざまな工夫が施されていることに初めて気付いた」とか「携帯電話の利用には注意が必要だと改めて思った」といった声が聞かれました。また、「これからは売り手側の言葉を鵜呑みにすることなく、自分の頭でよく考えて、お金の使い方に気をつけていきたい」との趣旨の感想も多く寄せられました。
3.プログラム
- 14:00~14:50
- 公開授業「身近な生活とお金・価格との関係について」(3年2組・社会科)
授業者:長崎市立橘中学校教諭 榎憲悟 - 15:05~15:10
- 開会挨拶 長崎市立橘中学校校長 松添昇
- 15:10~16:10
- 講演「世界一おもろい経済学」
講師:いちのせかつみ氏 - 16:10~16:20
- 生徒代表 お礼のことば
閉会挨拶 長崎県金融広報委員会事務局長 南井浩治 - 16:25~16:45
- 研究協議会(フリーディスカッション)