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著名人・有識者が語る ~インタビュー~

人生は偶然と出会いの連続 僕はよい出会いに恵まれてきた

俳優・気象予報士 石原良純

俳優、気象予報士のほか、最近では、テレビのバラエティー番組でもタレントとして活躍する石原良純さん。
自身のこだわりや考え方をぶれずに本音で語り、どのような場でも心から楽しむ姿は、世代を超えてたくさんの視聴者から共感を得ています。
テレビ人としての石原さんの姿勢を育んできたものは何か?
これまでの人生を振り返りながら、語っていただきました。

石原 良純
(いしはら・よしずみ)

1962年、神奈川生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1982年映画『凶弾』でデビュー。『西部警察PART-Ⅲ』、『太陽にほえろ!』など数多くの人気ドラマに出演。『つかこうへい熱海殺人事件』など舞台活動も多数。1997年、気象予報士の資格を取得。現在はテレビタレントとしてバラエティー番組でも活躍する。著書に『石原家の人びと』、『石原良純のこんなに楽しい気象予報士』など。

石原裕次郎さんからもらった二つのアドバイス

俳優・気象予報士 石原良純さん

石原良純さんは1962年に、4人兄弟の次男として生まれました。父は、芥川賞作家であり、衆議院議員や東京都知事を歴任した石原慎太郎さん。叔父は昭和の大スター、石原裕次郎さんです。

「親父がいて、叔父がいたから僕がいる。その境遇がよいか悪いかを話しても仕方がありません。でも、一流の人とじかに話す機会だけはたくさんあったかな。それは、すごい財産だと思いますね」。

こう語る石原さんは自身の境遇から得られた出会いをきっかけに、時間をかけて「テレビ人、石原良純」になっていきます。

俳優デビューのきっかけになったのは、叔父、裕次郎さんの入院でした。当時、大学の経済学部で金融論を学んでいた石原さん。4人の兄弟が交代で病院へお見舞いに行く姿が、テレビのワイドショーに映り、映画関係者の目に留まります。そして、デビュー作『凶弾』(1982年)への主演オファーが舞い込みます。

「もしも、叔父が倒れていなかったら、俳優ではなく、商社マンや銀行員になっていたかもしれません。僕が俳優になったように、人生は偶然が大きく左右します。僕はよい出会いに恵まれてきたからこそ、今も仕事が続いています。人生はまさに偶然と出会いの連続ですね」。

俳優の道へ進む決意をした石原さんは、退院した裕次郎さんに挨拶に行きます。石原さんはそのときにもらった二つのアドバイスを今でも鮮明に覚えているといいます。

「叔父からのアドバイスは『時間を守れ』、『きちんと挨拶をしろ』の二つだけでした。あまりにも当たり前なことだったので、『芸能界ってそんな普通の世界なの?』と思いました。でも、30歳を過ぎたころかな、この二つのアドバイスがいかに重要であり、これさえあればどの世界でも食べていけると気づいたのは」。

映画出演を機に、石原さんは、裕次郎さんが設立した石原プロモーションに所属し、『西部警察 PART-Ⅲ』、『太陽にほえろ!』などのドラマに出演し、人気を博していきます。「石原軍団」ともよばれる石原プロでの時間も石原さんにとって大きな財産になったといいます。

「石原プロに入るとすぐに役をいただいて、大学4年生の1年間はずっと『西部警察』の撮影でした。石原プロには大先輩に渡哲也さんがいらして、僕の教育係は舘ひろしさんでした。一番年下だから先輩方の言うことには絶対従う。お坊ちゃん育ちの僕には理屈をつけずに従うというのは理不尽だったけど、新鮮な体験でしたね。先輩方と四六時中一緒に過ごす撮影の日々はとても濃密な時間で、後々僕にとってものすごい力になりました。先輩方とは今も強い信頼感でつながっています。本当によい時間でした」。

つかこうへいさんの舞台で学んだ ぶれずに生きることの大切さ

石原プロの大先輩たちに揉まれながら俳優として数々の経験を重ねた石原さんですが、芸能界での活動の幅をさらに広げたいと考えていました。もっとも石原プロは、芸能プロダクションではなく、ドラマや映画の制作会社ですので、俳優のマネジメント業務に特化しているわけではありません。石原さんは、27歳のとき、意を決して、石原プロを退社しました。

マネジメントを引き受けてくれたのは、編集者として父、慎太郎さんと仕事をしていて、石原さんとも幼いころから親しい間柄だった三原栄子さん。しかし、元々、出版プロデューサーの三原さんにとって、俳優のマネジメントは初めての経験でした。

「まず、テレビ雑誌を買ってきて、気になる番組を選んでプロデューサーを調べ、プロフィールの書類を持ってテレビ局を訪ねます。一般的な芸能プロダクションだとマネージャーだけが行くのですが、三原さんが『普通と同じことをやっていてもらちが明かないから一緒に行きましょう』というので、2人でいろいろなプロデューサーに会いに行きました。

雪が降っている日に、あるプロデューサーから電話をいただいたので、すぐに出かけて行くと、『こんな雪の日でも石原さん本人が来るんだ』と興味を示してくださって、仕事につながったこともあります。そうやって徐々に仕事が増えていきました」。

二人三脚での営業活動から獲得したのが、バラエティー番組への出演でした。当時は俳優がバラエティーに出演することは珍しく、石原さんはその先駆けだったのです。

「映画やドラマの『厳しいものづくりの現場』とは対極の雰囲気で、とにかく楽しい現場でした。ルールなんかなくて、本番ではアドリブの連続。スタッフも大きな声で笑っている。映画やドラマの現場であれば、スタッフが音を出すなんて即NGだけど、バラエティーは楽しければいい。楽しい現場で楽しい番組を作ったら、テレビを観ている人もきっと楽しいに違いない。そんなバラエティーの現場は、厳しいものづくりの現場にいた僕にとって衝撃でしたね」。

その後、石原さんは舞台にも表現の場を広げていきます。きっかけは「とことん芝居を観る」と決めたことでした。

「20代のころは、時間を無駄にするって、もったいなくて嫌いだったんですよ。でも、あるときから考えが変わって、『自分の世界を広げるために、時間は無駄に使わなくちゃいけない』と思うようになりました。時間を作って、自分で決めた『訳の分からないこと』に使い、そしてそれをやり抜く。ある年のテーマは年間に100本の芝居を観ることでした」。

その一つが高校生のころから大好きな劇作家、つかこうへいさんの主宰する「★☆北区つかこうへい劇団」でした。

芝居を観にいくときには、以前から楽屋に顔を出していたこともあり、公演を観に行ってしばらくすると、つかさん本人から、「来年に予定されている舞台に出演しないか」と電話をいただき、出演を打診されました。快諾した石原さんは、35歳のときに「★☆北区つかこうへい劇団」の第5期生として入団。同期生は10歳以上年下の若者たちばかりという新たな環境に飛び込みました。

稽古の中で役者にセリフをつけて、演技を指示するのがつかさん流の演出手法。すべての役を演じ分けるその立ち振る舞いに見入ってしまうことも多々ありました。そして、つかさんの舞台で重要な役割を占めるダンス漬けの日々。石原さんは、芝居づくりの濃密な時間を過ごしました。

「主役を務めていた僕に、つかさんが一つだけアドバイスしてくれました。『主役っていうのはな、正面を見て、夢と希望と青春だけを語ってりゃいいんだよ。その代わり、絶対にぶれるなよ。絶対に揺れるなよ』と。芝居のテクニックだけではなく、生き方にも通じるすごくよい言葉です。人間はどこかぶれたり、揺れたりするんですよ」。

俳優・気象予報士 石原良純さん

日本の空の楽しさ、面白さ それをみんなに伝えたい

石原さんのもう一つの顔は気象予報士です。資格を取得したきっかけは、長年、テレビ番組で気象予報を務めている森田正光さんとの出会いでした。

神奈川県逗子市の海を見渡せる家で育った石原さん。梅雨時に海からの南風が吹くと、自宅から見える小さな山に雲がかかるけど、海や街の上空には雲一つないことを子ども心に不思議に思っていました。

「森田さんは、『そんな不思議を科学として説明できる気象予報士にチャレンジしてみたらどうか』と言ってくれました。子どものころからの謎が解ける、そんな期待を胸に気象予報士の勉強を始めました」。

石原さんが手にしたのは、大学で気象を学ぶ際に用いられる『一般気象学』というテキストでした。第1章のタイトルは「太陽系のなかの地球」。気象学とは「空を見上げる学問」だと思っていた石原さんは、その考えを覆されます。

「太陽があって、地球がある。そして、地球には大気と水がある。この四つがあるから気象現象が起きるんです。気象学は、はるか宇宙から見る神様の世界だと思いました。考えてみれば、気象学は未来を予測する学問だし、精度もすごく高い。明日の株価は予測できないけど、明日の天気はかなりの確率で当たります。

初めて勉強を楽しいと感じて、毎週、神田にあった気象業務支援センターでの講義にも通いました。子どものころに不思議だと思っていた謎には、すべて理屈があって、それが解き明かされていく感覚はとても新鮮でしたね」。

石原さんが気象予報士の資格を取った時期は、ちょうど、世間でも、多くの人々が山歩きなど自然を身近に感じることの大切さに注目し始めたころでした。そんなとき、あるニュース番組のプロデューサーから、石原さんのもとに、天気予報コーナーへの出演打診の連絡がありました。天気予報は、自然災害時に視聴者の生命をも左右します。だからこそ、石原さんは、天気のスペシャリストと一目で分かる人が天気予報を伝えるべきで、タレントや俳優の顔を持つ自分では視聴者が混乱すると考えていました。

「でも、そのプロデューサーは、『石原さんは、空の話を楽しそうにされている。その楽しさを視聴者に伝えていただけませんか』と言うのです。

日本には四季があり、季節ごとに気象の特徴があって、空も豊かに表情を変えている。そんな空は世界にも滅多にないのに、その楽しさ、面白さに気づいていない方も多い。その楽しさを伝えることなら自分にも出来るかもしれないと思って出演を引き受けました。楽しさを知ってもらうには、空を見てもらえればいい。だから、コーナーの名前を『石原良純の空を見よう』にしてもらいました。

そして、『楽しい』ことの裏返しは『怖さ』でもあります。当時は、大型台風や豪雨などの自然災害が今ほど多くはなく、空の怖さを皆さんが忘れていた時期でした。空の楽しさをまず知ってもらったうえで、その裏返しでもある空の怖さも知ってもらえれば、皆さんの役に立てると思ったのです」。

大変なことはたくさんある 楽しいことを探して生きよう

楽しむことを大切にすることが石原さんの一貫した流儀です。子育てでも楽しむことが大切だと石原さんは言います。

「僕はジョギングが好きだから、バギーに子どもたちを乗せながら自分も一緒に公園を走ってみた。自分も楽しいし、子どもたちも大はしゃぎしていました。つまり、楽しみながら時間を共有することが愛することであり、教育そのものなんですよ。

僕の親父は、仕事で家にいないことが多かったけど、帰ると逗子の海岸をランニングする。そんな親父に4兄弟の誰かがついて行く。親父はずっと先を走っていたけど、子どもと時間を共有しようとしていたんだなと思います。親子で同じことをしていますね」。

石原さんはお金に関してどのような考えをお持ちなのか、それも気になります。

「僕は数字が好きです。気象予報で並んでいる数字やグラフには必ず理屈があり、それを考えるのが楽しくて好きです。もし株式投資などを本格的に始めたら、のめり込んで突き詰めてしまう。ただ、そうなると、それは楽しみの範疇を超えてしまうので、ほどほどにとどめています」。

さまざまな挑戦をしてきた石原さん。人生100年時代と言われますが、58歳の今、この先どのように生きていきたいのでしょうか。

「僕は俳優からスタートして、芸能活動を続けてきましたが、自分をテレビ人だと思っています。テレビは楽しいものであるべきだと思うし、僕自身がテレビの仕事をしながら楽しいことを見つけています。どうせ大変なことはたくさんあるのだから、とにかく楽しいことを探そう、楽しまなくちゃ損だというのが自分の生き方でもあり、メッセージですね」。

本インタビューは、金融広報中央委員会発行の広報誌「くらし塾 きんゆう塾」vol.52 2020年春号から転載しています。


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