金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
6.中学校における金融教育
(1)考え方と進め方
<1>中学校における金融教育の考え方と目標
中学校における金融教育は、生徒の発達段階や生活経験を踏まえ、小学校における教育の上に実施される。教育課程において、総合的な学習の時間を活用する場合を除いて金融教育を体系的に実施する時間が設けられているわけではなく、関連の深い教科、道徳、特別活動において重点的に位置付けると同時に、学校としての全体計画の下に実施することになる。
金融教育を実施する際には、金融教育の目標・内容の明確化と教育課程への位置付け、教材の準備と指導方法、学習活動の計画などが必要である。中学校における金融教育の目標を仮に示すと次のようになる。
- 家庭や社会生活における消費、経済、金融、貯蓄、労働等の活動や働きについて基礎的な知識を身に付けるとともに、お金の役割や働くことの意味、望ましい消費生活や自己の将来設計などについて自らの課題として考えようとする意欲と能力、態度を養う。
指導内容については、関係の深い教科、道徳、特別活動の内容を吟味し、それぞれの教科等の目標を踏まえながら金融教育の視点から内容を明確にすることが必要である。
<2>中学生の発達特性と金融教育
中学生の時期の生徒は、こづかいの管理や買い物の経験も増えるとともに、家計や生活設計について理解し、経済や金融と生活のかかわりについて基礎的な理解ができる段階にある。また、勤労や職業の意義、将来の生活についてもある程度具体的に構想することができると考えられる。ただ、小学校から入学したばかりの中学1年生と3年生とでは、社会的事象への関心の度合いや抽象的な概念についての理解度には違いがあると考えられる。生徒の発達や生活経験を十分に踏まえた指導計画が必要である。
生徒の発達特性を踏まえた指導計画を作成するためには、例えば消費や経済、金融、職業などに関して生徒がどの程度の知識や関心を有しているかを、あらかじめ調査しておくことが考えられる。
<3>教育課程の特色と金融教育の進め方
中学校の教育課程は、9の必修教科、選択教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間によって編成されている。特に選択教科は中学校の特色であり、各学年とも必修教科と同じ教科および「その他特に必要な教科」を設けることができる。
金融教育を進めるに当たっては、各教科等の特性を考慮し、金融教育と内容面で関連が深い教科、技能や能力面で関連が深い教科、題材や教材の面で関連がある教科、といったように関連付けを明確にすることが大切である。社会科や家庭科、道徳教育、特別活動は内容面で関連が深く、国語や数学は技能面でその成果を生かすことができる。また、題材としてお金や金融に関することを取り上げて学習することも可能である。
選択教科については、課題学習や補充的な学習、発展的な学習などが可能であり、生徒の実態等を踏まえて、例えば社会科や家庭科において金融や消費者選択に関連する内容を主題的に取り上げて実施することができる。
総合的な学習の時間については、各教科等の関連を明確にしながら金融教育の目標、内容を一定程度明確にした取り扱いが可能である。その場合、取り上げる学習課題と目標、内容、学習活動等を明確にし、全体計画および指導計画として具体化することが必要である。また、生徒一人一人が自分の課題について追究していく学習活動を展開する場合は、調べ方や資料の所在等について教師の適切な指導が求められる。