世代別・スタイル別のライフプラン
ヤングファミリーのためのライフプラン
はじめに
結婚すると、さまざまな「意識の転換」を迫られます。
たとえば、異性の友人との付き合い方。
最初はちょっと窮屈ですが、いくつかのルールを作ってそれを守ると、いらぬ誤解や問題をまねかずにすむのです。
お金のことも同じです。独身の時は好きなようにお金を使うことができましたが、結婚したからには、自分だけのお金ではなくなります。
いくつかのルールを作って、二人でそれを守れば、いらぬトラブルを避けられるだけでなく、ファミリーとしての夢の実現を早めることができます。
ルール1 結婚を機に、お金のディスクローズをしよう
恋愛中は、相手に給料や貯蓄の額を聞くのはタブーかもしれません。でも結婚すれば、これからひとつの「家庭」を経営していくことになるのですから、お互いの経済状況を知っておくことは大切なことです。
正式に結婚が決まったら(決まる前ならなおよいのですが)、自分の給料やボーナスの額、貯蓄の金額と内訳、借金の金額と内訳を相手に正直に申告しましょう。
よくあるのが、隠していた結婚前の借金が後になってバレて険悪になってしまうケース。隠し事はいつかはバレるのですから、できるだけ早く「自己申告」した方が、問題を深刻にせずにすみます。2人で対応策を考えて早めに対処できます。
結婚前にお互いに確認しておきたいことは、女性の働き方です。以前は「結婚退職」する女性が多かったのですが、出産まで働く人、出産しても働く人も増えています。これは妻の価値観だけの問題ではなく、経済的な要因も大きく影響します。
妻が早く仕事を辞めたくても、家を買うための頭金や教育費を貯めるためには、長く働いた方がいい場合もあります。
新しく築く家庭の進む方向を話し合うためにも、まずお互いのお金のディスクローズ(情報公開)が大切なのです。
ルール2 家計のおおまかな感じをつかもう
結婚したばかりのころは、家計のやりくりや貯蓄などわからないことが多いものですが、これから、いろいろな目的のために財産を築いていくためにも、おおまかな支出の流れをつかむことが必要です。
そうでないと、今のままの出費でいいのか、もっと節約しなくては目的(家を買うなど)が達成できないのか、もっと贅沢をしても大丈夫なのか見当がつきません。すると不安になります。
一度、家計簿をつけてみることをお勧めします。といっても、共働きだったり、小さな子どもがいると、正確に記録をするのは簡単ではありません。最初から完璧を目指さずにできるところから始めましょう。
手間をかけないで、家計の流れをつかむいくつかのアイディアがあります。
年始と年末の貯蓄残高を調べる。 | 1年間でどれだけ貯蓄が増えたかがわかる。 |
---|---|
公共料金などの引き落としを、ひとつの口座にまとめる。 | これで、自動引き落とし分についてすべて把握できる。 |
自動引き落とし以外の決まった出費を書き出す。 | 小遣い、美容院代など。 |
領収書をいくつかに分類して、封筒に入れる。 | 食費、雑費などに分け、1ヶ月ごとに集計すればよい。 |
大きな出費はメモしておく。 | 家電購入や旅行費、交際費なども記録する。 |
以上のことができれば、年間のだいたいのお金の出入りがわかるはずです。もっと詳しく知りたくなったら、市販の家計簿を利用したり、パソコンソフトなどを使うといいでしょう。
ルール3 収入の1~2割を貯蓄しよう
健全な家計というのは、きちんと貯蓄ができる家計です。
手取り収入の最低でも1割、できれば2割を貯蓄したいもの。共働きならそれぞれ2割ずつを。これが達成できていれば、無理に節約する必要はありません(無駄遣いは別ですが)。ただし、ここに「1~2年以内に使うための貯蓄」は含めません。百貨店積立や旅行積立、年払の保険料や2年ごとの車検のための積立は使うための貯蓄です。
確実に貯蓄するためには、自動積立を利用するのがいちばんです。勤め先に財形貯蓄などの天引き貯蓄があればそれを利用し、なければ金融機関の自動積立型の金融商品を利用します。
ルール4 2人でライフプラン表を作ってみよう
お金を使うことを我慢して貯蓄するには、貯める目的をハッキリさせることも大切。そのために有効なのは、2人で一緒にライフプラン表を作ることです。何年後に子どもを生む、何年後に家を買う、何年後に旅行に行く、何年後に子どもが大学に入学するなどなど。
夫婦の年齢を記入し、やりたいことや義務としてやること(教育費の準備など)を、該当する年に記入していきます。まず10年分作ってみましょう。興味がある人は20年分書いてみてもいいでしょう。
書いていく過程で、子どもの人数、教育は公立か私立か、家を買うか買わないか、マンションか一戸建てかなど、お互いに漠然と思い描いていることをハッキリさせることになります。
お互いの考えが、食い違っていれば、じっくりと話し合いましょう。お互いをさらに深く理解するきっかけになります。
2人で合意して記入を終えたら、出費をともなうことに大まかな予想金額を書き入れてみます。次のステップとして、その金額をどう準備していくかを考えるのです。3年後に100万円必要なら、100万円を36ヶ月で割った月約2万8千円が積立の目安となります。
ルール5 生命保険のことを考えよう
結婚や、子どもの誕生で考えなくてはいけなくなるのが生命保険です。
独身時代は扶養する家族がいないので、女性も男性も、医療保険(入院した時に入院日数に応じて給付金が払われる保険)だけに加入していれば十分でした。
しかし、結婚して妻が仕事を辞めた場合は、男性には死亡保障が必要になります。万一若くして死んだときに、妻に生活費を残すためです。子どもが生まれると、残すべき生活費の額も増え、教育資金も残したいので、必要な保障額はさらに大きくなります。
一方、共働きを続ける場合は、パートナーが亡くなっても、経済的にはあまり困らないので、大きな死亡保障は必要ありません。
保険金額の目安は表2のとおりです。生命保険は掛け捨ての保険を上手に利用すると、保険料を抑えることができます。
夫の職業 | 妻の職業 | 夫の死亡保障 | 妻の死亡保障 |
---|---|---|---|
会社員 | フルタイム*2 | 夫の年収×2+(1,000万円×子の人数) | 妻の年収×2 |
パート・専業主婦 | 夫の年収×5+(1,000万円×子の人数) | 500万円 | |
自営業*1 | フルタイム*2 | 夫の年収×2+(1,000万円×子の人数) | 妻の年収×2 |
パート・専業主婦 | 夫の年収×10+(1,000万円×子の人数) | 500万円 |
*1 自営業者は社会保障(遺族年金など)が薄いので、厚い保障が必要になる
*2 妻に経済力がある場合は、子どもの教育費プラスアルファの保障で十分
ルール6 家を買うのは慎重に
大きな買い物は慎重にすべきですが、その最たるものがマイホームです。
一生懸命やりくりをして、きちんと積立貯蓄をしていても、自分が買える以上の住まいを買って、返せる以上のローンを借りてしまうと、最悪の場合は家計が破綻してしまいます。資金計画は特に慎重にすべきです。
いちばん大切なことは、住宅ローンは年収の4倍までにすること。年収500万円なら借りられる(健全な)住宅ローンは2,000万円までです。頭金は年収分用意するのが目安で、そうすると年収の5倍(この場合2,500万円)の家が買えます。この他に諸費用が3~8%かかりますから、これも預貯金で準備します。頭金をきちんと貯め、ローンを借りすぎなければ、資金計画で大きく失敗することはありません。
資金計画以上に大切なのは、いつ買うかということです。
結婚してすぐに買うのはお勧めしません。子どもが何人になるか、これからの働き方や暮らし方も流動的で固まっていないからです。買い換えには大きなコストがかかりますから、結果として、不満足な住まいに何年も何十年も住むことを強いられます。
マイホームを買う時期の目安は、子どもが小学校に入学する前後です。このころにはお金も貯まり、収入も増え、共働きか片働きかも決まり、子どもの人数などもだいたい固まっているはずです。その生活様式に合わせて、予算や立地、物件を決めると、満足度の高いものを選ぶことができます。
たいていは夫婦のどちらかが、記録をつけたり予算を立てたりするのが得意なはずです。男性でも、女性でも得意な方が主になって家計を運営すればいいのですが、大切なのは、ときどき家計について、貯蓄について、これからのお金の使い道について話し合うことです。
お金をとりまく環境は大きく変わっているので、夫婦の片方がお金の面の責任を全部負うのは荷が重過ぎます。特に大きなことはよく話し合った上で、2人で決断するようにしましょう。