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金融教育のすすめ

(1)「子どもはお金が好きやねん!今、金融教育が必要なワケ」

お金ってナニ?

「カネ・ゼニ・マネー」とお金の呼び方はいろいろありますが、好印象を与えるものはありません。日本人には「お金は汚いもの」、「儲けることは悪いこと」と考える風潮があり、人前でお金の話をすることを避ける傾向が強いようです。だからといって、お金のことが嫌いかというと世界一お金を貯める世界一お金が好きな国民でもあるのです。


「好きこそものの上手なれ」というコトワザがありますが、好きなら誰にも負けないくらい一生懸命に勉強するはずですが、お金のことになるとからっきしダメなのです。そもそもお金の勉強をしてこなかった大人が子どもに教えることは決して容易なことではありません。お金を巡る環境は日々複雑となり、老若男女に関わらず、トラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。こんな時代だからこそ、子どもにはどんな変化にも対応できる力をつけていく必要があり、「金融教育」が担う役割は大きいものといえるでしょう。

そもそも「金融教育」とは、「金銭教育」「経済教育」「投資教育」などのお金に関連する教育を総称し、社会を生き抜く力を育てる教育といえます。もっと簡単にいうと「しつけ」と「知恵」を習得するための教育といえるでしょう。

お金の価値は、お札やコインに表示されている数字だけで決まるものではありません。お札を研修する授業で家から千円札を持ってこさせるケースがあります。ある子どもは、封筒に入った新札を丁寧に取り出し、机の上に大切そうに並べます。ある子どもは、ポケットから丸めてクシャクシャになった千円札を机の上に無造作に投げ落とします。この仕草を見たときに家庭内の「しつけ」の大切さを実感します。

同じ千円札でも扱い方によってその価値は変わります。社会に出た時、上司や同僚、ましてや取引先に同じような行動を取れば、「信用できる人」と「信用できない人」とに大別されることでしょう。お金の渡し方ひとつで人の価値すら変わってしまうのが、この世の中です。

「しつけ」とは、お金との向き合い方や扱い方を教える大切な「金融教育」なのです。そして、「知恵」の習得は、お金に関する仕組みや法律などを理解させ、お金との賢い付き合い方を教えるもうひとつの「金融教育」です。

お金って不思議

「モノの豊かさより心の豊かさ」をはぐくむことが大切です。日本は第二次世界大戦後、高度成長時代を経て、世界一金持ちの国と言われるようになりました。貧しさに打ち勝ち、努力の末に手に入れた「豊かさ」。しかし、「豊かさ」の影で大切なことがたくさん失われているのです。

友人のカナダ人にこんなことを言われたことがあります。彼は、ボランティア活動を通じて世界各国の子ども達と交流してきました。その彼が「日本の子どもはダメになる!」というのです。理由を聞いてみると「日本の子どもは欲しいモノがあれば簡単に手に入れることができる。ここに問題がある!」というのです。

「他の国の子どもは、欲しいモノがあっても手に入れることができないのが当然で、『諦める』という選択肢が一番。それでも、諦めきれない場合は、粘土や木を削って似たような物を作ろうとします。それでもなお、欲しければ、買うためのお金をどのように確保するかを考えます。その方法は、親や祖父母にねだるのではなく、お手伝いやアルバイトを自ら率先しておこなってお金をもらい、少しずつ貯めてから、やっと欲しいモノを手にすることができるのです。」

貧しい時代の日本でも当たり前の光景だったものが、「豊かさ」が増すにつれて、いつの間にか忘れてしまったようです。

続けて彼は「お金を少しずつ貯めて欲しいモノを買おうとした時には、あんなに欲しかったモノが今はさほど欲しいモノではなくなっていることも多いのです。そして、欲しいモノではあったけれども、必要なモノではなかったと気づくのです。」日本の子ども達は、欲しいモノがあるとすぐに買ってしまうため、それが本当に必要なモノなのか理解できていないというのです。

小学生の高学年に授業を行う際、事前にアンケートを取ることがあります。「今、欲しいモノは何ですか?」「今まで買って良かったモノは何ですか?」という問いかけに、「ゲームソフト」「カード」と大多数が答えます。その後に「今まで買って後悔したモノは何ですか?」との答えにも「ゲームソフト」「カード」と答えるのです。欲しいモノであったけれど、必要なモノではなかったということでしょう。お金でモノを買うと一言でいっても、こんなに奥が深く、難しいことなのです。世の中の環境が変われば、お金との関わり方も変わってくるのです。

お金って難しい

「親の背中を見て育つ」のが子どもです。親の行動が子どもに大きな影響を与えるのはいうまでもありません。近頃は、親の子ども時代と違って、お金が見えなくなってきました。例えば、カードで買い物をしたり、公共料金などもすべて引き落としされるようになりました。

一昔前までは、「我が家の給料日」は家族全員が知っていたように思います。給料日は、月に一度の特別な日で、母親は朝から機嫌がよく、父親はいつもより早く帰宅しました。ご馳走が並んだ夕食のテーブルにつくと父親がおもむろに内ポケットから給料袋を取り出し、母親に手渡すと、母親は頭を深々と下げて、感謝と慰労の言葉を伝えました。子どもはそんな姿を見て、両親に対する尊敬や家族の役割、そして、仕事とお金の関係を実感していたように思えます。

しかし、今や給料も振り込みの時代、月に一度の特別な日が大きく変わってきました。父親が持って帰る給料袋には明細を書いた紙が一枚、母親の興味があるのは、銀行の通帳に記載された金額のみ。母親にお金を渡すのは父親ではなく、銀行のATMなのです。かつての特別な日は、カードでお金を引き出し、子どもの前で父親に小遣いを渡す日となってしまいました。子どもには、振り込みといった複雑な仕組みはわかりません。目の前で行われる現実のみがすべてです。誰が家族を支え、どのような役割を果たしているのか、ましてや、仕事とお金の関係を十分に理解することは難しいかもしれません。

最近、フリーターやニートが増え続けています。働くことに対して価値観を見出せない人も多いようです。この原因が給料の振り込みだとはいえませんが、きっかけの一端になっているのではないかと危惧しています。大人には理解できても子どもには理解できないようなことは、積極的に教えていかなければなりません。家庭や学校にかかわらず、子どもと話し合う時間を設けることが必要です。昔のような給料日(特別な日)がないなら、両親や仕事に感謝する日を作り、親子で話し合うことで、「お金」や「仕事」のことはもちろん、家族同士のコミュニケーションが図れ、絆も深まります。

学校においても、今までタブー視されてきた「お金」についての授業を試みることで大きく成長させるきっかけになると思います。ただし、子どもに間違ったことを教えないためには、まず、親や先生がしっかりと勉強しなければなりません。金融教育は決して子どもだけのものではないのです。刻々と変化する社会の中で大人も一緒に学んでいき、子どもに伝え、教えていくものなのです。

近年、経済が先行する時代だから「お金が一番」と考える大人も子どもも少なくありません。お金は幸せになるための「道具」に過ぎず、多い少ないは問題ではありません。大切なことは使い方を誤れば、不幸になるということです。お金の使い方の難しさを金融教育で教えることができれば最高です。

お金って怖い!

「宵越しのカネは持たない」と言わんばかりに湯水のようにお金を使う子どもがいます。果たして子どもには、汗水たらして必死で働き、家計を切り詰めながらヤリクリする親の姿が見えているのでしょうか。「無駄づかい」ができるほど余裕のある家庭が多くあるようには思えないのですが。

そもそも、子どもが「無駄遣い」をはじめるキッカケとは何だったのでしょうか。その答えは冬休みにあるようです。子どもがはじめて自分のお金を手にするのが「お年玉」です。お爺ちゃんやお婆ちゃん、親戚などが、子どもに現金を手渡すため、「これは自分のお金、好き勝手に使える!」と認識してしまいます。お金との付き合い方をまだ知らない子どもにとっては、空からお金が降ってきたようなイメージでしょう。

そのことを考慮して親がしっかり管理すればいいのですが、ついつい甘やかせて欲しいモノを買わせてしまいます。それも高額のモノを次々と・・・。年末には、クリスマスプレゼントをもらっているにも関わらず、子どもの欲望はお年玉によってさらにヒートアップしてしまうのです。その結果、子どもの金銭感覚は麻痺し、「無駄づかい癖」がスタートしてしまいます。

「無駄づかい癖」は子どもの将来に大きな影響を与えます。金銭トラブルの多くは、「お金の使い方」に原因があります。例えば、「悪徳商法」などは、消費者の購買意欲をそそってお金を使わせる手口です。無駄づかいの多い人はついつい衝動的な行動が多くなるため相手の罠にかかりやすい傾向にあります。行動をおこす前にもっと慎重になり、他と比較・検討した上で安心して買える商品やサービスを選んでいれば、騙されることはなかったかもしれません。

また、「多重債務者」になる原因も自分の欲求を満足させるために無計画にお金を使いすぎて、クレジットやキャッシングなどの借金を雪ダルマ式に繰り返した結果の姿です。欲しいモノをすべて手に入れようとしてもお金が必要なことは分かっているはずなのに「なんとかなる!」という安易な考え方がこういう事態をまねいてしまいます。「あれさえ買わなければ」と後悔してもあとの祭りです。「無駄づかい癖」という子どもの時に芽生えた悪性が人生を大きく狂わせるかもしれないのです。

「無駄づかい癖」にならないための対策としては、冬休みに入る前に親子でお金の使い方について話し合う必要があると思います。幼稚園や小学校で冬休み前に生徒や保護者を集めて金融教育のセミナーや勉強会をおこない、クリスマスプレゼントやお年玉について話し合う機会を設けているところもあります。お金は怖いものです。好き勝手に使わせたり、欲しいモノを何でも買い与えるのが決して愛情ではありません。長い人生をこれから送る子どもには我慢する気持ちや諦める悔しさを教えるのも愛情ではないでしょうか。

お金って面白い

「かわいい子には旅をさせろ」と、全国の学校で子ども達のために金融教育の取り組みをはじめるところが増えてきました。今までなかった学習のため、各学校が工夫を凝らしながらおこなっているようです。


平成4年に施行された小学校学習指導要領から「モノやお金を大切にし、働くことに感謝する気持ちや思いやりをはぐくむ」といった「消費者教育」がスタートしました。子ども達に「いのちの尊さを知り、限りある資源を大切にする心をはぐくむこと」を目的としました。その後、小・中学校においては平成14年度より、高等学校においては平成15年度より学年進行で「総合的な学習の時間」が本格的に実施され、金融教育を取り入れるケースが増えてきました。

一昔前のお金にまつわる学習としては、「ソロバン」が代表的なものでした。現在では「パソコン」や「職業体験」、「ボランティア活動」などを取り入れていますが、具体的な金融教育とは、これらの学習とともに、より一層踏み込んだお金にまつわる学習をおこなうものといえるでしょう。

私がはじめて金融教育の教壇に立ったのは、10年程前に地元の中学校でした。学校行事の一環として、「バリアフリーレッスン」という地域との垣根をとり、地元の人々を先生として迎えるというものでした。一時限(50分)を3日間担当しなければならず、不安と期待で当日まで寝むれない日が続いたのを覚えています。授業の内容は、「100万円大研究」とし、いろんな角度から100万円を検証していこうと考えました。

1回目の授業の時には、徹夜して新聞紙で作った100万円の札束を用意しました。少しでもリアルに見せるために、一番上と一番下には本物の一万円札をいれました。生徒たちには、100万円がどれくらいの量で重さはどれくらいあるのかを一人ずつ触って確かめて欲しいという狙いがあったからです。しかし、生徒たちにその100万円の札束を渡した瞬間、「なんだ、偽物か!」といって、100万円の札束で遊びだしたのです。こうなると収拾をつけるのが大変でその日の授業は散々たるものでした。

2日目が近づいてくると登校拒否したい気持ちにかられるほど憂鬱でしたが、生徒がいった言葉が授業のヒントとなりました。「偽物がダメなら本物で!」ということで前日に銀行で定期預金を解約し、新札で100万円の札束を用意して教室に持ち込みました。そして、「今日は本物や!」といって手渡すと生徒たちは前回と全く違う行動をしたのです。遊ぶどころか緊張して「本物を持つのは怖い!」と手を震わせていた姿は今でも忘れられません。

この時に金融教育の真髄を垣間見たように思いました。そして「生徒には偽物は通用しない。」ということを教えられました。その後の授業は楽しく、そして、有意義なものになりました。ちなみにどんな授業をしたかというと、「100万円あれば何を買う?」や「100万円貯めるためには何時間バイトする?」などと問いかけ、グループで「買い物リスト」や「アルバイト比較表」などを作らせました。作成するための資料は、当然、本物のカタログやチラシ、アルバイト情報誌などです。

この授業をキッカケにできる限り、本物を使う授業を心がけるようにしています。為替の授業なら、世界各国の紙幣を準備してインターネットでその時間の為替レートをチェックさせたり、物の値段の授業なら、食べ比べたり、飲み比べたりさせることもあります。しかし、すべての授業で本物を準備することはできません。その場合は、出きるだけサプライズとリアリティのある演出を心がけるようにしています。

「たこ焼き」をテーマに授業をする時も生徒には一切内容を公表せず、サプライズを楽しめるよう随所に工夫を取り入れます。「突然、教壇がたこ焼き屋に!」提灯や暖簾、そして、本物そっくりのたこ焼きのレプリカまで準備して、教壇をリアリティのある屋台に変身させます。生徒には「見たり」「聞いたり」「触ったり」「味わったり」「嗅いだり」と五感を刺激させることが、潜在する可能性を最大限引き出す最良の方法だと思います。

もうひとつ心がけていることは、出きるだけ「失敗」をさせるということです。文化祭やバザーを利用して仕入れた商品を売ってお金や商品の流れを学習する場合、たくさん売れて儲かるより、全く売れなくて損をしたほうが勉強になります。なぜなら、「商売は難しい!」と実感するからです。社会に出れば、そう簡単に商品が売れるものではありません。親や友人などに頼んで買ってもらうより、売れ残って何故売れないのかを話し合うほうが絶対に勉強になるのです。学生の間だからこそ「失敗」ができるのです。「失敗は成功のもと」なのですから・・・。

「金融教育」は点数のつけられない教育です。お金を通じて生き方や価値観を勉強するものだからです。お金の教育だと思って後ずさりしている大人はいませんか?子どもは、お金に興味を持ち、その秘めた魅力を知りたがっているのです。大人がダンマリを決め込んでいると間違った情報が入り、人生を台無しにしてしまうかもしれません。もっとオープンにお金のことを子どもと話してみませんか?なぜなら、子どもはお金が好きやねん!

著名人・有識者が語る

  • 脳科学者 中野信子さん
  • 作家 上橋菜穂子
  • 落語家 林家たい平さん
  • 劇作家・演出家・女優 渡辺 えりさん
  • 青山学院大学陸上競技部監督 原 晋さん
  • 東京女子医科大学・先端生命医科学研究所教授 清水 達也さん
  • 元スピードスケート選手/長野五輪銅メダリスト 岡崎 朋美さん
  • 工学博士 石黒 浩さん
  • 日本体育大学教授 山本 博さん
  • 編集者・評論家 山田 五郎さん
  • 作家 荒俣宏さん
  • 医学博士 日野原重明さん
  • 山形弁研究家、タレント ダニエル・カールさん
  • 公認会計士 山田真哉さん
  • タレント パトリック・ハーランさん
  • 精神科医、立教大学教授 香山 リカさん
  • 野球解説者 中畑 清さん
  • 順天堂大学准教授 鈴木大地さん
  • 昭和女子大学理事長・学長 坂東眞理子さん
  • プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長 三浦雄一郎さん
  • 明治大学文学部教授 齋藤孝さん
  • マラソンランナー 谷川真理さん
  • 数学者 秋山仁さん
  • TVキャスター 草野仁さん
  • サッカー選手 澤穂希さん
  • ピアニスト 梯剛之さん
  • 女優 竹下景子さん
  • 食育研究家 服部幸應さん
  • おもちゃコレクター 北原照久さん
  • 宇宙飛行士 山崎直子さん
  • 早稲田大学名誉教授(工学博士) 東日本国際大学副学長 エジプト考古学者 吉村作治さん
  • 工学博士 淑徳大学教授 北野大さん
  • 登山家 田部井淳子さん
  • 音楽家 タケカワユキヒデさん

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