世代別・スタイル別のライフプラン
新社会人のためのマネープラン
はじめに
新社会人にとってのチャレンジは、配属された職場で仕事を覚え、社会人としての常識やマナーを身につけること。
そしてもうひとつ、必ず身につけたいのはお金との上手な付き合い方です。
自分の収入で生活し貯蓄をしていくという新しい環境が始まり、これからは一生、自分の責任でお金を管理していくことになるのです。
早い時期に、お金との上手な付き合い方をマスターし、「マネー・センス」を身に付ければ、その後の人生で経済的な苦労をあまりしなくてすむはず。
今回は、新入社員向けの実践的なアドバイスをまとめてみました。
マネープラン1 目的を持とう
何よりもいちばん大切なのがこれ。目的を持つことです。
2年に1度海外旅行をするでも、5年後に結婚するでも、30歳で独立起業するでもいいのです。自分がやりたいことを見つけましょう。その目的を達成するためにお金が必要なら、それを貯めることがひとつの目標になります。
給料をもらったら、使うか貯めるかのどちらかですが、欲しいもの、したいことは無限にあるので、それをがまんして貯めるには、はっきりとした目標が必要です。将来に達成したい夢があるときに初めて、目の前の誘惑に耐えて貯蓄ができるようになるのです。
特別に目的や目標を持たなくても生きていくことはできますが、具体的な目標を持ち、その実現に向けて努力したりお金を貯めることで、より充実した人生をおくることができます。まずは、目的を見つけることからスタートです。
マネープラン2 口座開設はじっくり銀行を選ぼう
入社するとすぐ、給与振込みのために銀行口座を開設します。長い付き合いになる「メインバンク」は念には念を入れて選びましょう。
これまではサービスや金利、手数料に大差がなかったので「行きやすさ」「便利さ」で銀行を選べばよかったのですが、今は事情が違います。店舗を持たない「オンライン銀行」があり、銀行に行かなくてもコンビニエンスストアのATMで現金を下ろすことができ、振込みなどの手続きはパソコンでできます。銀行ごとに売り物としているサービスや商品が違います。
預金残高が一定額以上などの条件がつくことも多いのですが、振込み手数料やATM手数料が無料(または割安)のところもあれば、投資信託のメニューが充実しているところ、インターネットショッピングの決済が便利というところもあります。もはや、会社や自宅に近いことは銀行を選ぶ理由にはなりません。そのためにも、ホームページなどで各銀行の特徴を調べ、自分に得な商品、便利なサービスを提供している銀行を選びましょう。
また、貯蓄は銀行だけに限りません。銀行の普通預金口座は給与振込みと公共料金の引き落としだけに使い、貯蓄はもっぱらオンライン証券を利用する方法もあります。
証券会社というと「株の売買をするところ」というイメージがありますが、一般の人たちには「投資信託」を上手に利用して欲しいところです。まずは貯蓄感覚で預けられ、値下がりのリスクが小さいと言われているMRFや公社債投信の仕組みを知って預けてみましょう。ボーナスなどまとまった資金が入ったら、1万円ずつでもリスクのある「株式投資信託」を買ってみるのもお勧めです。
若いうちから少額でリスク商品と付き合ってみることで、30代、40代以降まとまった資金ができたときに、上手にリスク商品を取り入れることができるようになるはずです。
マネープラン3 クレジットカードは慎重に使おう
学生時代からクレジットカードを(たいがいは親のカードの家族カードとして)持っていた人も多いでしょうが、社会人になるとカード代金は親の口座からではなく、自分の口座から引き落とされます。言うまでもなく、自分の預金残高には限りがあり、油断をするとあっという間に底をついてしまいます。
残高不足でカード代金が引き落とせないと、ブラックリストにのり、新しいカードを作れなかったり、車や住宅を買うときにローンを借りられなくなるということにもなります。
カードの使いすぎを防ぐ方法は、(1)カードは一枚だけにする、(2)上限(予算)を決める、(3)一括払いにすることです。
クレジットカードによって様々な特典があるので、つい2枚、3枚と増やしたくなるのですが、カードが多いと管理ができなくなります。また、カードAの決済日に残高不足でカードBからキャッシングということを一度でもしてしまうと、多重債務に陥り破産への最短距離を走ることにもなりかねません。2枚目は、社会人3年目以降、管理できる自信と実績ができたら作ってもよいでしょう。それでも3枚以上は作らないことです。
買い物の利用限度額はカードによって月10万円、20万円などと決まっていますが、最初は手取り収入の一割を限度とします。使いすぎないためです。
カードの決済は「翌月一括払い」とします。利息が付かないし管理が簡単だからです。ボーナス払いも利息は付きませんが、つい使いすぎてしまう恐れがあるのでなるべく避け、上限はボーナス額の一割とします。分割払いやリボルビング払いは、使いすぎてしまう上に金利が高く、「借金」に対する感覚も麻痺してしまいます。極力利用しないようにしましょう。キャッシングも同じです。
払い方 | 金利の例 | 20万円使ったときの総支払額 |
---|---|---|
翌月一括払い | 0% | 200,000円 |
ボーナス払い | 0% | 200,000円 |
分割払い(12回) | 12.50% | 213,680円 |
リボルビング払い | 13.20% | 216,200円*1 |
キャッシング | 27.80% | 204,633円*2 |
*1 残高20万円以下は月2万円、10万円以下は月1万円返済の場合
*2 翌月一括返済の場合
マネープラン4 自動積み立てを始めよう
無理なくお金を貯めるには、給料天引きや自動積立貯蓄などを使って、ほっておいてもお金が貯まる仕組みを作ってしまうことです。
会社に財形貯蓄制度があれば、これを利用するといいでしょう。会社と提携している金融機関に、給料やボーナスから天引きで積み立てていく制度です。一般財形、財形住宅、財形年金の3種類があり、1年以上積み立てて50万円以上の残高があるなどの条件を満たせば、家を買うときに金利の低い「財形住宅融資」を利用できるなどのメリットがあります。何より、必ず積み立てられるのが強みです(銀行口座からの自動積立では「残高不足」で積み立てられないこともままあります)。
上場企業にはたいてい「社員持ち株制度」、つまり、自社の株を給与天引きで、毎月一定額買っていく制度があります。会社から積立額の何割かの補助金が出ることも多いようです。会社の業績が伸びて株価が上がれば、ふつうの積立貯蓄の何倍もの利回りとなりますが、株価が下がると元本割れもあります。リスクが高いので、他の積立と併用するといいでしょう。
給与振込と同じ銀行で、自動積立定期をしてもいいし、オンライン証券会社で投資信託積立を始めるのもいいでしょう。
手取り収入の最低一割を積み立てて途中で引き出さなければ、30歳には約年収分の貯蓄ができる計算になります。これだけあれば、結婚資金には十分だし、さらに貯めて独立資金や住宅購入の頭金にすることもできます。
「お金が貯まる感覚」を体験すれば、それ以降の貯蓄生活にも大きなプラスになり「お金が貯まる体質」をつくることができます。
商品 | 特徴 | |
---|---|---|
給与天引き | 財形貯蓄 | 1年以上積立て、50万円以上の残高があれば住宅購入時に財形住宅融資を受けられる。財形住宅、財形年金は、一定条件を満たせば利息に非課税の特典もある。 |
持ち株会 | 自社株を毎月一定額買うもので会社から補助金が出ることが多いが、集中投資なのでハイリスク。他の積立と併用すること。 | |
銀行 | 積立定期 | 総合口座にすると、定期預金を担保に、残高の90%まで融資が受けられる。 |
証券会社/銀行 | 投資信託 | 安いときに多く、高いときに少なく買う「ドルコスト平均法」が働くので効率的な投資となる。 |
郵便局 | オート定額 | 通常貯金からの積立。定額貯金を担保に、ゆうゆうローンが借りられる。 |
マネープラン5 ローンは極力借りない
お金が貯まる体質の対極が一生お金が貯まらない「ローン体質」です。特に気をつけたいのは車のローン。車は現金払いが原則です。1度ローンで車を買うと、そのローンが終わる頃に、新たにローンを組んで買い換え、そのローンが終わる頃にまた・・・というふうに、永遠に車のローンを負うことになります。
前述のカードの分割払い、リボルビング払いも、どこかでいっきに清算してしまわないとずっとローンを抱えて生活することになり、一生に払う金利は数百万円を超えることになるでしょう。住宅ローン以外のローンは極力借りないようにすべきです。
マネープラン6 情報に敏感になろう
金融や経済の状況は、日々大きく変わっています。2001年から401kがスタートし、2002年からはペイオフが解禁になりました。公的年金制度は5年ごとに大きく見直されます。
常に最新の情報を追う必要はありませんが、全体の流れや、自分の生活に直接関わる問題は理解しておきたいものです。そのためには、まず税制や年金制度、金利や金融商品の仕組みという基礎知識を身に付けることが大切です。でないと、新しい情報を見聞きしても、理解したり自分のことに適用したりできないからです。
機会があるときに、金融のセミナーを受講したり、興味の持てる分野から単行本や雑誌を読んだりするといいでしょう。ほとんどの新聞が週に1度は「マネー特集」を組んでいますから、これも読んでおきたい。新しい情報が欲しい時は、インターネットを利用するのも手です。
情報に翻弄されずに、上手に利用できるようになるために、「信頼できる情報源」をいくつか持っておくことが大切です。