ディスクロージャー誌の見方・銀行編
アナリストはディスクロージャー誌のここを読む
5.銀行の健全性をみるには、ディスクロージャー誌のどこを見ればいいのか
銀行の健全性や収益性を示す指標について、全銀協ではかつて2人の著名なアナリストに意見を伺ったことがあります。ここでは、その時のアナリストの意見を紹介します。
(1)アナリストの意見(その1)
銀行の健全性を示す指標としては、一般的に自己資本比率と言われていますが、その他に、不良債権の残高が減少しているかをご覧になってはいかがでしょうか。とくに、貸出金に対して不良債権の残高の割合(不良債権の残高/貸出金)が小さければ小さいほど健全性に優れていると言えますし、その割合が減少してきているかどうかは、健全性を示す1つのポイントになります。
収益性を判断する基準としては、利鞘がここ数年上昇しているかということを重視してはいかがでしょうか。利鞘とは、貸出金などの資金運用の利回りと預金などの資金調達のコストの差額です。現在、平均的には、銀行の本業による収益である業務純益の約7割は資金運用収支からなっていますので、資金運用収支を拡大させる利鞘が上昇すれば、業務純益も拡大することになります。また、経費率がどのように推移しているかということにも注目してはいかがでしょうか。経費率とは、「営業経費(人件費、物件費、税金の合計)÷業務粗利益×100」として計算します。これは効率化がどれだけ進んでいるかを見る際の指標となります。
(2)アナリストの意見(その2)
銀行の健全性を計ることができる情報としては、自己資本比率と不良債権の残高を重視されてはいかがでしょうか。不良債権には、金融再生法に基づく開示債権と銀行法に基づくリスク管理債権の2種類がありますが、それぞれ、過去2年間の残高を見れば、その銀行の資産の健全性を計ることができると思います。
収益性を判断する基準としては、開示が義務づけられているものではありませんが、多くの銀行が開示している業務純益は銀行の収益力を計ることができる情報として注目されます。業務純益は、銀行の本来的業務の実力をあらわしています。業務純益の大きさをそれぞれの業態(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行等の区分)の中で比較することで、収益力が高い銀行か、低い銀行かを見極めることができます。また、収益性を計る指標として資本当期純利益率(ROE)(注)も参考になると思います。ROEは、投入した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げたかを示す指標です。ROEが高いほど、収益性に優れた銀行といえます。
注:銀行によっては株主資本利益率、自己資本利益率、資本利益率と表現しているところもある。