わかりやすい社会保障制度
II.社会福祉
2.母子・寡婦福祉
母子福祉の制度は、経済的にも社会的にも精神的にも不安定な生活になりがちな母子世帯について援助を行い、母子家庭に対し、経済的な自立と、扶養している児童の福祉を増進させるためのものです。また、寡婦とは、かつて母子家庭の母だった者のことです。子が成人した後も、長年の子の養育による影響で健康や就業・収入面で保障が必要な寡婦には、寡婦福祉として母子家庭の母に準じた援助がなされます。
厚生労働省「全国母子世帯等調査」(平成18年度)によると、母子世帯になった理由については、死別が約1割、生別(離婚、未婚の母等)が約9割です。母子世帯の母の8割以上が働いていますが、そのうち常用雇用者は43%に過ぎません。母子世帯の平成 17年の平均年間収入(平均世帯人員3.30人)は213万円でした。これは就労収入だけでなく、生活保護法に基づく給付や、児童扶養手当等の社会保障給付金、別れた配偶者からの養育費、親からの仕送り等を加えたすべての収入の額です。一般世帯平均563.8万円(平均世帯人員2.65人:平成17年)の4割にも満たない収入です。
1)児童扶養手当
児童扶養手当は、父母の離婚、配偶者との死別などさまざまな理由によって、母親または父親が一人で子どもを育てている「ひとり親家庭」に対する経済的な支援を目的とし、子どもの福祉の増進を図るものです。これまでは母子家庭を対象に支給されていましたが、平成22年8月からは父子家庭にも支給されることになりました。
離婚、死別、父または母が一定程度の障害状態、未婚の母等の世帯に支給されます。児童扶養手当が支給される期間は、子どもが18歳になる日以降の最初の3月31日までです。国民年金の遺族基礎年金や厚生年金の遺族厚生年金等の給付を受けることができる場合には支給されません。
児童扶養手当の支給額は、受給資格者(母子家庭の母等)の所得や子どもの数などによって異なります。例えば、2人世帯(受給資格者1人、児童1人)の場合、年収が130万円未満のときは月額41,710円、収入が130万円以上365万円未満のときは月額41,710円~9,850円まで10円刻みで設定されています(平成22年4月現在)。児童扶養手当の支給を受けるためには、住所地の市区町村への申請手続きが必要です。
2)母子福祉資金貸付制度・母子生活支援施設等
母子福祉の中心的なものとして、母子福祉資金貸付制度があります。無利子または低利の資金貸付制度で、資金の種類としては、就学支度資金、修学資金、修業資金、就職支度資金、技能習得資金、医療介護資金、生活資金、転宅資金、住宅資金、事業開始資金、事業継続資金、結婚資金があります。
また、保護を必要とする母子を入所させて生活指導を行う母子生活支援施設(旧:母子寮)や母子福祉センター、母子休養ホーム等の母子福祉施設があります。
3)その他の母子福祉に関する対策
- 死別母子世帯に対して国民年金制度による遺族基礎年金、厚生年金制度による遺族厚生年金
- 生活保護制度における母子加算
- 所得税・住民税における寡婦控除、寡夫控除、特定の寡婦(母子世帯)控除
- 預貯金の利子所得等の非課税制度(マル優)の適用
- 各種の就業支援事業
などがあります。
図表2:母子家庭等の福祉対策
所得保障 | 児童扶養手当の支給 | 生別母子世帯等 |
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母子年金等の支給 | 母子年金 |
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遺族基礎年金 |
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遺族年金 (配偶者及び子に対するもの) |
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母子福祉資金の貸付 | 母子(寡婦)世帯に対する低利または無利子の資金貸付 |
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寡婦福祉資金の貸付 |
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自立のための施策 | 自立促進事業 | 公共的施設内の売店等の優先設置 |
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製造たばこの小売販売業の優先許可 |
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住宅対策 | 公営住宅の母子世帯向け特別配慮 | ||||||||||||||||||||||
生活指導等 |
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税制 | 税制上の措置 | 母子世帯等に対する所得控除 | 寡婦控除、寡夫控除 | ||||||||||||||||||||
利子非課税制度 | 所得税、住民税 |
(注)*1 19年度末、*2 18年度末、*3 13年度末、*4 11年度末、*5 18年10月
(資料)厚生労働省雇用均等・児童家庭局調べ
出典「社会保障入門2010」社会保障入門編集委員会、中央法規出版