金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
暮らしに役立つ講演会
講師 : 中島 隆信 氏 (慶應義塾大学商学部教授 慶應義塾大学博士〈商学〉)
お金は「使い方をどう学ぶか」が大切
「賢い消費者」が一つのテーマなので、具体的に賢い消費者になるにはどうしたらいいのか、どういうところが賢さなのか、ということについて話をさせて頂きます。まず、なぜ賢くならなければならないのか、についてです。賢くならないと国民は自立できない、愚かな国民には政府がいろいろ厳しく教えなければならないけれども、国民に学問があれば寛大な良い政府ができる、ということを言った人が100年以上前にいました。それは福沢諭吉で、「学問のすゝめ」にこのことが書かれています。
金融の取り引きは、自分である程度ちゃんと知識をもった上で行わないと簡単にだまされてしまう。そこで、政府がいろいろな指導や管理をするようになると、あれもダメ、これもダメ、となって国民の自由が失われてしまうことになります。だから、まず自立のために学問を身に付けましょうというのが、賢いということの一つの意味です。
どういう人間ならだまされないのかといえば、謙虚で合理的な人間です。両方の特質を備えている人はなかなかいませんが、だまされやすい人間だと自覚する謙虚さがあり、こんなうまい儲け話が本当なら人に話すはずがないと思ってみる合理的な考え方ができれば、だまされることはまずないでしょう。学校の勉強は、賢くなることが必ずしも目標になっていないと思います。さまざまな実例にもとづく経験を一つの教養として子どもたちに教えていく必要があります。
お金の稼ぎ方より使い方、というお話をします。お金を稼ぐのはやっぱり生活していくのが目的。お金は使い方を知っていなければ稼ぎ方を知っても意味がないのです。使い方をどう学ぶか。子どもと回転寿司に行ったらまず、今日の予算は2,000円あるいは3,000円、と決めて子どもに渡し、「これを上手に使い切って食べなさい」と話します。自分の目的を満たすためにどう配分していくか、はとても重要です。子どもがお金を受け取る時に、2,000円か3,000円かを親と交渉してなるべく多く勝ち取る、こうしたことも子どもに世の中で生きていくために必要な力を身につけさせることにつながると思います。
プロフィール
1960年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。現在、慶應義塾大学商学部教授。商学博士。実証的な分析を行う一方で、従来の経済学ではなかなか扱われないできた事象を経済学で読み解く一連の仕事を続けている。
日本相撲協会が、組織運営について外部の有識者から助言を求める「ガバナンスの整備に関する独立委員会」委員。
著書:『これも経済学だ!』(筑摩書房)、『日本経済の生産性分析』(日本経済新聞社)、『子どもをナメるな――賢い消費者をつくる教育』(筑摩書房)、『大相撲の経済学』『お寺の経済学』『障害者の経済学』『オバサンの経済学』(以上、東洋経済新報社)ほか