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くらしと“マイナス金利”

マイナス金利という新しい政策が実施されましたが、「どうもこの“マイナス金利”ということがよくわからない」という人のために素朴に感じる疑問にわかりやすくお答えします。

「マイナス金利って、銀行に預けるとお金が減るの?」

ふつうは銀行にお金を預けると金利が付きます。ところが「“マイナス”というのだから、逆に銀行にお金を取られて減ってしまうの?」と思うかもしれませんが、そういうことではありません。

マイナス金利というのは、ふつうの銀行が日本銀行に預けているお金の一部に対してのことですから、我々一般の預金者に“マイナス金利”が適用されるわけではありません。

「預金にしても利息がほとんどつかないから株や投信にしたほうが儲かるよね」

マイナス金利の影響で金利は下がっていますから、金融機関の人たちからはこんなふうに勧めてくるかもしれません。でも、今までだって、金利はかなり低くなっていました。

例えば、預金金利が仮に0.02%→0.01%へと下がったところで、100万円について金利が100円少なくなるだけです。ほとんど実態は変わらないのですから、金利が下がったからと言って、焦って投資する必要はありません。

それに投資信託は持っているだけで手数料がかかります。金利の減った分よりもこうした手数料の負担や価格の上下によって損をすることのリスクの方が大きいかもしれません。ですから、わずかな金利の低下だけで投資に飛びつくことはやめて、リスクとリターン、コストをよく考えて判断した方がいいと思います。

「こんな低金利なんだから家を買うチャンス?」

買う心積もりがあった人には、住宅ローンの金利が低い今は「買い時」なのかもしれませんね。でも、家を買う条件は、あくまでも値打ちがあって割安ないい物件であることです。金利が下がったというだけで慌てて家を買うのであれば、スーパーで「本日ポイント還元3倍デー」といわれてあれこれ買ってしまうのとあまり違いはありません。特に家を買うのは一生の中で最も大きな買い物ですから、やはり慎重に考えるべきではないでしょうか。

それに必ずしも金利が下がるとは限りません。大手銀行は4月から住宅ローン金利を引き上げています。

「でも低金利だったら住宅ローンの借り換えは有利だよね」

確かに、それまで利用していた高い金利のローンを低い金利のそれに乗り換えると、その分、払う金利が少なくなることは間違いありません。ただ、ローンの借り換えには、それに伴う手数料や保証料、登録免許税などの諸費用がかかります。払う金利が少なくなる以上に費用が増えたのでは何にもなりません。これはケースバイケースなので、よく調べてみないといけません。借り換えた後で、思いがけない出費が発生することもあるので十分注意することが必要ですね。

このように、一見そうかなと思えることでも、じっくりと考えれば、あまり得にならないということはたくさんあります。マイナス金利政策が導入されたと言っても、直接私たちの日常生活で大きな損になるというわけではありません。

“マイナス”という言葉の持つネガティブなイメージに振り回されないことが大切です。

執筆:経済コラムニスト 大江英樹


野村証券で個人の資産運用や確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学会の会員で、行動ファイナンスからみた個人消費や投資行動に詳しい。著書に「自分で年金をつくる最高の方法 確定拠出年金の運用【完全マニュアル】」(日本地域社会研究所)など。近著は「知らないと損する経済とおかねの超基本 一年生」(東洋新報社)。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。


2016年(平成28年)4月