金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2006
実施報告
金融教育ケーススタディ
中学校の部
開催場所:609会議室 定員:80名(各50分)
開催時刻:【第2回】 16:50~17:40
「松阪もめん」を教材とした家庭科における金融教育
西村 朱美 教諭 三重県伊勢市立五十鈴中学校
配布資料(PDF 1,038KB)
伊勢神宮に奉納される織物の機殿がある「松阪」に棉(めん)が伝わり、そこで発展したのが「松阪もめん」といわれています。藍染めを基調としたしま柄が特徴で、参宮者たちのお土産にもなっています。この郷土の産業である松阪もめんに着目したのは、被服実習に興味・関心が持てない子どもたちに郷土を理解するという目的も含めて、モチベーションを高めたかったから。「松阪もめん」についていろいろな歴史をひもとくと、子どもたちは先人たちの知恵や苦労を知り、尊敬の念を抱くとともに、自負を持って仕事に臨むことのすばらしさを感じ取ったようでした。
また、効果的な授業にするために考えてきたことに、以前は消費者の立場から問題をとらえていくという方法をとっていたものを、発想の転換をして、生産者、販売者の体験活動が物事の本質を見抜く力を深めてくれたり、消費者が持つべき好ましい金銭感覚を形成してくれるのではないかと期待するようになったことも、松阪もめんを取り上げるきっかけとなりました。
こうして昨年度から今年度にかけて「松阪もめん」を教材とした家庭科における金融教育を実践してきました。
まずは、自分たちの技術で製作可能なオリジナル商品のデザイン画を、長期休暇中の宿題に課しました。ミシンの直線縫いの練習をして、ポケットティッシュカバーや文庫本カバー作りに取り組みました。オリジナルの商品が仕上がると、今度は販売に取りかかります。商品の価格を決め、広告を制作しました。収益の利用法を考える過程では、ボランティアや世界情勢に関する調べ学習につながり、地雷撤去に取り組む団体に寄付することになりました。
商品を販売した店舗は、地元有名菓子店が主催する小物展に特別参加させていただきました。2週間弱の小物展で、出品した商品は7日あまりで完売。1万4,700円の純利益を得ました。
子どもたちは、達成感だけでなく、自分たちが無駄にしてしまっていた単位のお金が命を救う、世の中のためになるんだということを実感していたようでした。
引き続き実施した今年度は、スケールアップして某シューズメーカーとコラボレーションすることができ、松阪もめんを使ったオリジナルシューズも販売しました。収益金は5万2,768円にのぼり、3.6倍の急成長。子どもたちとこの結果を自慢しあい、喜びあうことができました。
松阪もめんを教材とした金融教育実践により、子どもたちが消費者としてではなく生産者の立場でものごとを考察する機会を得ることができ、子どもたちの価値判断能力を深めることができたと考えています。