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2014年度 教員のための金融教育セミナー

2.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

大学分科会

進行およびコメント:
東京家政学院大学 上村 協子 副学長・教授

実践発表およびワークショップ(1)

「金融リテラシー入門~人生の機会費用について学ぶ」
横浜国立大学 西村 隆男 教授

実践発表

私が所属しているのは横浜国立大学教育人間科学部で、主に教員養成を目的とした学部です。これまで、教養教育の科目として、学部に関係なく卒業までに履修できる授業が設計できないかと金融教育を実践する場を模索していたところ、機会があって「金融リテラシー入門」という科目をセットすることができました。自分ひとりの力ではできないので、他の大学の方、研究者とともに「金融リテラシー教育推進委員会」を設置し、授業で使用するための「金融リテラシー入門」というテキストを作成しました。発想としては、学生が大学を卒業し、社会に出ていく上で必要な金融サービスに関する知識、人生設計に関する覚悟、取り組みなどを考えてもらおうとしたものです。

皆さんには授業の一部をビデオで紹介しましたが、これは、人生の各年代で収入、支出、余裕金が変動する中で、「どれだけの額を消費するか、投資するか」の選択を考えさせるともに、株式投資ではサイコロを振って、出た目で「マイナス」、「プラス」となるようにし、将来の不確実性を疑似体験させることを狙いにしたものです。

近年、金融資産を持たない世帯が増えていること、生活設計を立てない家計が多いこと、さらに老後への不安が増していることに注目する必要があります。また、日米の大学生比較調査(VISA 2012 )を見ると、1か月の生活費の把握状況や遣り繰りにおける計画性の有無等において日本の学生の関心の薄さが目立っており、学校での金融教育の受講経験の有無が背景にあるという印象を持っています。

テキストは、授業15回分になりますが、就職・大学院進学、給与と税金・社会保険、買い物と信用履歴などの12の場面と、情報の非対称性、機会費用、時間価値など6つの基礎概念で構成しました。今年、特に重視したのが、人的資産です。金融資産の話だけでなく、「どうやって自分のキャリアを磨いていくのか」、「個人としての能力を将来高く売るための投資をしていくか」というような考え方にも関心を持たせるものです。さらに、「より良いお金の使い方」、「より社会貢献型のお金の使い方」といった社会的責任投資についても考えさせるようにしました。講義は、参加型の授業を基本とし、グループ・ディスカッション、発表の方式にするとともに、実物投影機(書画カメラ)、パワーポイント等を効果的に活用しました。金融教育は子どもの早い段階から実施するのが良いと考えています。

ワークショップ

テキスト中の「交通事故」をテーマにしたカリキュラムを実践して頂きました。まず、「バイクで35歳の専業主婦をはねてしまった」という事例を想定し、「万が一に備え、どのような準備をしておくべきか」を考えてもらいました。次に、損害賠償実務として、逸失利益(機会費用)の計算方法、現在価値と将来価値の考え方を説明し、賠償額を計算して頂きました。学習のゴールは、時間価値(タイムバリュー)を理解して頂くことに置きました。

コメント

上村先生より、冒頭の報告では、近年、金融教育はグローバルな視点で捉えられるようになってきていること、日米の学生を比較しながら、日本の金融教育における現状と課題を示されたこと、さらに相互扶助的な、ある意味、社会的な使命感を学生にきちんと理解してもらうような教育の方向性にも言及されたこと等について、コメントして頂きました。

ワークショップでは、性別の違いにおける逸失利益の考え方について、また、今回の交通事故の講義で逸失利益と時間価値との関連を取り上げた意味について西村先生に質問をされました。また、「今の大学生に、若いうちにどのような知識を、どのようなスタンスで提供するのか」が今、問われているとして、今回の講義はこの問いへのひとつの答えをご提示頂いたもので、大変有意義であったと評価されました。

大学分科会の模様(1)

実践発表およびワークショップ(2)

「子どもの意識をふまえた金融教育の展開」
東京学芸大学 大竹 美登利 教授

実践発表

本日は、東京学芸大学が金融機関と8年間にわたって取り組んできた共同研究の成果を報告します。本学は小中高の教員を養成している単科大学で、金融教育の取り組みは2006年度から始めています。一般的に「金融=経済=社会科」というイメージがありますが、私は、金融教育は社会科という中に押し込めるだけではなく、いろいろな教科で取り組む必要があると思っています。本学では、家庭科、道徳、総合的な学習、特別支援に焦点を当てていますが、もっと他の教科にも広げる必要性を感じています。

本学には、全部で12の附属校園があり、幼稚園を除く、各附属の先生方に協力してもらって金融教育を行っています。そこで授業実践を行い、それを対象に授業研究を行い、その結果をカリキュラム開発に生かしています。この手法は日本独特のものです。金融教育は8年間にわたり取り組んできましたが、最近の2年間では、授業の対象である子どもたちが「金融についてどういうことが分かっているのか」、「何を知りたいと思っているのか」について意識調査を実施し、授業内容を見直すことにしました。調査は、選択肢方式、記述方式とも利点があるので、2つの方式で調査を実施しました。

本日は、調査結果を踏まえカリキュラム開発した授業のひとつをご紹介します。児童に、金融教育について知りたいことを尋ねたところ、「上手なお金の使い方、ため方」、「外国為替」、「会社を起こすこと」に比較的関心が高い結果となりました。こうした児童の実態と家庭科の学習を関連付けて、本授業では「考えよう お金と買い物とくらし」をテーマとして、物や金銭の計画的な使い方、金銭を大切にして適切に買い物をすることを学ぶ授業を計画しました。具体的には、海外旅行をテーマに掲げ、銀行の職員の方に来てもらい、銀行に関心を持たせたり、物やお金を計画的に使うことの重要性等について考えさせる授業展開としました。この際、特別の支援が必要な児童が含まれたことから、視聴覚教材を充実するなど授業に工夫を凝らしました。

これらを大学の授業へ活用するに当たっては、生涯生活設計を軸に構成しました。本日、皆さんに実践して頂くのは体験的な内容の「生活設計ゲーム」です。

ワークショップ

生活設計ゲームは、ある世帯の1か月分の家計の収入と支出の計画を立て、トランプカードを引いて出たイベントに従って、お金の出し入れを行ってもらう内容です。家族パターンによる生活の多様性を認識して頂くために、夫のみ働く、共稼ぎ、子どもの有無、単身など、7つの家族を設定しました。まず、グループごとに家族を決め、それぞれ月当たりの収支一覧表を計算し、ゲームを開始します。順番にカードを引き、そのイベントの内容を各グループの収支に反映してもらいます。最後に、収支金額を計算し、各グループより発表して頂きます。なお、実際の授業では、最後に、「ゲームを通じ、家計管理を体験して気付いたこと」、「将来、どのような働き方をしたいか」などを書いてもらうようにしています。

参加者からは、「家計管理を教えることの大切さを実感した」、「すごく参考になる教材を紹介して頂いた、早速、学校に持ち帰って実践してみたい」とのご意見を多数頂戴しました。

コメント

上村先生より、次のようなコメントがありました。
西村先生、大竹先生ともに、アンケート調査を利用して、子どもたちの実態を明らかにし、それに基づいて授業を展開されていますが、アンケート調査をどのように行ったら効果的か、ある程度共通のアンケートにできないかなど、皆様にお考え頂くと良いと思っています。また、私自身も、大竹先生のお話を聞きながら、「連携協働型のアクティブラーニングはそれを学んだ人たちにどのような効果をもたらしたか」という効果測定のアンケートの実施も課題だと思ったところです。
大竹先生のワークショップはまさにワークショップらしいもので、「家計管理というのは大変盛り上がる」という体験をして頂いたかと思います。「このような金融経済の知識があったら、より豊かな暮らしになりますよ」ということを、私たちは今、一生懸命発信すべき時期に来ていると思っています。

大学分科会の模様(2)

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