個票データを用いた研究成果
どのような人々が無貯蓄世帯化しているのか
研究者:鈴木亘(東京学芸大学)
*カッコ内の所属は、研究成果完成当時
完成時期:平成16年12月
金融広報中央委員会が毎年発表している「家計の金融資産に関する世論調査」によれば、金融資産を保有していないいわゆる無貯蓄世帯は年々増加しており、平成15年には調査世帯の21.8%にも達している。本稿は、この無貯蓄世帯がどのようなプロファイルの人々であるのかを「家計の金融資産に関する世論調査」15年調査の個票データを用いて検証した。はじめに、質問票の各問を用いて、無貯蓄世帯の定義に矛盾する世帯を抽出して、無貯蓄世帯率の精査を行った。次に、無貯蓄世帯化する要因として、
(1)失業、賃金減少などのショックにより貯蓄を取り崩す
(2)高所得者の回答拒否
(3)金利が低いことにより現金を所有
(4)寛大な年金を期待して高齢者が貯蓄を使い切る
(5)住宅ローンや借金の返済で貯蓄を使い切る
(6)パラサイトシングルや介護等の扶養者のために使い切る
といった仮説を挙げ、その可能性を一つずつ検証した。最後にこれらの要因を説明変数化したプロビットモデルを推計し、無貯蓄世帯になる原因を分析した。その結果、失業状態や若年齢は無貯蓄世帯化とは関係が無く、むしろ就業世帯で低所得の世帯に関係が深いことがわかった。また、住宅ローンなどの借入返済の重いこと、扶養人数が多いことなども、無貯蓄世帯化に関係していることが分かった。