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日本の「ワーク・ライフ・バランス」最新事情

(女性の働き方の変化と課題)

ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活を調和させること

仕事をすることは収入を得る上で欠かせませんが、家事・育児・介護・地域活動・趣味といった生活を充実させることも重要です。

ところが、実際には仕事と生活の両立が難しいという現実に直面している人が少なくありません。

とくに、女性にとって仕事の継続と子育てが二者択一になるような状況が、日本の少子化を進める要因の1つとなったともいわれています。

こうした課題を解決するのに必要なのが、「仕事と生活の調和=ワーク・ライフ・バランス」の実現です。

ワーク・ライフ・バランスという考え方は、1980年代に欧米から始まったとされています。

日本では、2007年12月に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。

この憲章と行動指針では、

  1. 就労による経済的自立が可能な社会
  2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
  3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会

が、「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」として示されています。

日本における女性の年齢階級別労働力率「M字カーブ」の現状

日本では、女性が結婚・出産をするタイミングの離職率の高さが社会的課題の1つとされてきました。

これを表しているのが年齢階級別労働力率、いわゆる「M字カーブ」と呼ばれるグラフです。

内閣府の「男女共同参画白書令和4年版」で女性の年齢階級別労働力率の変化を見てみると、1981年のM字カーブの底は25~34歳ですが、2021年には、同じ年齢階級のカーブが浅くなっています。

M字カーブの底は35~39歳へと上昇しており、グラフの形が台形に近づきつつあります。

このように、女性の労働力は全体的に上昇しており、結婚・出産・育児期の労働力の低下についても改善傾向にあるといえます【図表1】。


【図表1】女性の年齢階級別労働力率(M字カーブ)の推移

上記説明のM字カーブの推移折れ線グラフ

(出所) 
内閣府「男女共同参画白書令和4年版」を基に監修者作成

同白書によれば、雇用者の共働き世帯の数は、1985年には男性雇用者と無業の妻からなる世帯(以下、専業主婦世帯)の数の7割強だったところ、1990年代に逆転し、2021年には約2.6倍になっています。

現在では共働き世帯の方が専業主婦世帯以上に一般的であり、女性の労働力が社会を支えていることが見て取れます。

ただし、課題がなくなったわけではありません。

共働き世帯のうち、妻がフルタイム労働(週35時間以上就業)の世帯数は、1985年以降400~500万世帯で推移しており、2021年においても486万世帯とほぼ横ばいです。

一方、妻がパートタイム労働(週35時間未満就業)の世帯数は1985年に228万世帯であったものが、2015年ごろに専業主婦世帯数を上回り、2021年には691万世帯と大きく増加しました。

つまり、共働き世帯は増加しているものの、その多くがパートタイム労働の増加であると考えられます【図表2】。


【図表2】共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)

上記説明の共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移折れ線グラフ

(出所) 
内閣府「男女共同参画白書令和4年版」を基に監修者作成

また、女性の年齢階級別正規雇用比率(2021年)は、25~29歳がピーク(58.7%)で、30代、40代と年代が上がるほど同比率は低下しています。

これには、出産を機に転職したり働き方を変えるなどして、その後はパートタイムや派遣などの非正規雇用で働く女性が多いという背景があると考えられます。

勤務時間の短さや働き方の調整のしやすさに利点を感じて、非正規雇用を選択するのであれば問題ありません。

しかし、とくに中小企業では、短時間勤務、リモートワーク、代替要員などの環境が整っていないといった理由で、非正規雇用への転換という選択をせざるを得ないことも少なくないようです。

女性の労働力を十分に活かし、活躍を促すためには、働き方を選択できる土台づくりが急務だといえるでしょう。

仕事と家事・育児に使う時間には男女差がある

仕事と家事・育児に使う時間の男女差についても課題があります。

内閣府の「男女共同参画白書令和2年版」で、世帯構成別の時間の使い方(有業者の仕事のある日)を見てみましょう【図表3】。


【図表3】1日当たりの仕事等時間と家事等時間(有業者の仕事のある日)

(女性)
  単独世帯 夫婦のみ世帯 夫婦+子ども(就学前)世帯
※子どもは末子の年齢
仕事等時間
(学業、通勤時間を含む)
8時間29分 7時間39分 7時間40分
家事時間 1時間10分 1時間59分 2時間11分
育児時間 - - 2時間27分
その他(介護含む) 14時間21分 14時間22分 11時間42分
(男性)
  単独世帯 夫婦のみ世帯 夫婦+子ども(就学前)世帯
※子どもは末子の年齢
仕事等時間
(学業、通勤時間を含む)
8時間54分 8時間59分 10時間02分
家事時間 1時間00分 0時間45分 0時間47分
育児時間 - - 1時間10分
その他(介護含む) 14時間06分 14時間16分 12時間01分
(出所) 
内閣府「男女共同参画白書 令和2年版」を基に監修者作成

夫婦+子ども(就学前)世帯では、女性の「仕事等時間」は男性の約0.8倍である一方、「家事時間」は男性の約2.8倍、「育児時間」は男性の約2.1倍となっています。

夫婦のみ世帯と夫婦+子ども(就学前)世帯の女性の「仕事等時間」は、どちらも7時間40分程度で変わりません。

女性は子どもが生まれると、働き方を変えたりその他の時間の使い方を工夫したりすることで、家事、育児に充てる時間を増やしている様子がうかがえます。

それに対して、男性は、子どもが生まれても家事・育児に充てる時間が女性ほど増えていない一方、「仕事等時間」は増えています。

こうした点から、家事・育児の負担が女性にかたよっている傾向が見て取れます。

同白書の中では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方についても取り上げられています。

1979年はこの考え方に「賛成/どちらかといえば賛成」が女性70.1%、男性75.6%だったのに対して、2019年には女性31.1%、男性39.4%と大幅に減少しており、男女ともに仕事と家庭に対する意識には変化が見られるようです。



つづく


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