あなたの資産を守る金融商品の保護
Ⅶ.保険契約者の保護
5.保険契約者保護機構
保険契約者保護機構は、その会員である保険会社が経営破綻に陥った場合に、保険契約者の保護を図り、もって保険業に対する信頼性を維持することを目的としています。
現在、保険契約者保護機構には、生命保険会社が加入する「生命保険契約者保護機構」と、損害保険会社が加入する「損害保険契約者保護機構」の2つがあります。
加入対象金融機関
国内で営業を行う生命保険会社、損害保険会社(いずれも外国保険会社の在日支店を含む)は、その取り扱う保険種類に応じた保護機構への加入が義務づけられています。
加入対象外
再保険契約・船主等責任保険契約に係る業務のみを行う保険会社等は、保護機構への加入を要さないこととなっています。(注)
(注)保険会社以外の者(少額短期保険業者など)は、保険契約者保護制度の対象ではありません。
(1) 責任準備金の補償
補償対象保険契約と保護の範囲(注1)
国内で事業を行う生命保険会社の元受保険契約(運用実債連動型保険契約の特定特別勘定に係る部分を除く(注2)は保護機構の補償対象となります。
なお、保護機構による補償対象外の部分については、更生計画等に定めるところによります。
補償対象保険契約と保護の範囲
- 生命保険
高予定利率契約(注3)を除き破綻時点の責任準備金の90%まで補償。 - 損害保険
- (注1)保険契約者が、個人・小規模法人*4、マンション管理組合*5である場合、保護機構による補償の対象となります。ただし、上表中、★印の保険は、保険契約者を問わず補償の対象となります。
- *1・2・3 「短期傷害」とは、いわゆる傷害保険で保険期間1年以内の保険契約が該当します。「特定海旅」とは、いわゆる海外旅行傷害保険が該当します。「年金払型積立傷害保険」とは、いわゆる年金払積立傷害保険のほとんどが該当します。いずれも、契約締結時に行う告知事項に健康状態に関するものが含まれない保険契約に限られる等、対象となるための条件がありますのでご注意ください。
- *4 「小規模法人」とは、破綻時において、常時使用する従業員又は常時勤務する職員の数が20人以下の次の法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含みます)をいいます。
- 日本法人
- その日本における営業所又は事務所を通じて保険契約が締結されている場合の外国法人
- *5 「マンション管理組合」とは、建物の区分所有等に関する法律第3条・第65条に規定する団体であって、 主として住居としての用途に供する建物等の管理を行うためのものをいいます。
- (注2)補償対象とならない運用実績連動型保険契約の特別勘定部分とは、特別勘定を設置しなければならない保険契約のうち最低補償(最低死亡保険金保証、最低年金原資補償等)のない保険契約にかかる特別勘定を指します。
一方、更生手続において、当該部分についての責任準備金を削減しない更生計画を作成することが可能です(実際に削除しないか否かは、個別の更生手続の中で確定することとなります)。 - (注3)破綻時に過去5年間で常に予定利率が告示所定の「基準利率」を超えていた保険契約(*)を指します。当該契約については、補償限度が以下のとおりとなります。ただし、破綻会社に対して資金援助がなかった場合の弁済率が下限となります。
高予定利率契約の補償率=90%-{(過去5年間における各年の予定利率-基準利率)の総和÷2}- *一つの保険契約において、主契約・特約の予定利率が異なる場合、主契約・特約を予定利率が異なるごとに独立した保険契約とみなして、高予定利率契約に該当するか否かを判断することになります。また、企業保険等において被保険者が保険料を拠出している場合で被保険者毎に予定利率が異なる場合には、被保険者毎に独立の保険契約が締結されているものとみなして高予定利率契約に該当するか否かの判断をすることになります。ただし、確定拠出年金保険契約については、被保険者が保険料を拠出しているか否かにかかわらず、被保険者毎に高予定利率契約に該当するか否かを判断することになります。
保険契約の継続を図る仕組み
保護機構が、保険契約の継続を図る仕組みは、破綻保険会社の保険契約の移転等を受ける救済保険会社が現れた場合(下記(1))と、現れない場合(下記(2))の大きく2つに分かれます。なお、いずれの方法が採られても、保護機構による最低補償に変わりはありません。
(1)救済保険会社が現れた場合(保険契約の移転)
破綻保険会社の保険契約の全部または一部の移転、合併、株式取得により、保険契約の継続を図ります。
保険契約の移転等を受けた救済保険会社について、保険金支払いなどに支障が起きないよう、保護機構が責任準備金の補償に必要な資金を援助します。
(2)救済保険会社が現れなかった場合
(保護機構の子会社による保険契約の承継)
保護機構が子会社(「承継保険会社」といいます)を設立し、承継保険会社は、保険契約の移転または合併により破綻保険会社の保険契約を引き継ぎます。このほか、承継保険会社は、保険料を受け入れ、運用し、また、保険金・返戻金その他の給付金を支払う、引き続き救済保険会社を探すなど、引き継いだ保険契約の管理および処分を行います。また、保護機構は、承継保険会社に対して、責任準備金の補償に必要な資金を援助します。
(保護機構による保険契約の引き受け)
保護機構自らが、破綻保険会社の保険契約を引き受けます。保護機構は、上記における承継保険会社と同様に、引き継いだ保険契約の管理および処分を行います。この場合、保護機構は、引き受けた保険契約の責任準備金の補償割合に応じて、その資産の不足分を補てんすることになります。
(2) 保険契約者保護機構におけるその他の機能
保険金請求権等の買い取り
会社更生手続き、行政手続きにおいて、保険契約に係る支払いのすべてが停止している場合、その間に保険事故が発生ないし満期が到来した補償対象契約については、保護機構が、保険契約者の当該補償対象契約に係る保険金請求権を買い取るかたちで、保険金その他の給付金・配当金の一定割合を支払うという仕組みがあります。
なお、後日、保護機構が回収した額が、回収等に要した費用を差し引いても、この買い取り額を上回る場合には、当該差額が追加的に支払われます。
保険契約者に対する資金の貸し付け
また、保険契約が救済保険会社や保護機構に引き継がれるまでの間、一時的に保険金の支払いができなくなる可能性があります。この場合は、一定の条件のもと、保護機構が保険契約者に対して資金の貸し付けを行う仕組みがあります。