金融教育公開授業
2017年度 金融教育公開授業
山梨県金融広報委員会
山梨県立上野原高等学校
金融広報中央委員会
山梨/上野原市の実施報告
「金融教育公開授業 in 山梨(上野原高等学校)」(10月13日開催)
上野原高等学校は、地質学上全国的にも有名な河岸段丘の上に位置し、上野原の町並みを対岸に見る風光明媚な場所にキャンパスがあります。進取の気概に溢れ、文武両道の活気に満ちた学校です。
また、「校訓 叡知創造の精神のもと、21世紀をたくましく、心豊かに生き抜き、社会の進展や調和に貢献できる人間を目指す」を教育目標とし、生徒一人ひとりの個性と能力を伸ばすべく、教職員が一丸となり教育実践にあたっています。
10月13日(金)に金融教育公開授業を開催し、全校生徒を対象とした公開授業と、ダニエル・カール氏による講演会を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「金融の種類や特徴を学ぶ」
起業家と、市長の施策や事業などに関する記事をもとに、直接金融と間接金融の特徴を踏まえて、銀行と投資家それぞれの立場から出資について検討しました。また、資産の内訳や他国との比較などから日本の金融市場の特徴を学び、株式投資が単なる金儲けの手段ではなく、豊かな社会実現のために役立つことを学びました。
(2)「西鶴諸国ばなし~大晦日は合はぬ算用~」
「西鶴諸国ばなし~大晦日は合はぬ算用~」は、貧しい暮らしの浪人たちの、落ちぶれても武士としての誇りを忘れぬ義理堅さが主題の美談ですが、これをお金をめぐるトラブルとの観点から考えてみました。グループごとに前回までの授業で調べた成果を発表した後、「主人公である浪人へのアドバイス」、「この話を読んでお金について考えること」の2つをテーマに話し合いました。お金を計画的に使うことやお金の管理の仕方について、普段の生活を振り返る良い機会になりました。
(3)「指数関数と数列の和を利用して複利計算を学ぶ」
この授業は、数学として単利や複利の計算を扱うだけにとどめず、現実世界の金利を用いて利息やローンの計算をさせることで利息やローンの実態を理解させるとともに、賢く資産を増やすためにはどうしたらよいかを考えさせるものでした。まず、新車購入時のローン返済額を単利と複利で計算し、2年後の支払額の違いを確認しました。また、定額を定期的に積み立てて目標額に到達するための要積立額はいくらか、複利で計算しました。現在の金利の状況では預貯金で資産を増やすことが難しいことを実感し、預貯金以外の運用方法も勉強することが大切であることを学びました。
(4)「医療制度とその活用」
「日本は幸せな国なのか?」をテーマに、グループごとに話し合った後、日本の医療保険の仕組みや、各国の医療制度の概要などの資料を参考にしながら、日本には人々の健康を守るための保険・医療制度が存在すること、行政やその他の機関から保険に関する情報・医療が供給され、医療費の保障も含めたサービスが提供されていることを学びました。
(5)「家計管理と社会保障制度について学ぶ」
「収入に見合った家計管理ができるようになること」を主題とし、『これであなたもひとり立ち~自立のためのWORKBOOK~』を使いながら、多重債務、正社員とフリーターの賃金格差、給与明細の読み取り方などについて学習してきました。今回の授業では、「社会人の一人暮らし生活」の収支管理をシミュレーションしてみながら、社会保険の種類、収入に見合った生活を送るための金銭感覚、お金の管理方法、将来の生活設計などについて理解を深めていきました。収支バランスのとれた生活を送ることの難しさや重要性を実感することができました。
(6)「集合と命題~推論~」
数学でよく用いられる三段論法の手法を用いながら、「なぜバブル経済が始まり崩壊したか」をグループで考えました。数値分析により客観的に事実をとらえるなど、数学的な思考が金融リスクの回避などの社会生活に役立つことを学びました。
(7)「物理現象から複利計算を考察しよう」
小球(スーパーボール)を床に落として床と衝突を繰り返す時間を測定しました。また、増幅が増幅をよぶハウリング現象を観察する実験を行いました。これらの物理現象について考察した後、複利計算とこれらの現象との類似点を学びました。
(8)「地域の活性化~上野原のPRビデオを作る~」
これまでの授業で、上野原にもっと多くの外国人観光客を呼び込むためのPRビデオをグループごとに制作してきました。今回の授業では、作成したPRビデオを全員で視聴し、撮影した映像に適切な英語で説明がつけられているか、日本の文化や固有のものについて外国人が理解できるように表現できているかなど、意見交換を行いました。PRビデオを制作することにより、上野原の良さをより深く知ることができ、地域の活性化にも貢献できることを学びました。
2.講演会
公開授業の後、ダニエル・カール氏から、「日本とアメリカの違いから学ぶ賢い消費者への道」と題する講演が行われました。「お金はもらうものではなく稼ぐものである」など、日米の文化や金銭感覚の違いを、長年日本でも暮らしたご自身の経験に基づいてユーモアを交えつつお話しになりました。お金のことをタブーにしないで家族で話すことを勧められ、家族での会話を通じて金銭トラブルに遭わないための知識を身に付けていくことができるとお話しになりました。生徒はメモを取りながら熱心に聞いており、アメリカでは金融に関する課題は家庭教育の一つとして取り組まれていることを学びました。
参加者からは、「日本とアメリカの文化的な違いを知ることができた」、「金融がテーマなので難しい内容と思っていたが、子供の頃のお話や日本に留学した時のお話など、体験談を交えて話してもらえたのでとてもわかりやすかった」、「お金に対する価値観や考え方が日米で全然違うことに驚いた。お金について改めて考えさせられた」といった感想が寄せられました。
3.研究報告会
「本校が取り組む金融教育・実践事例の紹介」と題した報告がありました。
まず、数学科の土屋雄介教諭、家庭科の大神田寛子教諭、公民科の山下亮教諭から、これまで取り組んできた金融教育の実践について、教育現場での問題意識、目的や目標の設定、実際の実践内容と成果について報告がありました。
その後、白砂暁教諭からは、金融教育研究校の委嘱を受けた後、「金融コア会議」を立ち上げて方針の検討を行ったこと、全ての教科すべての教員が金融教育の研究と授業実践に取り組んできたこと、学びの前後で「金融に関する意識調査」を行って生徒の変容を数値化したことについて報告があり、今後の課題についても発表されました。
4.プログラム
- 12:45~13:35
- 公開授業
(1)「金融の種類や特徴を学ぶ」(1年生 現代社会)
(2)「西鶴諸国ばなし~大晦日は合はぬ算用~」(2年生 国語)
(3)「指数関数と数列の和を利用して複利計算を学ぶ」(2年生 数学Ⅱ・B)
(4)「医療制度とその活用」(2年生 保健)
(5)「家計管理と社会保障制度について学ぶ」(2年生 家庭)
(6)「集合と命題~推論~」(3年生 数学)
(7)「物理現象から複利計算を考察しよう」(3年生 物理)
(8)「地域の活性化~上野原のPRビデオを作る~」(3年生 英語) - 13:45~13:50
- 開会挨拶
山梨県立上野原高等学校校長 小川弘一 - 13:50~15:00
- 講演「日本とアメリカの違いから学ぶ賢い消費者への道」
講師:ダニエル・カール氏 - 15:30~16:20
- 研究報告会
「本校が取り組む金融教育・実践事例の紹介」
発表者:上野原高等学校教諭 土屋雄介、大神田寛子、山下亮、白砂暁 - 16:20~16:30
- 閉会挨拶
山梨県金融広報委員会事務局長 大森忠明