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著名人・有識者が語る ~インタビュー、講演、寄稿~

生涯女優を続けながら自分ができるカタチで社会にも貢献を

女優 竹下 景子

女優として10代でデビューし、50代の今も芸能界の第一線で活躍している竹下景子さん。
「夢を売る商売」といわれる芸能界を代表する女優の素顔はあまり知られていないものですが、竹下景子さんが生きる世界とその素顔を少しのぞかせていただきました。

角川映画配給 2010年公開「レオニー」

竹下 景子
(たけした・けいこ)

俳優。1953年9月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。東京女子大学文理学部社会学科卒業。NHK「中学生群像」出演を経て、1973年NHK銀河テレビ小説『波の塔』で本格的デビュー。映画『男はつらいよ』のマドンナ役を3度務め、『学校』では第17回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2007年、舞台『朝焼けのマンハッタン』『海と日傘』で、第42回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。テレビ・映画・舞台への出演の他、「世界の子どもにワクチンを日本委員会」ワクチン大使、国連WFP協会親善大使、京都国立博物館文化大使、C・C・C富良野自然塾でのインストラクターなど幅広く活動している。


「お嫁さんにしたい~」から母親へ 日本の芸能界を代表する女優

かつて、「お嫁さんにしたいタレントナンバーワン」といわれ、TBS『クイズダービー』(1976年~1992年)では現役女子大生タレントとして登場し一世を風靡。あの『男はつらいよ』シリーズでは三度(第32・38・41話)のマドンナ役をつとめ、昨年はNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』での豪傑な主人公の母親役が記憶に新しい、国民的女優・竹下景子さん。同年代なら、その名前を聞いただけで、心ときめく男性も多いだろう。

実際の竹下さんとはどのような人だろうか。

失礼を承知で言わせてもらえば、“大女優”という風格とは少し違う。しかし、多くのファンの期待には違わず、『クイズダービー』で見せてくれた聡明さやユーモアあふれる機転、テレビCMで見せてくれる清楚で優しい“お母さん”のイメージのまま、周囲を明るく笑顔にする温かな雰囲気を持った向日葵(ひまわり)のような女性である。


デビューは高校生のとき「好きを仕事に」した憧れの女性像

名古屋出身の竹下さんは高校生時代、NHK名古屋放送局が制作しているドラマ『中学生日記』の前身である『中学生群像』に出演。そこで初めて出演料をもらったことが、女優という仕事のスタートだったと振り返る。

「当時は女子高の演劇部員で、たまたまNHKへ見学に行ったことがきっかけでした。ドラマ用に設定された中学校の生徒役は、他校の生徒とも交流できる楽しい場所で本当に楽しい経験でした。それまで、自分が好きなことをして、それでお金がいただけるとは想像もしていないことでした。何回分かの出演料なのだと思いますが、ある時気付いたら、自分の貯金通帳に8000円が振り込まれていて、本当に驚いたことを今でも覚えていますね」

女優としてお金を稼ぐ。10代の竹下さんにとってはまだまだ実感のないなか、大学生になると、竹下さんが女優を職業として意識せざるをえない時期が訪れることになる。

仕事と学業の両立で自分の生きる道を選択

その後、大学進学で上京して一人暮らしを始めた竹下さん。1972年当時、実家から5万円の仕送りをもらっていたものの、そこから家賃、光熱費、銭湯代、そして食費。あまり計画的に使うタイプではなく意外に大雑把な性格だそうで、月末には一日に菓子パンひとつ、という厳しい生活も経験した。

一方で、1973年にはNHK銀河テレビ小説『波の塔』で本格デビュー。大学4年生の1976年にはTBSの『クイズダービー』がスタートし、女優だけでなく人気タレントとして活躍の場を広げていく。

ところが、そうやって仕事が忙しくなったことで、大学4年生を留年。そこで人生の試練を突きつけられる。

「そのとき、父から電話で『仕送りも学費も出さない』と言われてしまったんですね。当時は『そんなの厳しすぎる…』とは思いましたが、父としてはそれを機に、ケジメとして私に経済的な自立を促したのだと思います。その代わりに、卒業したら実家へ帰る約束も反故(ほご)にしましたが、父は、テレビの仕事を始めていた私が選ぶ道に理解を示してくれていたのだと感謝しています」

竹下さんはその後、学費も生活費も自らの力で工面して無事に卒業。学生のうちから特別に恵まれた環境にあったとはいえ、金銭には代え難い貴重な経験をしたことで、女優・竹下景子の大きな転機になったことは間違いないだろう。

妻として母として気負わない素顔

「健康な身体でいられたこと、仕事に恵まれたこと。夫には、それは本当に感謝しなければいけないことだとよく言われますね」

写真家の関口照生氏と結婚後も、長男、次男を育てながら女優という仕事を続けてきた竹下さん。

傍から見れば羨むようなセレブ生活かと思われそうだが、子どもたちのお小遣いを決めるときには、周囲の“ママ友”のアドバイスを受け、友人と同等レベルの金額を設定するなど、一般的な金銭感覚で生活するよう心がけてきたという。

「今は学生の息子たちが仕送りで生活をしています。アルバイトもしているみたいですし、2人とも実家を離れて初めて、お金の大切さを学んでいるところだと思いますね」

子どもの成長を楽しみにしながら、自立への道筋をしっかり示していく。竹下さんは、素顔もこうした優しい母親像を併せ持っているのだ。

社会貢献を通じてお金の価値・命の価値と向き合う

竹下さんの社会貢献活動のなかには、「世界の子どもにワクチンを日本委員会」の「ワクチン大使」というものがある。

「途上国へ行って驚くのは、貨幣価値と同様に命の価値まで違うのではないかと思えてしまうことです。途上国の女性はたくさん産むけれども、一方でたくさん死んでしまい、そういうことも半ば諦めている現実があります。でも、ワクチン支援によって1歳まで生きられる子どもが増えれば、その後の生存率がグンと高まることが分かっています。子どもたちが健康に育てば、その国の社会にもきっと明るい未来がやって来る─。そう信じてのワクチン支援活動なんですよ」と竹下さん。

実際に途上国などを訪問し、ワクチンやボランティアの大切さ、女優・竹下景子が活動に携わることの発信力や社会貢献度など、「ワクチン大使」としてできることを実感。竹下さんだからこそ実現できるボランティアのあり方を実践中だ。

また、竹下さんは震災支援にも熱心に協力しており、阪神・淡路大震災に関しては、被災者から届けられるメッセージを朗読する「詩の朗読と音楽の夕べ」に16年*(注)経った現在も参加。このたびの東日本大地震では、一国民として「胸の痛む想い」を綴ったうえで、現在親善大使を務める国連WFP協会を代表し、いち早く復興支援を呼びかけるメッセージを送っている。

竹下さんはほかにも、ドラマ『北の国から』を縁に、自然返還事業や環境教育に取り組む「富良野自然塾」に毎年おもむきインストラクターを務めるなど、ごく自然体で慈善活動に参加する“社会派女優”である面も大きな魅力といえるだろう。

*(注)インタビュー当時(2011年時点)。

女優として演じることはシンパシーを感じること

テレビや映画制作というのは、素人にはなかなかイメージしづらいが、各シーンをバラバラに撮影していくため、演じる俳優にとっても断片的なシーンの繰り返しであり、完成するまで出来映えはよく分からないものだという。

「かつて女優の高峰秀子さんは、『スタッフも役者も監督にとっては1本の釘である。監督にとって自分はいい釘でありたい』とおっしゃっていました。確かにその通りで、役者は自分の出ていないシーンのことは分かりませんし、監督を信じて台本に沿って演技をするしかありません。でも、その台本には台詞と筋書きは書いてあるけれども、その台詞に込める気持ちは書かれていませんから、自分なりの解釈と役作りが必要なんです。私の場合は共演者との芝居のなかで何かが生まれる瞬間があって、自分自身の芝居になっていくのを感じますね。また、舞台は通してお芝居をしますから、舞台に上がれば、何があっても芝居を止めないことだと肝に銘じています」。

『ゲゲゲの女房』の中では、夫役の風間杜夫氏との軽妙な台詞の掛け合いが好評だった。周囲の役者の空気を上手に取り込み、自分の役作りに活かせるのも女優・竹下景子なのだろう。

老後も引退もない 生涯一女優であり続ける

「私の場合は、老後と言っても、線引きをしない限りそのペースは自分で決めていける有り難い仕事がありますから、あまり欲張らないで、自分に合ったペースで女優を続けていくつもりです」。

10代から女優を始め、幾世代もの役割を引き受けながら、現在50代を迎え、まだまだこの先の活躍も楽しみな竹下さんだ。

「昨年の『ゲゲゲの女房』では、主人公の母親役を86歳まで演じました。母親役といっても限りなく年長ですよね。でも、自分の年齢を先取りして、逆に役柄から世代をひもといていける経験ができるのも、様々な人間になってその人生を味わえるのも女優という仕事の面白さ。私はそんな形でずっと社会と関わっていければいいなと思っています」

一生女優で生き続けるためにも、健康を大事にしていきたいという竹下さん。

おおらかな笑顔の下で「たいした苦労なんてしていないんですよ」と一蹴できる、そこが大女優の貫禄であり、竹下景子流の生き方に違いない。

気負わないやわらかな雰囲気のなかに、凛とした芯の通った強さを持つ、誰もが憧れる理想の女性像を見た思いがする。

本インタビューは、金融広報中央委員会発行の広報誌「くらし塾 きんゆう塾」Vol.17 2011年夏号から転載しています。


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著名人・有識者へのインタビューのほかにもお役立ち連載がいっぱいです。

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