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著名人・有識者が語る ~インタビュー~

「家にある食材や調味料だけでおいしく作れる料理」が幼いころからの理想

料理コラムニスト 山本ゆり

どこにでもある材料で簡単に作れる料理をブログで紹介し始めて13年という料理コラムニストの山本ゆりさん。
関西弁を交えた楽しい文章もあいまって、多くの人々から絶大な人気を誇っています。
ブログの更新、本の出版、CM出演、子育てと、超多忙な山本さんに料理へのこだわりや私生活のことなど語ってもらいました。

料理コラムニスト 山本ゆりさん

山本 ゆり
(やまもと・ゆり)

大阪府出身。結婚前は広告代理店の営業。現在は3児の母。ブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」が人気を博し、著書『syunkonカフェごはん』シリーズ(宝島社刊)は10冊累計で700万部を超えるベストセラーに。ツイッターのフォロワー数は100万人、インスタグラムも100万人を超える。2021年3月には最新のエッセイ集『おしゃべりな人見知り』を刊行。

料理本が愛読書だった学生時代 就職の一方で料理家への夢も

料理コラムニスト 山本ゆりさん

料理コラムニスト山本ゆりさんの人気の秘密は、なんといっても、身近な材料でおいしく簡単に作れる料理レシピにあります。調味料も塩、砂糖、醤油などなじみのあるものばかりで、初心者も気軽に作ることができます。今年最新刊が出た山本さんの著書『syunkonカフェごはん』シリーズは、10冊累計で700万部を超えるベストセラーになるなど、人気はとどまるところを知りません。

「料理は子どものころから大好きで、愛読書といえば料理本でした。100冊以上は読みましたね。でも、実際に1冊の本から作ることができた料理って、実は1~2品なんです。珍しい食材や高級な食材を使ったり、作り方も難しいことが多く、わが家ではなかなか作れなくて。で、思いついたのが代用品で作ること。たとえば、ナンプラーの代わりに醤油を使う、みたいな。そのとき、こんなふうに家にある食材や調味料で、簡単に載っているレシピが全部作れる料理本があったらいいなと思っていました」。

その後、高校、大学と進学した山本さんは、やがて就活の時期を迎え、「将来自分は何がしたいんだろう」と考えたとき、「そうだ、レシピ本だ!」と思い出します。しかし、“就活”の流れに乗らないという度胸はさすがになく、広告代理店に就職。

「将来、自分でどんな仕事をやるにしても、一回経験しておけば、きっと役立つだろうと、一番大変そうな広告の飛び込み営業を希望しました。今思えば本当、チャレンジャーでした(笑)」。

一方、料理本への思いも捨てがたく、巷ではやっていたブログに目をつけ、「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」という料理ブログをスタート。

「ブログがランキング上位に入ると、レシピが本になって出版されていく、という流れが当時できつつあったので、ブログをやっていればいつか本を出せるかもしれないなあ、と思ったんです。結構甘い考えですよね(笑)。とにかく料理本を出すことが大きな目標になりました」。

料理ブログがきっかけで「ふざけた料理本を作りたい」という夢が実現

こうして広告営業と料理ブログという二足の草鞋(わらじ)を履いて新社会人生活をスタートさせた山本さん。しかし飛び込み営業はハードで、怒鳴られることも多く、落ち込むこともしょっちゅうだったとか。

「でも、それもいい経験でした。お客様に無茶苦茶を言われたときも、上司に『あなたの営業スタイルに問題があったんじゃないか』と諭されることも多く、失敗をすぐに他人のせいにせず、まず自分の責任を考える癖がつきました。とにかく上司、先輩、お客様に恵まれた会社で。あのとき教えてもらったことが今の仕事にも生きていると思います。ただ、時代がよくなくて、ちょうどリーマンショックのあおりで会社の規模も半分ぐらいになり、お給料も減って、ボーナスも寸志。収入としては予定よりも少なかったです」。

一方、スタート当時は数十人程度だった料理ブログの読者は日を追うごとに増えていき、1年後には、料理ブログランキングで10位以内に入るという躍進ぶり。人気を獲得した裏には、簡単な料理というコンセプトのほかに、もう一つ、山本さんならではのこだわりがありました。

「たくさんの料理本を見てきて『そういえば、ふざけた料理本ってないなあ』と気づいて。もし遊びや笑いの要素の入った料理本があったら、面白いんじゃないかなと思ったんです。私は料理もそんな上手じゃないですし、先生の立場でもないので、読み物として楽しめる料理本が作れるよう、ブログの文章もゆるい雰囲気で書いていました」。

案の定、簡単に作れて文章が面白い料理ブログは出版社の目に留まり、「本を出さないか」との声がかかりました。まさに読みどおり!そして2010年、ついに初の料理本『syunkonカフェごはん』を出版する話がまとまりました。その後の決断は早く、翌年1月に会社に辞表を出すと同時に結婚。春に本の出版、初夏には出産と、人生の転機てんこ盛りの1年となるなか、不安はなかったのでしょうか。

「もちろん、たかだか本を1冊出したぐらいで、その先の目途なんて全然立ってはいなかったですけど(笑)、ブログの読者は確実に増えていたし、少しずつですが、雑誌の仕事などももらえていたので、なんとかやれるだろうと。実際、ありがたいことに、その後はコンスタントにお仕事がいただけたし、そこは運がよかったと思います」。

不器用な人も安心して作れるレシピが多くの人の共感を得た

本は1冊出したものの、やはり肝となるのはブログです。人気を不動のものにするには、なるべく毎日更新することが不可欠。山本さんもこの鉄則を守り、ほぼ毎日更新し、新しい料理をアップしました。

料理は独学で、読みこんできた料理本を参考にしながらレシピを考え、近所のスーパーで一番安い食材と調味料を買い、自宅のキッチンで何度も試作を重ねます。できた料理は自分で撮影して、時間があるときに画像を取りこみ、加工し、アップ。そのあと2時間ほどかけてレシピの文章を書くほか、日によってレシピ以外のおもしろネタ(家族の話や日常の困ったことなど)も書きますが、これには5~6時間かかることも。つまり1本のブログにはかなりの時間と労力が必要です。

そんな山本さんのブログの魅力は、どんなところにあるのでしょう。

「料理って、できない人っていないと思うんです。ただ、器用か不器用かというのはあって、それに関していうと、私は確実に不器用で。細かい作業はできないし、難しい料理はなかなかうまく作れない。だから、私が紹介する料理は、不器用でも、調味料を量ってさえいれば完成する、簡単なものばかりです。私が作れるぐらいだから誰でも作れるみたいな(笑)。不器用で面倒くさがりな人間が作った本、というのが、ある意味、画期的だったのかもしれません。たとえば、材料に“ニンニク1片”と書いてあっても、その横に“入れなくても大丈夫”と添えたり、作り方がややこしい部分には“こうすればもっと簡単”とか“こうすると失敗します”など先回りして書ける。それがよかったのかなと思います」。

昨今はコロナ禍のなか自炊、外食、あるいはお惣菜を買って自宅で食べる「中食」など、食事のあり方が注目されています。

「私はお惣菜、全然ありだと思っています。私も土日の夕飯には、スーパーのお惣菜を買いますから。唐揚げやとんかつを買って、レンジでチンして、野菜を切って添えるだけとか、お刺身を買ってそのままテーブルに並べるとか。そこに私はまったく罪悪感はありません。そもそも私は“忙しい日は作らなくてもいい派”です。でも、お惣菜を買うことに罪悪感がある人や、『お惣菜だと栄養面や経済的な面で不安だ』と思うときもある。そういうときに、選択肢の一つとして時短レシピがあれば、少し気持ちが楽になるんじゃないかなと。食事は毎日のことなので、ストレスにならないよう、臨機応変に向き合えたらいいなと思います」。

会社員時代にお金を稼ぐことの大変さを知ったのは私の財産

料理コラムニスト 山本ゆりさん

本とブログは互いに相乗効果をもたらし、山本さんの認知度は次第にアップ。1冊目の売行きも好調だったことから2012年に第2弾、翌年に第3弾が発売され、雑誌やテレビ番組でも取り上げられ、見事、山本さんは人気料理家の仲間入りを果たしました。もちろん、比例して収入もアップしましたが、生活が派手になることはなかったといいます。

「基本、貧乏性なんです。それは単純に、子どものころ、家にお金があまりなかったからで、自然とおこづかいの範囲内でモノを買う習慣が身についたんだと思います。もう一つ、会社員時代の話なんですが、新規のお客様と契約した際のインセンティブ(成績に応じた報奨金)が1,000円だったんです。何度も訪問して、あれこれ言われて、汗水たらして、1,000円稼ぐのって、こんなに大変なんだって。でもそこが金銭感覚の基準になったのは、すごくよかったと思います。今どんな金額のお仕事でも不満がないですし、金額に関わらず一生懸命取り組むという姿勢が身につきました」。

そんな山本さんには、お金について、小学生のころから続く決め事があるといいます。

「実はこれは母の教えなんですが、お金は回るものだから寄付をしよう、というのが習わしで、習慣的に寄付をしていたんです。そんな母を見ていたので、私と姉もときどきおこづかいから少しずつ寄付をしていました。1冊目の本が出版されたとき、感謝の気持ちも込めて母にお金を渡したら、そのほとんどを寄付していましたね。私も、syunkonシリーズ以外の料理本については、全額寄付しました。自分は好きなことをやってお金をいただいているので、社会に対して自分ができることはしたいし、そういうところにお金を使える人でありたいと思っています。でも本当はこういうこと、言わないほうがいいんですよね。まだまだ人間できてないです(笑)」。

素敵なお話をしてくれたあと、しっかり笑いをとるところが、なんともチャーミングな山本さん。

常識にとらわれずにより良いものを追求したい

人生100年時代といわれるなか、今後の夢についてうかがうと、それをなかなか考えられないのが今の悩みの種といいます。

「目の前のことに必死なまま、毎日を過ごしてしまっているのが現状ですね。今はまず、子どもたち3人をちゃんと成人まで見届けて、そのなかでやりたいことが見つかったらいいなあ。だから、そうなったとき、すぐに動きだせるよう、日ごろから体力作りに励んだり本を読んだりして幅を広げておこうと思っています」。

ただ、料理本については、今までの常識にとらわれずにより良いものを追求していきたいという思いがあるといいます。

「たとえば、料理本の多くが、材料を分量の多い順に書いていくんですが、作る人からすると、使う順で書いてあったほうがスムーズだし、まな板もいちいち洗わなくて済みます。なので、去年出版した私の本では、書き方の順番を全部、入れ替えたんです。料理本における“当たり前だけど、なんだか不便”という部分を、少しずつ変えていくのが、今の目標ですね。料理本ももう11冊出しましたけど、シリーズを重ねるごとにだんだんよくなっているので、『どれを買ったらいいですか』と聞かれたら迷わず最新刊が一番いいとおすすめしています」。

食を通じて人を笑顔にする。そんな山本さんの夢がつまった新しいレシピが、これからも楽しみです。

本インタビューは、金融広報中央委員会発行の広報誌「くらし塾 きんゆう塾」vol.57 2021年夏号から転載しています。


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