金融教育公開授業
2018年度 金融教育公開授業
静岡県金融広報委員会
磐田市立青城小学校
金融広報中央委員会
静岡の実施報告
「金融教育公開授業 in 磐田(青城小学校)」(11月9日開催)
磐田市立青城小学校は、日本のほぼ中央、静岡県西部の天竜川東岸に広がる磐田市に位置し、昭和54年に豊田南小学校を二分する形で創設された学校です。「ともに学び 進んでやり抜く たくましい子」を教育目標に掲げ、「知・徳・体のバランスのとれた子どもの育成」を目指しています。
平成29年度に静岡県金融広報委員会から金融教育研究校の委嘱を受け、「主体的に考え表現する子-つながり合う授業を通して-」を研究主題として、教科等のねらいの実現を目指す中で、金融教育に関わる内容を単元構想に取り入れた授業づくりに取り組んできました。
本年度は、2年間の集大成として、11月9日(金)に金融教育公開授業を開催し、4クラスでの公開授業、研究発表、住田裕子氏による講演会を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「かけ算(1)」
2年生は、買い物に興味はあっても、実際に自分で買い物(支払い)をした経験が少ないため、2年1組の「算数科」では、400円でみかんを買う時に、3店のうち一番お得なのはどの店か、九九を使って考えました。みかんの実物を使って児童の興味を引き出し、店により1袋に入っているみかんの数が違う設定にしています。こうして、「お得な店をさがす」という目的を考えて、何個ずつ何袋買えるのかを九九で計算することで、金融教育の「生活設計・家計管理に関する分野」を学習しました。
(2)「がい数」
4年生でも買い物経験の少ない児童がみられることから、4年2組の「算数科」では、より多くの福引券がもらえるように、10,000円以上になるレシートを組み合わせ、概算の仕方を考えました。日常生活において概数を用いて結果の見通しを立てることは、金融教育の「消費生活・金融トラブル防止に関する分野」において大切な「目的や価格を考えてものを選んで買うこと」の学習にも結び付きました。
(3)「わたしたちの生活と工業生産 自動車をつくる工業」
磐田市は自動車工場が集積している地域であることから、5年生の「社会科」では既に校外学習としてスズキ株式会社の湖西工場を見学し、生産工程のうちプレス・溶接・塗装はロボットが行い、正確さが求められる組み立て・検査は人が行っていることを学んでいます。そのうえで、5年2組では、組み立て工場で働く人がひもスイッチやアンドン等を使って効率よく作業する工夫や努力をしていることについて、グループで意見交換を行いました。また、指示ビラを使って、注文した人(消費者)のために不良品を出さない工夫や努力をしてよりよい製品を生み出していることも学ぶなど、金融教育の「キャリア教育に関する分野」の学習を行いました。
(4)「にこにこパーティーをしよう」
特別支援学級では、金融広報アドバイザーの派遣講座で、カレーを作るために必要な材料や買い物の仕方を学んできました。今回の4組の「生活単元学習」では、「にこにこパーティーをしよう」と題し、みんなが笑顔になるようなお好み焼きの材料を考え、実際のお金を使って金額を確認しながら、買い物ゲームを楽しみました。このようにして、金融教育の「生活設計・家計管理に関する分野」の観点から、500円という予算の範囲内で残金が少なくなるように買うことを学びました。
2.研究発表
冒頭、本校が金融教育の授業を進めていくうえで指導を仰いだ4名の外部講師を代表して名古屋学院大学の滝浪教授から、本校の研究構想について説明いただきました。
続いて、鈴木研究主任から、具体的な取り組みについて、スライドを使いながら以下のような説明がありました。
本校は、これからの時代を生きる子どもたちの資質・能力を育むために必要な「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業づくりを目指してきました。金融教育研究校の委嘱を受けたことを契機に、金融教育で育もうとする概念はこれからを生きる子どもたちに必要なものであり、金融に関わる教材を教科等の授業で効果的に扱い研究を深めることができれば子どもたちを目指す姿に導くことができると考えました。また本校の研究主題である「主体的に考え表現する子」の実現にも結び付くと考えました。
授業では、「教材」、「友達」、「新たな自分」がそれぞれにつながり、影響し合うことにより、主体的な子どもの学びが生まれるように取り組んできました。また、静岡県金融広報アドバイザーを講師として、「お金ってなあに」、「お金はどこからくるの」というテーマで複数の金融講座を開催し、お金と向き合い管理することについて、全学年の児童が学びました。保護者対象として「大事なことなのに学校で教えないこと=お金」と題する講演会も行いました。
3.講演会
弁護士の住田裕子氏から、「未来の自分を守る金融教育─お金のトラブルから自分を守るために─」と題する講演が行われました。
最初に、「人間は合理的に考え、合理的に行動するものか?」とのテーマで、将来が不安であればあるほど人間は今の誘惑に負ける存在であるということを説明くださいました。また、人に騙されないためには、曖昧な返事をせず、誘導に乗らないことが大切であるなど、弁護士としての経験談を交えながら話してくださいました。
次に、「日本の現状と次世代に期待すること」として、社会構造の変化やデジタル社会の概要について説明されました。そして、これからの時代、社会で活躍するために必要な資質としては、学力(IQ)だけでなく、人間力(EQ)、熱意、意欲、忍耐、自制、謙虚、共感性、中庸などが必要であることを力説されました。
最後に、「金銭教育」について、生活設計の観点から収入の範囲内で生活すべきこと、キャッシュレス生活での使い過ぎに注意すべきことについても説明されました。また、投資の秘訣として、うまい投資話に乗らず即断しないこと、余裕資金を分散投資することが大切であることを教えてくださいました。
参加者からは、「生きていくうえで大変役に立つ情報が多かった」、「これからお金のトラブルに巻き込まれないように気を付けたい」といった感想が聞かれました。
4.プログラム
- 13:20~14:05
- 公開授業
(1)「かけ算(1)」(2年生 算数科)
(2)「がい数」(4年生 算数科)
(3)「わたしたちの生活と工業生産 自動車をつくる工業」(5年生 社会科)
(4)「にこにこパーティーをしよう」(特別支援学級 生活単元学習)
- 14:20~14:30
- 開会挨拶
静岡県金融広報委員会会長 竹内淳 - 14:30~14:50
- 研究発表
名古屋学院大学スポーツ健康学部教授 滝浪常雄
磐田市立青城小学校研究主任 鈴木崇広 - 15:00~16:00
- 講演「未来の自分を守る金融教育─お金のトラブルから自分を守るために─」
講師:住田裕子氏 - 16:00~16:05
- 指導講評
静岡県教育委員会 義務教育課 指導班 教育主査 瀬戸武生 - 16:05~16:10
- 閉会挨拶
磐田市立青城小学校長 萩原直人