金融教育公開授業
2018年度 金融教育公開授業
山梨県金融広報委員会
上野原市立秋山小学校
金融広報中央委員会
山梨/上野原市の実施報告
「金融教育公開授業 in 山梨(上野原)(秋山小学校)」(11月30日開催)
上野原市立秋山小学校は、平成13年4月10日に、浜沢、栗谷、桜井3小学校が統合し創立されました。3つの小学校統合のため校区が広く、東西14.8㎞、南北4㎞の長方形の山間地となっています。県道・四日市上野原線が東西に走っており、全校児童の90%の児童がこの道をスクールバスで通っています。秋山中学校とは2㎞ほど離れており、その間に市役所支所、消防出張所、駐在所、郵便局などが集中して位置し、校区の中心地をなしています。
他の山間地域と同様に、秋山地区も人口流出による過疎化が深刻な問題となっており、児童数はこの10年間で半減し、平成30年度は全校児童51名です。
地区内には、昔から営まれている商店や食堂、民宿などが点在しますが、人口の減少と後継者不足から、廃業した商店も多くあります。そのため、児童が地域の生活の中で買い物をする機会が少なく、実際にお金を手に持って買い物をする経験がほとんどないことや、貯蓄の意義は理解しているものの貯蓄の習慣までは身に付いていないという実態があります。義務教育の9年間は、学校や家庭、地域での生活環境がほとんど変わらず、高校進学と同時に行動範囲が一気に広がる状況があります。そのような状況の中、金銭教育を通して、自分の生き方や価値観を磨き、社会をたくましく生き抜く力を培っています。
山梨県金融広報委員会より2017・2018年度の金銭教育研究校の委嘱を受け、研究活動を行ってきました。本年度は、2年間の集大成として、11月30日(金)に金融教育公開授業を開催し、2年生と5年生を対象とした公開授業と、研究発表、あんびるえつこ氏による講演会を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「お店やさんへいこう」(2年生 生活科)
1学期に行った学校近くの商店での買い物体験を思い出し、何を買ったか、どうしてそれを買ったか、思い通りに買い物ができたかなどの発表をしました。続いて、「300円のアイス1個を買う買い方」と、「300円で4個のアイスを買う買い方」のどちらが「買い物名人」といえるか、について話し合いました。「おいしいから1個で十分」、「分けられるからいっぱい買った方がいい」などの意見が出ました。買い物名人になるには、買い物をする時に何をどんな理由で買うのかよく考えること、お金を大切に使い買った物を大切にすべきことを学びました。
多くの児童から、「お金は大事なので無駄遣いをしないようにすることが大事だとわかった」との感想が聞かれました。
(2)「お楽しみ会を充実させよう」(5年生 総合的な学習の時間)
お楽しみ会でのスーパーボールすくいの模擬店を、限られた予算内で効果的に運営する方法を考えました。これによってお金には限りがあり、その中で「何かを買ったら、何かが買えなくなること」(トレードオフ)について学ぶための授業です。
事前に、各自が「意思決定チャート」に記入しておいた、「購入するものの組み合わせ、良い点、悪い点、目的達成度、予算を有効に使えたか」をもとに、模擬店をつくるとしたらどのようなお店になるかを班ごとに話し合いました。その結果、「アイデア優先型」、「もうかります型」、「お客様優先型」のお店が計画され、発表が行われました。
最後に、生活の中で経験したトレードオフについて発表し、トレードオフについて理解できていることを確認しました。
児童からは、「トレードオフの体験がたくさんあったことに気が付いた」、「お金は考えて使いたいと思った」などの感想が聞かれました。
2.研究発表
「わかる授業の創造~『主体的・対話的で深い学び』を目指した各教科・領域の授業づくり~」を研究テーマにしました。1年目は、お金に関する児童の実態把握や、「一人一実践」を通して、いろいろな取り組み方を学びました。これが2年目の土台となりました。各教科・領域で「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた改善を目指したことは、金銭教育のねらいに迫る授業づくりにおおいに役立ちました。
金融教育は、「自ら学び、自ら考え、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する資質や能力を養う」のに有効であることがわかりました。また、児童が自分の生活や社会について考え、生き方や価値観を磨きあげることの一助にもなりました。
金融教育を通して、家計管理の難しさを知り、親への感謝の気持ちが育ちました。ものやお金には限りがあることを理解してこれらを大切にしたり、お金に関することに計画的に取り組む態度を養うことができました。今後の課題は、限られた時間の中に金融教育を取り入れていくための工夫であると考えています。
3.講演会
公開授業の後、あんびるえつこ氏による「子どもたちの生きる力と金銭教育」と題する講演が行われました。
まず初めに、「お金を教えるとは」として、「金銭教育」「金融教育」「消費者教育」のそれぞれの意味とその違いについて説明がされました。
続いて、「FinTech」時代の到来や「Society5.0」にむけて、生きるために自分自身で考える必要があることを例示したうえで、金銭・金融教育が必要な理由を説明してくださいました。
さらに、ご自身が開発された「カレー作りゲーム」を使って、金銭教育をどのように進めて行けばよいのかを具体的に教えてくださいました。参加者の声を聞きながらの講演は、参加者の主体性や意欲を高めるものでした。
参加者からは、「新学習指導要領の内容と重ねながらのお話で、興味深く聞くことができた」、「講演者自身の体験談や簡易ゲームがとり入れられており、とてもひきつけられた」といった声が聞かれました。
4.プログラム
- 13:50~14:35
- 公開授業
(1)「お店やさんへいこう」(2年生 生活科)
(2)「お楽しみ会を充実させよう」(5年生 総合的な学習の時間) - 14:55~15:00
- 開会挨拶
上野原市立秋山小学校校長 長谷川和典 - 15:00~15:15
- 研究発表
「わかる授業の創造」
発表者:秋山小学校教諭 石井有紀子 - 15:20~16:25
- 講演「子どもたちの生きる力と金銭教育」
講師:あんびるえつこ氏 - 16:25~16:30
- 閉会挨拶
山梨県金融広報委員会事務局長 大森忠明