金融教育公開授業
2022年度 金融教育公開授業 金融・金銭教育協議会
千葉県金融広報委員会
市川市立大野小学校
金融広報中央委員会
千葉/市川市の実施報告
「金融教育公開授業 in 千葉(大野小学校)」(1月21日開催)
市川市立大野小学校では、「自学・自律・共育」を学校教育目標に掲げ、学校・家庭・地域が連携して、すべての子どもが幸せを実感できる学校に向けて教育活動に取り組んでいます。
令和3年度から千葉県金融広報委員会より金銭教育研究校の委嘱を受け、金融教育に取り組んできました。研究目標として、家庭や社会生活における消費・経済・貯蓄・労働など金融に関する活動や環境とお金の関係に関心をもつことやお金の役割や働くことの意味について基礎的な知識を身に付けること、そして消費生活やキャリア教育を通じて、自己の将来設計のあり方を将来にわたって考えようとする意欲と能力と態度の基礎を養うこと、を掲げ実践してきました。
1月21日(土)に金融教育公開授業を開催し、6学級を対象にした公開授業と、多摩大学客員教授河合敦氏による講演会を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「かぞくはなかよし~かぞくみんなにこにこだいさくせん~」
本単元では、家庭での過ごし方を振り返り、家事のお手伝いをすることで、家族の一員として自覚を持たせることをねらいとしました。公開授業では、家族みんなにこにこ大作戦として児童がこれまで取り組んできたお手伝いが成功した理由を考えてみました。
まず、児童は、お手伝いをしているときの気持ち、お手伝いをし終わったときの気持ち、自分がお手伝いをしているときの家族の様子、の3つの視点から振り返りました。児童からは、お手伝いをしているときは、家族の役にたててうれしい気持ちになる反面、「めんどうくさい」「やってみると大変」など後ろ向きの気持ちになっていましたが、お手伝いが終わった後は「掃除は疲れたけれど、きれいになってうれしかった」「家族が喜んでくれたのでやってよかった」など手伝いの成果や家族の反応を素直に喜ぶ声も聞かれました。児童は、こうした振り返りにより、お手伝いしている時とその後とで気持ちが前向きに変化していることや、家族が喜んでくれたことに気付きました。本授業を通して、児童の「これからも自分や家族のために家事のお手伝いをもっとがんばりたい」という気持ちを高めることができました。
(2)「みんなのためにがんばろう」
公開授業では、「はたらく」ということについて、身近な係活動や当番活動を通して考えてみました。はじめに、児童に「アリとキリギリス」の物語をペープサート(紙の人形劇)で見せて、アリがキリギリスに遊びに誘われたときのアリの気持ちを考えることを通して、働くことについて様々な側面から考えてみました。児童からは、「働くばかりじゃつまらない」「アリはいっぱい働いたから働かなくてもよい」という意見が聞かれた一方、「これまでのがんばりが無駄になる」「働かないと冬までの食べ物が足りなくなる」「冬になると働けなくなる」「家族や仲間のために働かなければいけない」といった意見も出されました。
つぎに、児童にとっての「はたらく」活動である係活動や当番活動への取り組みについて考えました。児童からは「みんなのためにがんばりたい」「後から困らないようにがんばって働きたい」という意見が出ました。最後に、中学年にむけて、クラスの友達や下学年の友達のためにもさらに一生懸命取り組んでいこうとクラス全員でまとめました。
(3)「鍋作りゲームにチャレンジしよう!」
授業では、グループに分かれて、鍋の材料を購入する際のお金の使い方について考えました。限られた予算の中での買い物に、児童からは「買いたいものすべてを買えずあきらめたものがあった」「何を買っていいか困った」など、決められた予算内で買い物をすることの難しさを訴える声が聞かれました。
つぎに、グループ内で上手な買い物について話し合い、思考ツール(例えばベン図やチャート図など)を使いそれぞれ考えをまとめて発表しました。児童からは「自分で考えた方法もいいけれど、友達のやり方もいいと思った」「予算内で全部を買うことができないから、お互いに譲り合わないといけない」「食べる人のことを考えて買い物をしたらいいのでは」など様々な意見が出されました。
(4)「働くこと~会社活動を充実させよう~」
本学年では、クラス内の係・当番活動を会社活動に、児童を社員にそれぞれ見立てて取り組んできました。この会社活動に関する取り組みついては、多くの児童が、(自分の関わり方は)今のままでよいと考えていました。そこで、本時では、授業冒頭、先生が「来年度は高学年として学校全体のために働くので、自分たちの会社活動に力を入れることができるのは今年度が最後になる」ことを説明したうえで、どうしたら会社活動において、それぞれの児童がより積極的に関わることができるかを話し合いました。
話し合いの結果、児童が会社活動を自己評価できるよう、取り組む内容と評価を記載できるシートや、同じ会社のメンバーと情報共有がしやすくなるよう掲載フォルダを作成することにしました。最後は、児童から「会社活動をこれまで以上に頑張る」と、前向きな言葉が聞かれるなど、会社活動に対する姿勢に変化が見られました。
(5)「工夫して買い物をする計画を立てよう」
授業では、宿泊学習(ホワイトスクール)で購入するお土産について、おこづかいと旅行支援クーポンを合わせた金額の範囲内で買い物の計画を立てました。
児童は、「安いものをたくさん買いたい」「2千円ちょうどになるように買う」など、一人ひとりの考えためあてに沿って計画を立てました。なかには、「お礼の気持ちでうちの人に買いたい」、「相手が喜んでくれるようなお土産を選びたい」など、お土産を渡す相手のことを思う意見もみられました。
今回の授業では、買い物計画では、一人ひとりが目的や自分の思いなどに沿ったお金の使い方を考え、限られた予算で工夫することが大切だということを学ぶことができました。
(6)「なりたい自分に~働くってどんなこと~」
これまでの総合的な学習の時間で、「どうして人は働くのか」という学習のテーマを設定し、様々な職業の保護者にインタビューを行い、児童は、働くことと稼ぐことの関係性などについて考えを深めました。
それを踏まえ、公開授業では、児童へなりたい自分の姿に向かって、努力をしているかどうかをたずねるアンケート調査の結果から、「なりたい自分になるために、今、何をしなければならないか」をグループ内で話し合いました。
児童たちは、「小説家になりたいのなら、新聞を読んで今の流行を知った方が良い」「カウンセラーになりたいなら、クラスの友達とたくさん話してコミュニケーション力を高めた方が良い」など、課題解決に向けてお互いにアドバイスをし合いました。
2.基調提案
千葉県金融広報委員会より金銭教育研究校の委嘱を受け、研究主題を「小学校における金融教育の在り方~発達段階に応じた金融教育の実践~」とし、金融教育の研究に取り組んできました。
基調提案では、(1)なぜ小学校で金融教育が必要か、(2)消費者教育と金融教育の違い、(3)本校の研究について、(4)成果と課題、(5)今後の小学校金融教育の方向性、の5点について提案をしました。小学校の金融教育の在り方として、ものを大切にする、約束をする、がまんをするといった内的な側面だけでなく、発達段階に応じて、貯蓄や投資、様々な決済方法や消費者トラブルの実情を知るといった、金融教育の外的な側面を学習していく必要性があるという方向性が示されました。
3.プログラム
- 9:15~12:05
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公開授業
「かぞくはなかよし~かぞくみんなにこにこだいさくせん~」(1年生 生活科)
「みんなのためにがんばろう」(2年生 道徳科)
「鍋作りゲームにチャレンジしよう!」(3年生 特別活動)
「働くこと~会社活動を充実させよう~」(4年生 特別活動)
「工夫して買い物をする計画を立てよう」(5年生 家庭科)
「なりたい自分に~働くってどんなこと~」(6年生 特別活動)
- 13:30~13:35
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開会挨拶
市川市立大野小学校 校長 清水秀峰 - 13:35~13:55
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基調提案
「小学校における金融教育の在り方」
発表者:市川市立大野小学校 研究主任 割田陽二郎 - 13:55~14:55
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講演「お札に登場した偉人たち」
講師:河合敦氏 - 14:55~15:00
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閉会挨拶
千葉県金融広報委員会事務局長 菅谷直人