金融教育公開授業
2022年度 金融教育公開授業 金融・金銭教育協議会
和歌山県金融広報委員会
和歌山県立和歌山さくら支援学校
金融広報中央委員会
和歌山/和歌山市の実施報告
「実践発表会in和歌山(和歌山さくら支援学校)」(2月1日開催)
和歌山県立和歌山さくら支援学校は和歌山市の西側に位置した肢体不自由、知的障害部門併置の特別支援学校です。2022年度に開校10周年を迎えました。また和歌山北高等学校西校舎と隣接していることから生徒の交流等を行っています。
学校教育目標は『キラキラと輝く人になろう』とし、地域に根ざした学校として保護者や地域との連携により、互いに支え合い認め合う環境を目指しています。また様々な教育活動を通して、各々の持てる力や個性を伸ばし、社会で主体的に生き、切り拓こうとする意欲と態度を育てています。
2月1日(水)に金銭教育研究校として2年間取り組んだ実践を発表し、その後、鹿野佐代子氏による障害のある生徒が将来自立した生活を送るため身に付けておくとよい金銭管理能力について講演会を行いました。
新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、予定していた授業の公開は中止しましたが、実践発表をオンライン開催に切り替え特別支援学校ならではの金銭教育の取り組みについて他校に向けて配信しましたので紹介します。
▼ 参加者内訳:
1.実践発表
(1)小学部
生活科において、児童が実際に「自動販売機の利用」「買い物」「金銭の取り扱い」を行うことを通して、商品や金銭といった具体物を見る、触れる、数えるなど体験的な活動を取り入れた金銭教育に取り組みました。
低学年は、自動販売機を利用して一人で買い物できるようになることを目的としました。教師と一緒に自動販売機にお金を入れ、商品を選んで品物を取り出すことから始め、徐々に自分一人で自動販売機を利用できるようになりました。指導にあたっては、算数科の内容と関連を図りお金を使った計算の学習に取り組んだほか、家庭と連携し実際に金銭を使うことで、金銭の価値や金銭を取り扱う意味にも触れさせました。
高学年は、お店で「幾らですか」「〇個下さい」など買い物に必要な言葉を使い、レジで代金を支払い、おつりのやりとりをすることを目的とした買い物学習に取り組みました。また、修学旅行前には、模擬店で買い物の練習をし、無駄遣いをしないことや事前に買うものを考えておくなど金銭管理の大切さについても学びました。
最後に、発表者から、小学部での金銭教育のまとめとして、買い物は児童にとって普段の生活で体験が少なく想像以上に緊張感を伴うものであることから、お店の方にも協力いただき親しみやすい態度で接してもらうことで心理的抵抗を減らし、児童に成功体験をさせることに配慮したこと、生活科だけでなく算数科、自立活動において買い物をするときのお店の方とのコミュニケーションの取り方など、関連する授業を低学年から段階的に積み重ねていくことが大事、とのコメントがありました。
(2)中学部
職業・家庭科において、身近な消費生活との関わりを意識した金銭教育に取り組みました。
1年生は、生徒の障害の程度に応じてグループ分けをし、「買い物の仕方が分かり、欲しいものを選択して購入できる」「計画的に金銭を使うことの大切さが分かる」ようになることを目的に金銭教育に取り組みました。実際の広告を用い、予算を設定して買い物シミュレーションを行うことで、必要なものと欲しいものを区別できるようになることに取り組みました。
2年生についても、生徒の障害の程度に応じてグループ分けをし、「将来の生活のイメージを持つ」「お金の価値を知る」「働くこととお金の関係を知る」ことができるようになることを目的に金銭教育に取り組みました。実生活に結びついた金銭感覚が身につくように、身の回りの物の値段を調べたり、勤労や給料について考え、計画的にお金を使うことの大切さを学びました。
3年生は、「買い物の一連の流れを理解することができる」「自分の欲しいものを店員や近くの方に伝えることができる」「欲しい商品を積極的に買おうとすることができる」ようになることを目的に金銭教育に取り組みました。お金の価値や流れをより身近な形でかつ自己有用感を育めるよう、お使いの中で実際に買い物してもらいました。
最後に発表者から、今後も生徒が日常生活でお金に触れる機会を作るなど各家庭でも協力を得つつ、中学部段階で確実に身に付けておきたい金融・金銭の知識について教師間で共通理解を図りたいとのコメントがありました。
(3)高等部
家庭科において、ライフプランニング、契約、電子マネー・クレジットカードなどの様々な支払方法について学びました。
1年生は、自分の人生設計を考えるうえで必要な家計管理やライフプランニングを学習しました。お金と生活を関連付け、労働の対価としての給料、支出・収入・貯蓄、年代や人それぞれかかるお金に違いがあることを学びました。発表者からは、今後も、生徒が身近に金融を感じられ実体験型の学習を行っていきたいとのコメントがありました。
2年生は、生徒達が“将来、損をしないために”を念頭においた生活設計・家計管理について学習しました。3つの疑似通販サイトを設定し、生徒たちが価格、所在地、支払方法、送料など10項目を調べ、どこの通販サイトが安全な買い物ができるかを話し合い発表しました。また、金融広報アドバイザーから購入前の注意点についても学びました。最後に発表者は、大半の生徒は卒業後就職するため、給料の使い方や一人暮らしに必要な生活費が幾らかかるかを学ぶだけでなく、障害者年金や社会福祉制度などについても今後の学習に取り入れたいと結びました。
3年生は、これまで1・2年生時に金融広報アドバイザーから消費生活トラブルの実例や多重債務問題、ライフプランの必要性など幅広い内容の授業を受けてきました。3年時では、成年年齢の18歳への引き下げで契約が一人でできるようになることを踏まえ、契約や買い物、支払方法に的を絞って金銭教育に取り組みました。一例として、消費者庁の消費者教育教材を活用しながら電車に乗る際に現金、プリペイドカード、スマホ決済等、自分たちが実際に何を使っているのか生徒同士で話し合い、それぞれのメリット・デメリットについて学習したことが紹介されました。授業の振り返りとして、発表者より、自身の経験からクレジットカードについて学習するときは、便利である一方で危険性が伴っていることを生徒にしっかり理解させることが大事であるとコメントがありました。
(4)さくらタイム
小学部から中学部への学部間の緩やかな移行に向け、小学部5・6年生と中学部1・2年生を対象に一部の教科を同じ時間帯に設定し、教育課程の連続性を持たせるための授業を行っています(これを「さくらタイム」と呼んでいます)。前期となる小学部5・6年生は学校の玄関前に設置している自動販売機で品物を購入する、後期となる中学部1・2年生は地域のスーパーマーケットまで行き、家で頼まれた商品を予算の金額内で選択し購入する内容の買い物学習を行いました。こうした金銭教育の実践では「一人で」行うことに重点をおいて取り組みました。
この学習では、3桁の数を理解することや自動販売機で購入する手順をシミュレーション体験する教材として、当校教員がプログラミングでアプリを作成し学習に取り入れました。また、学校から出て生徒が1人で買い物をする学習においては、周囲の人々からの協力や配慮を得るために、特別支援学校の生徒であることが遠くからでも分かるように校章入りベストを作成して着用させました。
最後に発表者は、保護者から頼まれた商品を買ってくるお使いをすることで家族の一員としての役割を果たすこと、一人でできたことで自己有用感を高め、主体的に取り組む態度を養う教育を引き続き行っていきたいと結びました。
2.プログラム
- 14:00~14:05
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開会挨拶
和歌山県金融広報委員会事務局長 嶋岡真志 - 14:05~14:50
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実践発表
(1)学校概要・実践概要 教頭 向山千嘉子
(2)小学部の実践 小学部主事 芝大輔
(3)中学部の実践 中学部主事 南成浩
(4)高等部の実践 高等部教員 式本康子 池田枝里子 山口徹
(5)さくらタイムの実践 校長 大城秀夫 - 15:00~16:30
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講演「未来に役立つ!お金トレーニング実践法~持って使うは大人への第一歩~」
講師:鹿野佐代子氏 - 16:30~16:35
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閉会挨拶
和歌山県立和歌山さくら支援学校校長 大城秀夫