金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
暮らしに役立つ講演会
講師 : ダニエル・カール 氏 (山形弁研究家/タレント)
「ダニエルが語るお金の魅力」
父親に教えられ、わが子に伝える「お金」の教育
長年日本に住んでいて、アメリカ人と日本人の金銭感覚の違いについて感じたことを話します。
17歳の誕生日の3日前、最初に日本へ来た時にびっくりしたことがありました。子どもが親に「金ちょうだい」って手を出すだけでお金がもらえたのです。不思議な国だな、と思いましたね。オラの親父が生まれたのは、世界恐慌で株が暴落した4カ月後の1930年2月。おじいちゃんは失業し、家族を車に乗せてアメリカ大陸を横断しながら季節労働をしていました。苦労したから親父はドけち。そんな親父に育てられ、オラも大変でした。
親父の口癖の一つが、「金はもらうものではねえ。汗をかいても、血を流しても稼ぐもの」。オラが6歳の時、車のおもちゃが欲しいと言ったら「家の中の仕事(英語でChore)をやってもらう」と言われました。1時間10セントの時給制で、オラが欲しかったおもちゃは1ドル。10時間働いて1ドルたまり、走って買いに行ったら、おもちゃ屋さんは「消費税込み1ドル5セント」だって。泣きながら帰ると、親父は「税金はいやだと思うけど、みんなが払わなければならないんだよ。税金でみんなが使うものを造るんだ」と説明してくれました。
その5セントのために更に30分働きました。でも、5セントをポケットに入れた時に思いました。こんなに苦労してきて、あの車のおもちゃはオラの労働に見合った価値があるのかなって。結局、買いませんでした。衝動買いをしなかったのです。7歳で初めて銀行口座を開き、少しずつ貯める楽しみを覚えました。
親父は厳しい一方で、いろいろ教えてくれました。賃金交渉、契約書、人のために働くとは……。そのままオラの息子に教えました。日本には、お金の話がタブーになっているところが残っているみたいです。日本の学校はいいところがたくさんあるんだけど、社会人になるために役に立つ日常的な知識という面からは、ちょっとだけ穴が開いているように思います。でも最近、小学校や中学校で金融について教えてくれるようになったから、とっても心強くなりました。
結論は簡単です。周りに若い人がいたら、体験話をしてあげて下さい。特に失敗談が大事。全部明かして話してあげて下さい。
プロフィール
米国カリフォルニア州出身。高校・大学時代に留学生として来日。卒業後に文部省(現文部科学省)英語指導主事助手として山形県に赴任し、3年間、英語講師として教壇に立つ。そこでマスターした山形弁を武器に、バイタリティーあふれる行動力とユーモア豊かなサービス精神で、ドラマ、司会、コメンテーターなどで幅広く活躍中。