金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
教員向けセミナー 実践報告<1>
講師 : 中川 克巳 氏(三重県津市立一身田中学校 教諭)
「中学校におけるキャリア教育の実践発表」
地域に密着した会社づくりで、考える力、企画・行動力を養成
本校は、キャリア教育を中心に、4年前から生徒たちの生きる力を育む取り組みを進めています。具体的には、将来自立した社会人・職業人として主体的に歩んでいけるようにするために、能力や知識、態度の基礎を育成することを目指して、起業教育を取り入れました。特にコミュニケーション力や情報収集力、分析力、企画力などの習得に力点をおいています。
起業教育「会社をつくろう」は、1年生6学級で取り組みました。1学級を4グループに分け、計24社設立。各グループ(会社)で商品を考え、市場調査、事業計画作成、宣伝や広告から販売、収支決算まで一連の活動を行います。そこでは、活気を失った商店街をどう立て直すかといった地域課題を必ず踏まえることとし、また、1人千円の資本金を実際に渡して、可能な限りのリアリティーを追求しました。
会社設立に当たっては、事前に分析力トレーニングや情報収集トレーニングを行いました。分析力トレーニングでは、コンビニエンスストアとスーパーマーケットの相違点を比較し、店内の商品配置にはどんな工夫がされていて、どんな法則があるのかを考えました。
会社設立の第一ステップでは、「地域社会に貢献できる会社をつくろう」というテーマのもと、会社の目的や仕事内容、自分たちの思いを託せる社名を考えました。地域の起業家を招いて授業をしてもらったり、市場調査をして立てた事業計画を専門家に審査してもらったりもしました。こうして、地場産品である伊勢木綿の復興を願って作った伊勢木綿エコバッグや、地元の海岸の貝を使ったシェルストラップなどのオリジナル商品を実際に販売するまでに至りました。
この教育の成果として、地域とのコミュニケーションが活発になったこと、生徒が地域の一員であることを自覚するようになったこと、自ら分析し仮説を立てて物事を進めることの重要性がわかったこと、学校と社会のつながりを実感できるようになったこと、仕事は単に収入を得るために行うのではなく、社会での役割や社会への貢献が大事だとわかったこと、などを挙げることができると思っています。
教員向けセミナー 実践報告<2>
講師 : 小関 禮子 氏(帝京大学教職大学院 専任講師)
「移動教室でのおみやげ購入を通じた実践的な金融教育の展開」
その後に活かされることが多い実際の買い物体験
前任の小学校で実践した「移動教室でのおみやげ購入」というお金の使い方の学習についてお話しします。
子どもたちは豊富な物に囲まれ、自分が考える必要がないほどの情報が押し寄せる中にいます。「してもらい」「させられる」2つの受身の生活で、主体性が乏しくなっています。また、人からどう見られているのか、思われているのか、をとても気にしています。人との関わりの中で、物やお金との関わりも考えなくてはいけない、ということです。多くの物や情報の中から何をどう選ぶのか、お金をどのように使うのかには、その人の価値観が表われます。逆に、日常の生活の仕方が生活観をかたち作る、とも言えます。自主的・主体的に判断し、行動する能力の育成を目指すことが、小学校での金銭・金融教育のあるべき姿ではないでしょうか。
学校には普段、子どもたちはお金を持って来ません。子どもたちが、共通の場で共通の金額で買い物をして金銭の活かし方を改めて考えるために、移動教室におけるおみやげの購入で、お金の使い方を学習することになりました。
まず財布を自作させます。おみやげもの屋さんからパンフレットをもらったり、キーホルダーなど売り場の写真を撮ってきたりして、教室に模擬おみやげもの屋さんを作りました。なぜ、誰に、何をどれだけ、買うのかなどをワークシートに記入させ、買い物の計画を立てます。教師は保護者から、封筒に3千円を入れて預かります。事前学習をもとに、子どもたちは移動教室で実際に買い物をします。それを授業で振り返り、「家族にはバラ売りで安いのを買うけど、遠くのいとこに送るのは箱入りのものがいいと思った」(日光のせんべいを買った子)など、互いの経験を話し合います。学び合いを通して、買い物の仕方が整理されていきます。
子どもたちは、目的に合わせた物の買い方をするようになり、丈夫なもの、安全なものを選び、日付や表示をきちんと見て買うなど、体験的にしっかり学ぶことができました。その後の買い物に反映できることが大変多かったと思います。