金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2011
暮らしに役立つ講演会
講師 : 和泉 昭子 氏(CFP®/生活経済ジャーナリスト)
老後を安心して暮らすために
現行の公的年金制度は、20歳以上の国民全員が加入していて基礎年金とも言われる国民年金、会社員が加入している厚生年金、公務員が加入している共済年金によって構成されています。会社員にとっては、厚生年金は基礎年金に加えて支給されるため二階建て部分と呼ばれますが、この部分の支給開始年齢は、現在50歳以下の人では65歳です。つまり、現在50歳以下の人は、現在勤務している会社の定年が60歳である場合、定年まで働き続けたとしても、その後、65歳まで収入を得られるだけの力をつけておかなければ、60歳から65歳までの間、一切収入がなくなってしまいます。
さらに、年金財政が悪化しているため、年金の受給開始年齢が68歳とか70歳になるかもしれないというニュースが流れ、若い方も含めて、多くの方が心配されていると思います。少子高齢化が進み、年金受給者が増える一方、年金保険料を払い込んでこの制度を支える若い働き手が減っています。このため、年金の支給開始年齢を遅らせるとか、専業主婦にも年金保険料を負担してもらうとか、消費税率を上げるとかいった話が出てきています。これらの話について、心配ばかりしていても仕方がありません。ただ、将来負担が増えて、もらう分が減るという方向性だけは確かですから、一日でも早く備えを始めた方が安心して過ごすことができると思います。
老後の生活設計をするときは、現在の生活費のだいたい7割くらいで生活するというイメージを持つようお勧めしています。最低限必要な日常生活費は22万3千円、ゆとりある老後の生活のためには37万円位欲しいというデータもあります。
どのようなセカンドライフを過ごしたいのか、プランを立てることが大切です。そしてねんきん定期便等を活用して、たとえば60歳まで働いた場合に、老後にいくら年金をもらえるのか確認しましょう。年齢を重ねても健康であるのが理想ですが、将来病気になったりした場合に備え、健康保険の高額療養費、介護保険の高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算制度、成年後見などについて知っておくことが大切です。制度の詳細までは必要ありません。こんな制度があったということを覚えておいてください。
認知症の方をはじめ高齢者を狙った悪質商法も増えていますので気をつけてください。未公開株や外国為替証拠金取引、利殖商法などが代表的です。世界経済が連動する中で、少なくとも5年以内に使う予定のお金は投資に回さないでください。何か良いことがあるときには何かと引き換えであること、すなわち、トレードオフだということを覚えておきましょう。金融商品は、期間が長いもの、信用力が低いもの、インターネット取引を利用したものは、相対的に金利が高くなります。これは、お金の流動性や安全性、手間などと引き換えに、高めの金利を受け取るわけです。どんなに安定的で優良だと言われる金融資産でも一つのものに集中することは良くないこと、過去の成功体験に引きずられるのは良くないと言うことも押さえておきましょう。
私たちは何歳まで生きるか分かりません。また、ごく高齢になると、さほどたくさんお金は使わないようにも思います。ですから、老後に最低限必要な金額を確保したら、あまり心配しすぎないでお金を使うことも大切かもしれません。ただし、だまされたり、つまずいたりしないように、どうかくれぐれも気をつけてください。
プロフィール
出版社、放送局勤務を経てフリーのキャスターに転身。
平成7年にCFP® 取得。
以来、メディアへの出演や講演、個人相談などを通じて、マネー&キャリアに関する情報を発信中。