金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2011
金融教育セミナー 鹿児島会場
日本損害保険協会
生活サービス部 企画グループリーダー
小原 喜昭 氏
いまこそ知りたい! 損害保険の知識(地震保険を含めて)
本日は保険の原理と地震保険を中心にお話しします。阪神淡路大震災、東日本大震災ともに被災地にまいりました。阪神淡路大震災では、建物が倒壊する、ビルの真ん中がぺしゃんこになるなど、大型地震の特徴的な被害が出ていました。東日本大震災の場合は、まるで戦場のように建物が残っていないとか、町全体が水没しているなど、見たこともない被害状況でした。これほどの被害には、自治体などの再建努力に加え、住民の自助努力も欠かせないと思いました。損害保険には大きな災害時に機能する保険もあり、地震保険は地震の災害のほか、噴火による災害も対象にしています。万一、桜島が噴火して甚大な被害が出て家が倒壊するといった場合にも対処できるのが地震保険です。
「貯蓄は三角、保険は四角」と言われます。貯蓄は少しずつ増えていく(三角)、保険は最初から補償が一定(四角)、との意味です。貯蓄を目的額まで貯めるには時間がかかりますから、途中で事故や災害があった場合、対処できる金額が貯まっているとは限りません。最初から対処できる方法として考えられたのが保険です。保険は、多数の人がいて初めて運営できます。貯蓄は事故や災害の損害に一人で対処する方法ですが、保険は集団で賄う方法です。相互扶助の精神が根底にあります。
保険は、「大数の法則」に基づいています。“一見偶然と思われる事象も、大量のデータを集めると、一定の法則性が見られる”、というものです。損害保険はこの法則を利用して保険料を算出しています。例えば、ある地区で1,000万円の家が1000軒あったとして、毎年1,000軒に2軒の割合で火災が発生するという法則性が分かっているならば、損害額である2,000万円を賄うためには一軒あたり2万円ずつ負担すればよいことになります。
日本の国土は狭く、その約10%に人口の半分が集中しています。世界で起きたマグニチュード6以上の地震の約20%は日本で起きています。もともと台風の通り道にあり、集中豪雨も増えてきています。このため、自然災害によって甚大な被害が発生します。
地震保険は、地震・噴火・津波による損害を補償します。地震で家が倒壊したり、地震によって火災が発生した場合などが対象になります。東日本大震災のように津波で家が流された場合も対象です。さらに、鹿児島では特に重要ですが、桜島の噴火で家屋が使用できなくなった場合も対象です。
地震保険は、1964年の新潟地震の後、66年に「地震保険に関する法律」が制定されてスタートしました。その目的は「地震による被災者の生活の安定に寄与すること」です。公共性の高い保険で、政府と損害保険会社が共同で運営し、保険金支払などは政府が援助しています。なお、地震による火災は「火災保険」では補償されませんので、これに対応するためには地震保険に入る必要があります。地震保険には、保険料の所得控除(所得税、住民税)という税制上の優遇措置もあります。さらに、免震・耐震性能に応じた割引制度もあります。
地震保険は、火災保険とセットで加入するしくみです。地震発生の恐怖感が強い地域以外の人も加入する体制を整えることで、危険に備えるための負担を均す効果が期待されています。契約金額は火災保険の契約金額の30%~50%です。これは「生活の安定に寄与すること」を目的としており、家屋の再建を直接の目的とするものではないからです。保険料は所在地(都道府県)と建物構造で異なります。鹿児島県は幸い一番安い区分に属し、例えば木造の新築住宅では東京都の三分の一弱です。「全損」で契約金額の100%、「半損」で50%、「一部損」で5%を支払います。このように3区分にしているのは、迅速に保険金をお支払いするためです。
最後に、地震保険の世帯加入率は、全国が23.7%、鹿児島は20.9%です。火災保険に地震保険を付帯した比率でみると、全国の48.1%に比べ鹿児島は63.7%と高く、宮城県(68.7%)、愛知県(64.6%)に次ぐ全国3番目の高さです。
日本損害保険協会とは
1946年に設立。国内の損害保険会社25社(2011年6月1日現在)を会員とし、わが国における損害保険業の健全な発達及び信頼性の維持を図ることを目的としています。