金融教育公開授業
平成18年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
金融広報中央委員会
山梨県金融広報委員会
山梨の実施報告
「金融教育公開授業 in 山梨(一宮北小学校)」(10月18日開催)
笛吹市立一宮北小学校は、山梨県の特産物であるブドウ畑に囲まれている小学校です。同校は、平成17年度から、金銭教育研究校として、学校の金銭教育と家庭教育との連携を図るかたちで、具体的な取り組みを行ってきており、各学年で実施してきた授業の発表を行いました。
授業は、児童の保護者、地域の方、県内の小学校教員、教育委員会関係者など、115名が参観し、講演会には、92名が参加しました。また、プレスの取材も行われました。
金融教育公開授業
1年生 『まほうのことば』をひろめよう(学級活動)
あいさつや、言われて嬉しくなる「ほかほかことば」の意識を高める授業として、グループに別れて、自分が感謝した場面を紙芝居や寸劇などの形式で発表しました。「運動会で転んだ時、上級生が『大丈夫?』と声をかけてくれ、保健室に一緒に行ってくれて、うれしかった」などの発表があり、最後に全員で「ありがとう」と実感を込めて言いました。
2年生 一食248円の給食から考えてみよう(学級活動)
冒頭で、世界では飢餓で死んでいく子どもがたくさんいることの紹介があった後、一人一食当たりの給食費はいくらか、そのうち何円分が食べられずに残されているか、それはクラス全体で1週間に何食分になるか、といった問い掛けについてみんなで考え、自分の給食の食べ方について振り返りました。それぞれの問いの正解発表に、子ども達は「思ったよりずっと安い」、「こんなに残しているんだ」と驚きながら、「食べられるのに食べないなんて、もったいない」ことを実感していました。
3年生 ぶどうづくりについて調べよう(総合的な学習の時間)
地元の特産品であるぶどうを題材として、グループ毎に、ぶどうの種類やブドウ栽培の1年間の仕事などを発表しました。ぶどうを作るまでにどうしてこんなに多くの作業があるのかとの問い掛けに、これまでの学習活動での経験を活かして、「ちゃんと剪定をしないと出来が悪くなるから」などの的を得た意見が聞かれました。そして、ぶどう栽培にも携わっておられる前校長先生がゲストティーチャーとして招かれ、「良いぶどうが取れ、高く売れた時が一番うれしい」との体験談に子ども達は聞き入っていました。
4年生 エコ・キッズ 環境チャレンジ(総合的な学習の時間)
「資源を大切にする心」をめざす授業として、グループに分かれて、ゴミ分別の徹底、廃油石けん作り、EM菌の活用などを実際に行い、実践結果の効果をポスターセッションによって発表しました。寸劇やペープサートを用いてグループごとに分かりやすく工夫をこらし、廃油石けんやEM菌は家庭でも使ってほしいと見学者に配りました。
5年生 『もったいない』を生活に活かそう(学級活動)
「ものを大切に」できる事例について、一人一人がテーマを見つけ、家庭において家族と実践したことをレポートにまとめ、発表し、取り組みについて意見交換が行われました。「リサイクルできる紙はリサイクルする」、「マイバッグでお買い物」、「節約しようトイレットペーパー」などの発表に対して、「自分もやってみようと思った」、「グラフなどでわかりやすくまとめられていた」といった意見が発表されました。
6年生 中学に入学する費用っていくらかかるの?(学級活動)
中学生になると、同地区では自転車通学のため自転車およびヘルメットが必要となるほか、制服や通学用カバンなど準備しなければならないものがあります。児童自身で調べた費用総額が、男子で約11万円、女子で約12万円であることに、驚きの声が挙がります。保護者のアンケートから、お下がりの活用や小学校入学時からの積立貯金などの工夫が紹介され、担任教諭からの「親のこのような頑張りはわが子がかわいいからです」との言葉に、子どもたちは親心を強く感じたようでした。
講演会
最初に、稲木校長が、同校では金銭教育を通して、「よく考えて行動し、ものを大切にする子どもの育成」をテーマに活動してきており、ここでいう「もの」とは、1)物(公共物・私有物)、2)環境(資源)、3)金銭、4)勤労、5)人・命、の5つで捉えていること、子ども達の経済生活は、その多くを家庭で営んでいるため、家庭での取り組み、すなわち「もったいない」の考え方が重要である旨、紹介がありました。
講演会は、「生きる力を育むお金教育」と題して、陣内恭子氏が講演しました。
陣内氏は、子どもの金銭感覚を育てるのは家庭であること、ものを大切に扱うには、物という資源も命も有限であることを認識しておくことが必要であると述べました。お金を上手に使いこなすことを学ぶ上では、こづかいの仕組みが有効であり、ご自身の体験を踏まえて、お金に興味を示し始める小学校の低学年から行うことが可能であること、こづかいを与えたら信用して使い道に親の価値観を押し付けてはいけないことを話されました。こづかい帳を活用するとともに、子どもの性格をよく観察して、その子に合ったこづかい制を採用することが大事であること、例えば、もらったこづかいをすぐに使ってしまう子と全然使わずに溜め込んでいく子とでは、対応が異なることを紹介しました。
また、労働の価値を教えるには、意識的に手伝いをさせることも重要となっていること、仕事の多様性を教えるという意味でゲストティーチャーによる指導が行われていることは、地域社会において子どもが育成されているという意味ですばらしいと述べました。
社会のシステムが変化したため、これからの社会を担う子どもたちに必要なのは、自分で選択させることであり、自らで選択することが判断する能力を育むこと、失敗は子どものうちだからこそできること、という話には多くの保護者が頷きます。
金銭教育は幼児期からも始めることができ、絵本が有効な手段であるとして、実際の絵本を紹介されました。
最後に、白澤PTA会長が「子どもに自ら選択させることの重要性」に気付かされたと述べられたほか、「子どもと一緒に今一度金銭感覚を再確認することが大事」と締めくくりました。