金融教育公開授業
平成21年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
福岡県金融広報委員会
豊前市立横武小学校
金融広報中央委員会
福岡/豊前市の実施報告
「金融教育公開授業 in 福岡(豊前)(横武小学校)」(12月4日開催)
豊前市立横武小学校は、福岡県金融広報委員会より金融教育研究校(21-22年度)の委嘱を受け、「豊かな心を持ち、進んで考え実行する心豊かな子どもの育成」を教育目標に学校全体で金融教育に取組んでいます。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1) 「ことばっておもしろいな もののなまえ」(1年生・国語)
「もののなまえ」と「おみせやさんごっこをしよう」の二教材によって物の名前の関係に興味を持たせ、上位語・下位語について理解を深めさせる学習です。ひらがなやカタカナを使ってお店で売る品物の名前を書いたり、ちらしを作ったりする活動をしました。また話す・聞く活動では、「お店屋さんごっこ」で買いたい品物や値段についてたずねたり、お買い得な品物を勧めたりしながら、場の状況に応じた表現の工夫や丁寧な対応について学びました。また、この活動では、お店屋さんとお客さんが相互にお金と品物を交換するという売買の状況を経験させ、お金の大切さにも気付かせることができました。
(2) 「つたえたいね!よこたけのたから」(2年生・生活)
校区で働く身近な人に焦点をあて、興味を持った仕事についてグループごとに調査したことを発表しました。発表会では、働く人々の仕事への誇り、労働の喜び、誠実な仕事の仕方など気づいたことを劇・紙芝居・クイズなどで紹介しました。
また、働く人からのメッセージによって、働くことはお金を得るためだけでなく、自分の能力を生かすこと・自分の生き甲斐を得ることにつながることを学び、仕事をしている方達に感謝の気持ちを持ちました。
(3) 「上手なお金の使い方」(3年生・総合的な学習の時間)
何気なくもらっているお小遣いは、保護者が仕事をして得た収入の中から与えてくれたものであることに気付かせ、健全な金銭感覚を養うとともによりよい金銭の使い方について体験しながら考える学習をしました。
「おこづかいゲーム」は2回設定し、自分のお金の使い方の課題を発見するゲーム、これを改善するゲームとしました。おこづかいを使う場面やその理由を考えたり、おこづかい帳に記録したりしながら、何にいくら使うかを決定する模擬体験をしました。この活動によって購入する物の適正な価格や上手なお金の使い方を見いだすことができました。
(4) 「MOTTAINAIを考えよう」(4年生・総合的な学習の時間)
社会科学習の発展として、環境に配慮した消費生活の大切さを考える学習をしました。公開授業では、様々な写真で環境破壊の状況を知らせ、これは人としての生き方に関わる問題であることを捉えさせました。さらに、日常の生活・企業や商店の努力・今と昔の生活の比較の3点から暮らしの中の無駄を調べるとともに、「もったいない」の精神を基盤とした活動の広がりにも気づきました。
さらに、これらの活動と環境保護活動家のワンガリ・マータイさんが提唱する「MOTTAINAI」の取組みとの共通点を見いだし、学習を深めていく意欲が高まりました。
(5) 「工夫しよう!かしこい生活」(5年生・家庭)
物の有効な使い方を考えたり、無駄のない消費生活を工夫したりすることの大切さに気付かせる学習をしました。自分の身の回りの物に視点をあて、必要な物とそうでない物の整理、使いやすい状態への整頓、買い物の仕方の見直し、計画的で無駄のない買い方、等について学習しました。計画的で無駄のない買い方の学習では、教師が作った摸擬スーパーマーケットで野菜炒めの材料を買う活動をしました。子どもたちは、必要な量・価格・品質・無駄のなさ、などの観点から、並べられた野菜を比較し選び出しました。さらにその野菜を選んだ根拠について話し合い、よりよい買い物の仕方について考えを深めることができました。
(6) 「算数島の大冒険 買い物上手はだれ?」(6年生・算数)
日常的な事象を割合の見方で把握したり、割合を用いて比較したりして、割合は生活に必要な考え方であることを実感させる学習をしました。円とドルの支払い、割引額と割引率、10%引きと10%サービス、など多様な支払い方を比較し、お金を有効に使おうとする意識を高めていく学習設定でした。公開授業では、五千円以上の買い物をしたとき千円引きにしてくれるお店Aと、10%引きにしてくれるお店Bではどちらがお得な買い方になるか、解決の方法を工夫しながら考え、購入金額で損得が入れ替わることが分かりました。この学習で身近にある様々な買い方が消費生活に影響を与えることを実感することができました。
2.研究発表
主題を「社会と関わる力を育み、よりよく生きる子どもの育成~金融教育プランの策定・実施・改善~」とし、パワーポイントを使用して授業の取り組みが発表されました。
本主題では、「お金や金融の様々なはたらきを理解し、それを通じて自分の生活や社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、心豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて主体的に行動できる態度を身に付けた子ども」を目指す子どもの姿としています。そのために身につけさせたい力(学ぶ力・かかわる力・見つめる力)を発達段階(低・中・高学年)に応じて学ばせることができるように、金融教育を3つの視点(約束や社会のきまり・働く意義や喜び・生活や集団の改善)から様々な教科に取り入れて、年間を通して計画的に実践するための独自のプログラム「金融教育プラン」を策定したと報告されました。
同プランでは、教科毎に3つの視点から必要な重点目標(<例>生活科:働く意義や喜び、道徳:約束や社会の決まり等)を決め、子どもの興味や関心を引くように題材や指導方法等を工夫し、シミュレーションや話し合い、ロールプレイ、見学等、体験型の授業を織り交ぜながら取組んでいること、今後は子ども達の到達状況、意識の変化等を見極めながらプランの改善を行っていくと説明されました。
3.講演会
公開授業後、ダニエル・カール氏による保護者向け講演会「金融教育を考える~日米の生活体験を通じて~」を行いました。
ダニエル氏は、父親に6歳の頃から「お金は稼ぐもの」と育てられ、“chore(家事、手伝い)”をして自分のお金を得ること、仕事に対して責任を持つことを学び、低賃金で10時間働いて得た大切なお金を衝動的に使うことはしなかったと、幼少時代の経験を語りました。
また、日本の学校規則は禁止事項(アルバイト・運転免許取得・男女交際)が多くあるが、アメリカでは、アルバイト経験での単位取得(社会勉強との位置付け)や全員参加の運転講習の授業(車を乗らない人も交通ルールは知っておくため)、Life and marriage(結婚と子育ての大変さを知る)など社会人となった時に必要な知識を教えてくれると説明。
日本で多くの若者が金融トラブルに巻き込まれている理由として、お金の話を学校で学ばないうえに家でもタブーとなっているため、社会人になって初めてお金について知ることを挙げ、やはり小さな頃からの金融教育が必要であると伝え、学校だけでなく、家庭でお金について思ったことや失敗したことを親が責任を持って具体的に話すべきであると話されました。参加者からは「子育てに必要な金銭感覚を学校として、家庭としてどう育むか具体例をあげて話して頂き大変有意義で面白かった」等といった感想が寄せられました。
4.プログラム
- 13:30~14:15
- 公開授業
(1)「ことばって、おもしろいな もののなまえ」(1年生・国語)
(2)「つたえたいね!よこたけのたから」(2年生・生活)
(3)「上手なお金の使い方」(3年生・総合的な学習の時間)
(4)「MOTTAINAIを考えよう」(4年生・総合的な学習の時間)
(5)「工夫しよう!かしこい生活」(5年生・家庭)
(6)「算数島の大冒険 買い物上手はだれ?」(6年生・算数) - 14:30~15:00
- 開会行事
挨拶 豊前市立横武小学校 校長 園田 恭子
福岡県金融広報委員会事務局長 山口 正俊
福岡県教育庁京築教育事務所 所長 谷 忠広
研究発表 「社会と関わる力を育み、よりよく生きる子どもの育成~金融教育プランの策定・実施・改善~」 豊前市立横武小学校 教務主任 田渕 英久 - 15:00~16:20
- 講演 「金融教育を考える~日米の生活体験を通じて~」
講師:ダニエル・カール氏 - 16:20~16:30
- 閉会行事 挨拶 豊前市教育委員会 教育長 森重 髙岑