金融教育公開授業
2019年度 金融教育公開授業
福岡県金融広報委員会
福岡県立糸島農業高等学校
金融広報中央委員会
福岡/糸島市の実施報告
「金融教育公開授業 in 福岡(糸島市)(糸島農業高等学校)」(10月30日開催)
福岡県立糸島農業高校は、創立117年目を迎えた歴史ある農業高校です。豊かな自然の中で「勤労努力 和衷協同 研究啓発」を校訓に掲げ、農業技術科、農業経済科、食品科学科、生活科学科の4学科で編成されており、農業と共に農業経済、食品科学、家庭科を専門的に学習しています。
10月30日(水)に金融教育公開授業を開催し、全生徒を対象に山田真哉氏による講演会と、1・2・3年生の各1クラスで家庭科、商業科、農業科の公開授業を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.講演会
山田真哉氏から、「キャッシュレス時代を生きる」と題する講演が行われました。キャッシュレス時代というのは、「電子化、自動化、小口化」が進んでいくというお話から始まりました。キャッシュレス時代の家計管理は、従来型の「支出家計簿」(日々の「支出」を記録しなければならず、「毎日つけないといけない」と気分が暗くなるもの)ではないそうです。キャッシュレス時代には、「支出」ではなく「残高」だけを記録する「残高家計簿」をつければよいとのことでした。貯蓄をしていくには、「収入―貯蓄=支出」という公式がお金を貯めるコツであり、天引きで貯蓄をして、残りのお金でやりくりをしていくのがよいと教えてくださいました。
講演では、「定価1000円が特価800円」と「定価700円」のどちらがお得だと思いますか、といった質問を生徒に投げかけ、挙手をして答えてもらうスタイルで進められたため、生徒も興味を持って真剣にお話を聞いていました。私たちは日頃、「値引き」や「特別」に弱く、「お得よりお得感を重視する」傾向にある、と教えていただき、自分の消費行動を振り返るきっかけになりました。
最後は、投資についてお話を聞くことができました。少額から始めることができるジュニアNISAなどは、生徒でも投資ができることがわかりました。キャッシュレス時代を生きていく私たちが、お金とどのように向き合っていったらよいかを考えるきっかけとなり、生活に役立つお話を聞くことができました。
2.公開授業
(1)自立した消費者とは?(1年生 家庭科)
「私たちの生活はさまざまな契約で成り立っていることを理解する」という授業の目標を確認し、2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられることでどのような影響が出るのかを考えることから授業が始まりました。現在は「未成年者取消権」により未成年者がある程度高額の契約をする場合は保護者の同意が必要で、同意がなければ取消をすることができますが、成人になると簡単に取消ができなくなることを学びました。また、生徒が「電車に乗る」行為も契約であることなど、私たちの生活がさまざまな契約で成り立っていることを学びました。契約と約束の違いも確認しました。契約が長期に亘る場合や双方で確認しておくことがある場合は、契約書をかわすことがあることも学びました。将来、生徒が一人暮らしをするときに経験すると思われる「賃貸住宅標準契約書」(国土交通省)を使い、契約書にどのような内容が書かれているのか、どのような点を確認しなければならないのかを、ペアになって考えました。契約をする際には、契約書をよく読む、説明をよく聞く、検討する時間をとるなどの注意点を確認しました。
(2)さまざまな代金決済の方法(2年生 商業科)
「キャッシュレス決済の現状を知る」、「様々なキャッシュレス決済の手段を知る」、「どの手段を選択するか考え、将来に活かす」という授業の目標を確認し、まず、キャッシュレス決済を紹介する動画を視聴することから授業を始めました。次に、生徒にとって身近な福岡県内で利用できる「交通系キャッシュレス決済」や「現在よく使用されている電子マネー」について、生徒の発表による説明と教師の資料に基づく説明を行いました。そのうえで、どの電子マネーを使いたいかを考えさせ、班別に協議する時間を取りました。その後キャッシュレス決済の全体像やメリット・デメリットについて確認しながら、キャッシュレス決済の国を挙げての取り組みについても学習しました。
2019年10月、消費税が10%に引き上げられたことを契機に、様々なキャッシュレス決済の取り組みが行われていること、その取り組みは「現金流通コストの減少」、「労働人口問題の解消」、「インバウンド需要の促進」など国の発展に貢献することになることを学びました。今後も様々な方策が取られることも考えられ、その方策に適切に対応し、積極的に日々の生活を送ることが大切であることを最後に確認しました。
(3)農業金融(3年生 農業科)
「農業と保険の関係性を知る」、「保険の構成要素を理解し契約内容がわかるようになる」という授業の目標を達成するため、台風19号が農業に与えた被害を例に挙げ、農業が直面するリスクを生徒に考えさせました。まず、農業には、自然災害などにより予測できない損失があることを知り、保険でリスクに備える重要性を学習しました。手立てとして、実際の農業収入保険のチラシを参考として、保険料や加入条件、補償のパターンがどのように書かれているかを生徒に調べさせることで、契約内容から必要な情報を見つけ出す力を育みました。続いて、農家のモデルを経営形態や耕作面積などの条件を変えて複数提示し、それぞれの農家に適した保険のプランをグループで考えさせました。それぞれのモデルにつき、どのようなリスクがあるか、適切な保険料と補償内容はどのようなものかを考えさせました。自分の人生を考える中で、リスクに備える大切さや、保険の契約内容を理解するための基本的な知識を身につけることのできる授業でした。
3.合評会
公開授業の後、研究授業合評会を行いました。開催校教員、他校教員、教育委員会の方々が参加しました。授業を行った3名が授業の自評を行い、その後、参加者の間で質疑応答や授業を参観しての意見交換を行いました。最後は、教育委員会指導主事4名の先生方から講評・助言をいただき、今後の授業の参考とすることができました。
4.プログラム
- 11:15~11:25
- 開会挨拶
福岡県立糸島農業高等学校 校長 八尋和彦 - 11:25~12:35
- 講演
「キャッシュレス時代を生きる」
講師:山田真哉氏 - 12:35~12:45
- 閉会挨拶
福岡県金融広報委員会事務局長 下河邉芳久 - 13:45~14:35
- 公開授業
(1)自立した消費者とは?(1年生 家庭科・家庭基礎)
(2)さまざまな代金決済の方法(2年生 商業科・ビジネス基礎)
(3)農業金融(3年生 農業科・農業経済) - 14:50~16:00
- 合評会