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おかねのシンポジウム2004

『地元発信。元気な未来はみんなでつくる』

スピーチ 福井俊彦(日本銀行総裁)

福井俊彦みなさんこんにちは。日本銀行の福井でございます。今日は「おかねのシンポジウム2004」にお招き頂き誠に有難く思っています。ご来場の皆様方と一緒に「元気な未来」について考える機会を頂いたわけで本当に嬉しく思っています。今日はおかねのシンポジウムですので、お金に関する話題を2つ私から差し上げたいと思います。


おかねのはなし2題

一つはもう皆様方ご承知おきの通り、まもなく11月1日から新しい日本銀行券、お札が登場いたします。今度出てくるお札は一万円札、五千円札、千円札でございますが、すでに出ている二千円札と合わせて、これは日本銀行の自慢でございます。紙の質、デザイン、印刷技術、いずれも世界最高であるだけでなく、偽造防止技術をたくさん盛り込んだという点でも世界一だという風に自慢しているものでございます。

まもなく登場いたしますので、新しいお札を皆様是非大切に使って頂きたいと思いますし、うんと可愛いがって頂きたいものだと思います。もちろん、今までお使いの古いお札もずっと有効でございます。そのままお使い頂けますのでその点も申し添えたいと思います。11月1日からの発行ですが、それより前にご覧になりたいという方は、日本銀行の本店の中の貨幣博物館で企画展というのを催しておりまして、そこでご覧頂けます。

二つ目の話題提供でございます。これも新聞報道等でご承知かと思いますが、日本銀行本店の地下の大金庫を公開しているということでございます。これは去る8月3日から一般公開をはじめています。幸い、見学ご希望の方が、私どもの事前の予想をはるかに上回る数に達しておりまして、ご覧頂いた方からも、大変面白かったという評判を頂いておりますが、是非これも機会がございましたら、見て頂きたいという風に考えます。

日本銀行の金庫というのは、お札、つまり現金が、これから出て行くぞ、ということで、すっかり準備を整えて、出発を待っている状態が一部にございます。また一方で、十分世の中でお役目を果たした銀行券が戻ってきて、一部は引退する銀行券もありますけれども、あらためてそこで休憩して、あるいはリハビリを受けて再出発する、そういう状況のままで保管されている状況、これが金庫の姿でございます。

日本銀行の本店の中の金庫は大変広うございまして、全部の面積は阪神甲子園球場の広さに相当する大きさを持っております。その中で、公開しておりますのは、一番伝統的な古い金庫ですけれども、是非ご覧いただければという風に思います。

お金としては、日本銀行券、いわゆる現金のほかに、皆様方が銀行その他の金融機関に置いておられる預金も広い意味でお金でございます。つまり、預金はいつでも現金に引き出せるというわけですから、預金というのは一種の現金の派生商品みたいなものでございます。そして皆様方が、その預金口座から、他の方の預金口座へ、時々預金の振り替えをなさると思います。

そういう預金の使い方もあるわけですが、日本銀行は、日本銀行券と言う現金の発行者であるという意味で、お金の元締めですが、皆様方が振り替えという形でお使いになる預金というお金についても、最終的な決済を結了させる役割を担っておりまして、この意味でも、お金の総元締めという立場で仕事をさせて頂いております。

個人の夢、社会の夢

福井俊彦私どもお金の総元締めと致しましては、まず皆様方にお金を安心して、かつ、便利に使って頂けるように、日夜細心の注意を払って仕事をさせて頂いておりますことは申し上げるまでもございません。

お札や決済システムの管理はもとより、新聞などで皆様方がよく目にされます、いわゆる金融政策という風なことに関しても、結局のところ、お金の価値の安定を図る、つまり物価の安定を通じて皆様方にお金を安心して使って頂く、そういう目的で行っているものでございます。

ただ私ども日本銀行で仕事をしております立場から申し上げれば、そうした単に皆様方に安心をお届けするということだけでは、今一歩満足がいかないところがあるわけです。それは何かと申しますと、私は、お金を安心して使って頂くということに加えて、もっと「いきいきとお金を使って欲しい」と、こういうことでございます。

「お金がいきいきと使われる」とはどういうことか。先ほど私ども大きな金庫を持っていて、出発準備のお金と、戻ってきて休んでいるお金と両方ありますと申し上げました。

これから出て行くお金、これは毎日出て行くわけですが、私ども、船旅に出て行く友達を見送るようなものです。是非無事に帰ってきて欲しい、こういう気持ちで送り出すわけですが、同時に、世の中の皆様方にしっかり役に立って、そして戻ってきて欲しい、という風に願って送り出しております。

そして毎日毎日、日本中、あるいは、世界にも流通して、お金が日本銀行に戻ってきます。これはもう、ご苦労様、お帰りなさいという気持ちで迎えていますけれども、出発のときとほとんど同じようにピンさらの状態で戻ってくるお金もあれば、本当にくたびれ果ててよれよれになって戻ってくるお金、いろいろございます。

私ども、ピンさらの状態で戻ってきたお金がそのまま嬉しいとすぐには思いません。よれよれになって戻ってきたお金、残念だという風にもすぐには思いません。と申しますのは、ピンさらで戻ってきたお金は、案外、箪笥預金という形で寝ていて、目が覚めたらもう戻ってきてしまったというお金かもしれませんね。これは世の中で皆さんのお役に十分立って戻ってきたとは思えないので、ピンさら結構ですけれども、ちょっと残念でしたという感じです。

それから、よれよれになって戻ってきたお金、これは文字通り、日本銀行の窓から出た瞬間から戻ってくるまで、本当に皆さんの「夢の実現」のためにお金が役に立って、だけれどもお金がよれよれになって戻ってきてしまった。これはよれよれだけれども、本当に大歓迎して受け入れているお金です。

しかし同じよれよれでも本当にくたびれ果ててしまっているお金もあるのです。つまり、世の中で行って欲しくないところばかり回ってきたお金です。たとえは悪いのですけれども、博打のために使われたお金であるとか、麻薬の取引に使われたお金であるとか、泥棒が途中で一生懸命運んでいたお金であるとか、本当に色々とありまして、本当にご苦労様と申し上げますが、残念でしたということになるわけであります。

これでもお分かりの通り、「お金をいきいきと使ってください」という意味は、この世の中の皆様一人一人が、本当に夢の実現のために活発に動いて頂いて、そのためにどんどんお金を使って欲しい、とこういう風なことでございます。

そうしたことがあってはじめて、お金が有効に使われ、皆さんの夢、社会の夢が実現して、日本という社会とか国が文字通り「活力と品格のある未来の社会」になる。お金が悪い世界を巡って疲れて戻ってくる、このお金のウエイトが高ければ高いほど、あまり品格のある社会とは言えない訳でありまして、是非、活力と品格のある社会になって、そこで流通するお金の量が増えて欲しい、とこういうことであります。

皆様方一人一人の夢について、私が特別こういうことでしょうと言う立場にございませんけれども、是非、お一人お一人が、私はこれこれのことがしたいんだという素直な気持ちを、そのまま、お一人で、お友だちと一緒に、社会の方々と一緒に、あるいは、海外の人たちと一緒に力を合わせて夢を実現する、そのことに胸が膨らむ、これが「一人一人の夢」ということでありましょうし、そういう風に夢を共有する人たちの集まりで何かを実現するということになれば、これは「社会の夢」、あるいは広く国の夢でありましょう。

また、世界中の人たちと手をつないで取り組むということでありましたら世界の夢ということでありましょう。日本のお金はそのいずれの場面においても必ずお役に立てるという風に思っている訳であります。

もう一つ、変なことを申しますと、日本銀行は先ほど現金、お金を、紙の質から言っても、デザインから言っても、印刷から言っても、偽造防止から言っても、断然誇りを持って皆さんに提供しますと申しましたけれども、日本銀行で絶対できないことがあるのです。

それは、お金、これは表からご覧になっても、裏からご覧になっても目に見えないのですけれども、お金には魔物が潜んでいるのです。皆様方が毎日暮らしておられて、自分の思っている通りに物事が進む、世の中が進むということばかりでなくて、やはりうまくいかなくて落ち込むとき、あるいは、落胆しているとき、それが綾なしているのが人生だと思いますが、そうした落胆しているときに、あまりお金をじっと見ますと、「結局世の中金次第だ」なんて思ってしまったりするかもしれません。

あるいは、そうでなくても、あまりお金をじっと見ていると、お金がもっと欲しいもっと欲しいと、夢から離れてぜんぜん違う方向に行ってしまう、ということがあるのではないでしょうか。お金にはそういう魔物が潜んでいるのですけれども、これを取り除く力は日本銀行にはないのです。

お金から魔物を取り除くのは、皆様方お一人一人のお力です。つまり、夢を実現して頂きたい。お金の魔力にあまり惹かれないで欲しい、それができるのは皆様方お一人一人です。魔物は、そっとお金の中に静かに閉じ込めたまま日本銀行にお返し頂くとこれが一番いい、という風に考えております。

余計なことを申し上げましたけれども、大切な夢を実現するために、お一人お一人、生き方や人とのつながりを真剣に考える。私自身もそういう風に心がけながら毎日暮らさせて頂いていますし、仕事もさせて頂いております。なかなか実現しないことが多いのですけれども、あきらめずに頑張りたいと思っています。

皆様方のそういうお気持ちを、私どもが少しでもお手伝いできたらいいと思っておりますし、こんな話が、この後、パネル・ディスカッションにうまくつながるかどうか分かりませんが、今日のパネラーの中では私が一番お金に近いところで仕事をさせて頂いておりますので、そうしたメッセージを差し上げさせて頂きました。有難うございました。


著名人・有識者が語る

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