金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2016
先生のための金融教育セミナー
広島会場
実践発表・ワークショップ3の模様
実践発表・ワークショップ 3
講師:
昭和音楽大学・短期大学部 梶ヶ谷 穣 非常勤講師(元 神奈川県立海老名高等学校 教諭)
進行・コメント:
国立教育政策研究所 大杉 昭英 初等中等教育研究部長
- 実践発表
- 私は神奈川県の海老名高校で「政治・経済」や「現代社会」を担当し、一昨年、定年退職しました。現在は、音楽大学で社会教育計画という科目を担当しています。退職すると退職金が頂けるわけですが、退職金や年金、社会保障について、高校生の中にも高い関心を持っている生徒がいます。もう少し生徒に社会保障の授業をしたらよかったなという自身の反省を含めて、今日は、高校生に社会保障や年金についてどう教えていくべきかについてお話できればと思っています。
- 書店に行くと、老後破産、隠れ貧困等、暗いタイトルの書物が並んでいます。さらには、消えた年金問題、あるいは情報流出等。一方、GPIFの5兆円の運用損のような行政側のトラブル等もあり、年金や社会保障について、世間では不安やネガティブなイメージが高まっています。そうした状況下で生徒に社会保障について説明することになりますが、第一に保険の機能や意味についてきちんと教えずに、社会保険制度を生徒に学習させることは問題があるでしょう。 貯蓄と保険の違いをまず説明し、次に社会保険である公的医療保険も年金保険も、保険であり積み立ての貯蓄ではないということ、これをしっかりと生徒に教えなければいけないだろうと思います。
- 年金制度については、将来、年金が破たんするのではないかという議論がありますが、教育の現場では、破たんするかしないかというよりも、どういう年金制度にしたら破たんせずに済むのかというアプローチを考えることが望ましいのではないかと思います。年金制度には、賦課方式と積立方式があり、現在日本でとられている賦課方式は、現役世代の保険料を高齢者に仕送るという方式です。賦課方式か積立方式か、さらに基礎年金の財源は税方式か社会保険方式か等のいろいろな議論がありますが、できる限り正確な情報を生徒に伝え、自分自身で考察させることが大切だと思います。
- 年金や社会保障の授業をしていて、生徒から「普通に学校を卒業して、普通に働いて、普通に保険料を納める、それが結果的に自分たちの年金にとっての幸せな姿につながるんですよね」と言われたことが印象に残っています。そして、年金の問題、社会保障の問題は、労働の問題にも目を向けなければ解決できない。社会保障の授業からそういうところまで考えられる生徒になってほしいと思いますし、教える側も十分に認識しなければいけないと思っています。
- ワークショップ
- 「医療保険についてどうしたら保険財政をプラスにできるか」、「自分がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金運用担当者だったら、保険料をどういうポートフォリオで運用するか」、「年金制度を持続させるためにどういう改善策や行動が考えられるか」というテーマについてグループで議論・意見交換をして頂きました。
- 年金制度の改善策として、「所得の高い人からたくさん取り、所得の低い人から少なくする累進性の所得税方式とすればよいのではないか」という意見が出されました。また、「定年制度の見直しをして、働ける人にはどんどん働いてもらう」、「女性が働き続けられるように、保育所の待機児童の問題を解決して環境を整えるべき」という意見が出されました。
- コメント
- 大杉昭英先生は、アメリカの哲学者ロールズの考え方に触れながら、次のようにコメントをされました。
「中学生や高校生に保険の考え方をきちんと教えることが重要」とのお話はその通りだと思いました。保険は「不幸の分散」です。私たちの前には「無知のヴェール」があり、明日自分がどうなるかわかりません。わからないからお金を出しあい、不利な状況になってしまった人がいたときに、お金がその人に回るようにしましょうね、というのが保険です。その保険の制度は賦課方式か積立方式か、運用は株式か債券か、考え方は国によっても違います。それを学校の授業においても考えてみましょうということです。梶ヶ谷先生の発表では、退職金にも触れられていました。退職金や年金制度等、今後の生活設計を真面目に考えると、個人的にも梶ヶ谷先生の発表は大変リアリティのあるお話でした。
実践発表・ワークショップ3の模様
- 主催:
- 金融広報中央委員会・広島県金融広報委員会
- 後援:
- 文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、広島県、広島市、広島県教育委員会、広島市教育委員会、広島県連合小学校長会、広島県公立中学校長会、広島県公立高等学校長協会