金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2009
暮らしに役立つ講演会
講師 : 住田 裕子氏 (弁護士)
「気をつけよう!金融トラブル」
イエスかノーを明確に、常にマイナス情報に目を
商店街の知り合いの店で「すてきなバッグが一つだけ残っています。7,000円です。今日で売り切れてしまいますよ」と声をかけられたとします。「うーん」と返事をしかねていると、店員さんが「お取り置きしときますから」と言うので、また「うーん」と言って、店を出たとします。
そうして翌日、お店の前を通ると、「お取り置きしておきました。7,000円です」と言われました。払わなくてはならないでしょうか、払わなくても良いでしょうか?」
これは、テレビ番組の「行列のできる法律相談所」でも意見の分かれるところです。というのは、「うーん」という言葉は「イエス」に聞こえてしまう一方、首を横に振って「うーん」と言えば「ノー」であり、首を傾げての「うーん」でしたら、「わかりません」という意味だからです。ここで大切なことは、「はっきりとわかるような形で答える」ことです。そうしないと、売る側の押しの一手で終わってしまう可能性があります。
口約束は友人の間でも成立し、損害が生じた証拠がある場合、債務不履行、さらには横領罪や背任罪などの刑事裁判になる可能性もあります。
もう1つの例ですが、ある家に小包が届いたとします。家族の誰に来たのか、わからない小包で10日間、放っておきましたが、気になるので、あけてみると、「1週間経ちましたら、お買い上げされたものとみなします。振込用紙で6,000円振り込んで下さい」「中をあけられたら、お買い上げされたとみなします」などという紙が入っていました。これは買うつもりはなく、中身を確認するために開けたので、法律的に契約は成立していません。従って払う必要はありません。
この時、送ってきた業者に「取りに来て下さい」と電話をしたり、「着払いで送り返す」よりも、「放っておくこと」をお勧めします。「(放っておいて)2週間経つと、返せと言えなくなる」という法律があるからです。
特に電話などをすると、こうした悪徳業者は「この人は真面目で脅しに弱い」と「カモのリスト」に入れられてしまいます。
高利回り金融商品、ネズミ講、携帯電話やクレジットカードの悪用など、あの手この手で、中学生から若者、一人暮らしの高齢者まで、多くの人を狙う事件が増えています。「絶対お得」などという「うまい話はありえない」と肝に銘じ、常にマイナス情報を大事にするとともに、困ったことがあったら一人で悩まないで、国民生活センターや弁護士会、市などの相談窓口に行くようにしましょう。
プロフィール
兵庫県加古川市出身 東京大学法学部卒業
昭和54年 東京地検検事任官 大阪等、各地の地検検事として転勤
昭和62年 法務省民事局付検事(女性初)
平成元年 法務大臣秘書官(全省庁初の女性)
平成8年 弁護士登録
内閣府(男女共同参画会議、総合科学技術会議)、文部科学省、経済産業省の審議会委員など。
日本テレビ系「行列のできる法律相談所」ほか出演中
著書・論文多数
