金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2009
暮らしに役立つ講演会
講師 : 宇都宮 健児氏 (弁護士)
「金融トラブルにあわないために~人はなぜ多重債務に陥るのか~」
対策協議会、地元の弁護士会などに相談を-解決は必ずできる
私は中学校や高校で話をすることがありますが、多くの生徒がサラ金(消費者金融)を銀行と同じようなものだと思っているのではないかと感じます。これはサラ金業者がテレビでコマーシャルをしており、しかも、全国どの都市でも駅前にサラ金の看板が出ていて、繁華街には無人契約機があります。ですから、つい簡単に借りてしまうことにもなります。
このサラ金の利用者は1,000万人を超え、クレジットカードも3億枚発行され、これにもお金が借りられるキャッシング機能が付いています。ともに金利は非常に高く、返済できなくて困っている人は200万~300万人、3社以上のサラ金から借りている人は293万人にも上っています。
複数のサラ金やヤミ金、カード会社からの借り入れが増え、返済のための借り入れができなくなった時に、夜逃げや自殺をする人が出ているのは、ご存じの通りです。
私は30年ほど前から多重債務者側の代理人になり、この問題に取り組んでいますが、1983年に貸金業規制法が施行され、サラ金業者が登録制になり、夜9時以降と朝8時以前は取り立てが規制されると同時に、弁護士が間に入ったら、直接、多重債務者本人への取り立てができなくなりました。
2006年の出資法改正では、早ければ2009年12月、遅くとも2010年6月までには、上限金利がそれまでの29.2%から20%に引き下げられることになっています。これにより、利息制限法の制限金利と出資法の上限金利との間のグレーゾーンが撤廃され、加えて、貸金業法の改正により年収の3分の1を超えた貸し付けができないという総量規制も導入されます。
並行して、全国47の都道府県に多重債務者対策協議会が設置され、地元の弁護士会、司法書士会、被害者団体などが参加して、多重債務者の相談に乗ったり、多重債務を抱えて困っている人を掘り起こしたりする活動をしています。今年10月からは市町村の社会福祉協議会が窓口となっている生活福祉資金も借りやすくなりました。
借金は恥だという考え方が強く、友達、親戚よりも、サラ金から借りてしまいがちですが、サラ金から借りなければ多重債務には陥りません。厳しい取り立てにあっている人のほとんどは一人で、あるいは家族だけで悩んでいます。しかし、対策協議会、地元の弁護士会などに相談すれば解決は必ずできます。過払金が返ってくるケースもあります。
日弁連が全国の自己破産者を調査したところ、借金をした理由は生活苦、低所得、病気、失業、給料の減少、事業資金、他人の借り入れの保証などが多く、ギャンブルや遊興費は数%しかありません。相談窓口の存在や、出資法、利息制限法、多重債務の解決方法などを広く知らせ、学校でもこうした教育をしていくことが重要であり、ワーキングプア、貧困、格差といった問題を解決し、高利貸のいない社会への転換のために社会全体で取り組んでいくことが求められるのではないでしょうか。
プロフィール
1946年
愛媛県に生まれる
1969年
東京大学法学部中退、司法研修所入所
1971年
弁護士登録、東京弁護士会所属
以後、日弁連消費者問題対策委員会委員長、日弁連上限金利引き下げ実現本部本部長代行、東京弁護士会副会長、豊田商事破産事件破産管財人常置代理人、KKC事件・オレンジ共済事件・八葉物流事件被害対策弁護団団長などを歴任
現在
内閣に設置された多重債務者対策本部有識者会議委員、日弁連多重債務対策本部本部長代行、全国クレジット・サラ金問題対策協議会副代表幹事、高金利引き下げ・多重債務対策全国連絡会代表幹事、全国ヤミ金融対策会議代表幹事、地下鉄サリン事件被害対策弁護団団長、オウム真理教犯罪被害者支援機構理事長、反貧困ネットワーク代表、人間らしい労働と生活を求める連絡会議(生活底上げ会議)代表世話人、年越し派遣村名誉村長、週刊金曜日編集委員
著書
『消費者金融 実態と救済』(岩波新書)
『多重債務被害救済の実務』(編著 勁草書房)
『ヤミ金・サラ金問題と多重債務者の救済-返さなくてもよい借金がある』(明石書店)
『自己破産と借金整理法』(自由国民社)
『イラスト六法 わかりやすい自己破産』(自由国民社)
『多重債務の正しい解決法-解決できない借金問題はない』(花伝社)
『ヤミ金融撃退マニュアル』(花伝社)
『お金で死なないための本 いつでもカード、どこでもローンの落とし穴』(監修 太郎次郎社エディタス)
『もうガマンできない!広がる貧困-人間らしい生活の再生を求めて』(宇都宮健児・猪股正・湯浅誠編著 明石書店)
『反貧困の学校-貧困をどう伝えるか、どう学ぶか』(宇都宮健児・湯浅誠編著 明石書店)
『派遣村-何が問われているのか』(宇都宮健児・湯浅誠編著 岩波書店)など
