金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2009
教員向けセミナー 実践報告<1>
櫻庭 咲子氏 (秋田県秋田市立秋田商業高等学校 教諭)
「本校の特色ある教育活動を金融教育の視点から探る」
小学生や地域と交流し、お金の管理や働くことの意義を学ぶ
本校は平成20年度、金融教育研究校の委嘱を受け、既存の教育活動を金融教育の視点から見るという考えで取り組んでいます。その既存の教育の一環として、8年前から「ビジネス実践 AKISHOP」という活動を行っています。
これは学校全体を模擬株式会社ととらえ、全校生徒と全職員が商品の企画開発から販売、広告宣伝、会計処理までを体験する活動で、これから社会に出て行く生徒たちが、前に踏み出す力、疑問に思ったことを諦めずに最後まで考え抜く力、いろいろな人と目標に向かって協力する力を養うことを狙いとしています。
昨年までは1つの本部のもとで活動していたのですが、活動の多角化に対応して、今年度からはAKISHOP本部、キッズビジネスタウン本部、ユネスコスクール本部などの3つの本部を設けています。このうちキッズビジネスタウン本部は、私も所属している部で、小学生の子どもたちと協力しながら社会の仕組みを学ぶことを目的としています。誰かに教えることによって授業で学んだ知識をより深めることができるという生徒の考えから始めた活動です。
具体的には小学生が仮想の街の市民になり、仕事を探して働き、給料をもらって税金を納めるとともに、好きなものを買ったり、サービスを受けるというものです。特に給料も秋田県の最低賃金(時給620円程度)を参考に550円にし、商品やサービスの価格を現実に近い価格に設定することにより、お金の価値を感じてもらうようにしています。また本校の生徒と小学生が一緒になって、仕入帳、売上帳、現金出納帳をつけることで、お金の管理の仕方、社会人としての生活能力などについても学べるようにしています。
今年度は秋田市内すべての小学校に呼びかけた結果、1日目137人、2日目206人と昨年度より参加者が増え、アンケートには「仕事は大変だと思ったけど、してみたらやりがいがあった」、「お金をもらうということは人を喜ばせ、人の役に立つことだと気づいた」、「税金が広く世の中に使われていることがわかった」などの感想が寄せられました。
地域の企業や地域にお住まいの方々にも協力してもらい、店舗を運営しましたが、二日間を通して、小学生、本校の生徒、企業、地域の方々、それぞれにプラスであったため、今後もこの活動の可能性を広げていきたいと思っています。
教員向けセミナー 実践報告<2>
土田 静子氏 (秋田県由利本荘市立上川大内小学校 教諭)
「由利本荘市立上川大内小学校金銭教育の取り組み
『上小なべっこ会を全校で成功させよう』」
野菜を育てて販売、リサイクルバザーも開催し、秋のイベントの食材を購入
本校は全校児童が72名の小規模校で、上川大内地域には大きなスーパーマーケットはなく、子どもたちが100円玉を握りしめて買い物に行く店もほとんどありません。そのため、子どもたちの金銭への関心は高くないのが実情でした。そこで、昨年度は学年ごとに金銭について様々な教科で、様々な角度から体験活動を中心において学習する機会を設けましたが、今年度は「夢を描き、その実現に向けて努力する子供の育成-人やもの、お金を大切にする心や態度を育てる金銭教育を通して-」という研究主題のもと、「上小なべっこ会を全校で成功させよう」というテーマに取り組むことにしました。
秋のなべっこ会で必要な食材を、自分たちが体験活動を通して得た収益で購入する目的で、予算は1人300円、全校72名で2万1,600円としました。6年生が中心になって野菜の販売を呼びかけ、全校を6つの縦割りグループに分けて、それぞれが各部門を担当することにしました。
各部門は、販売促進部の「野菜売り売り隊」、生産研究部の「野菜を育て隊」、無人販売部の「たくさん買ってもらい隊」、広報宣伝部の「チラシ配り隊」、記録部の「何でも記録し隊」、会計部の「お金を管理し隊」で、ジャガイモ、ゴーヤ、サツマイモ、エダマメ、カボチャ、サニーレタスを各グループが、それぞれ一つずつ、苗植えから販売まで責任を持って行うことにしました。苗代に14,480円かかったので、赤字からのスタートです。
地域のたくさんのおじいさんやおばあさんの協力で苗を植え、サニーレタスは6月に販売を開始。注文販売とPTA参観日での販売などと合わせて、1万8,650円の売り上げになりました。夏休みに入って、枝豆、ゴーヤ、カボチャ、ジャガイモを公共施設に無人販売所を設置して売ると、翌日には完売し、各家庭から畑仕事の大変さを知って、「苦手だった野菜を食べるようになった」、「家の畑仕事を手伝うようになった」という声も聞こえるようになりました。
さらに6月から準備したリサイクルバザーを10月6日に開催したところ、2万5,935円の利益が上がりました。これと野菜の収益を合わせて、4万7,205円になり、先生を含めたなべっこ会の食材が89人分で2万6,700円。食材を購入して余ったお金は子どもたちの話し合いで募金に回しました。
子どもたちは、働いてお金を得ることの大変さを学び、働いて汗をかく喜びを感じることができました。さらに、家庭の金銭教育に関する関心も高まりました。ただ、金銭教育は長期にわたり、じっくりと無理なく取り組むものだと思っています。