金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2009
教員向けセミナー 講話
講師 : 大杉 昭英氏 (岐阜大学教育学部 教授)
「新学習指導要領における金融教育の進め方」
日常の金融問題を通し、子どもに「合理的で公正な判断ができる能力」を
金融は私たちの生活を支える社会の運営システムそのもので、新学習指導要領(08年3月および09年3月公示)でも、社会システムについての学習を大切にしています。金融教育は「生活と社会と将来についての学習」を行うものであり、大きな貢献ができると思います。生活するために仕事をしてお金を得るということから言えば、キャリア教育であり、また、お金を使うことは個人では消費、企業では投資活動です。同じように、お金を貯めるのは貯金や自己資本を増やすことであり、足りなければ融資してもらう、また、それを返すということもあります。私たちの社会は、こうした金融システムを前提として成り立っています。
政府で言えば財政であり、学校のクラブ活動も文化祭も、お金をどう配分するかという点では同じだと言えます。
金融教育というのは、金融広報中央委員会によれば「お金や金融の様々なはたらきを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である」と定義されています。
新学習指導要領では、日本の子どもの読解力の低下を大きな問題にし、読解力を「情報を正確に取り出して、自分の持っている知識と生活経験に基づいて、意味を解釈する」能力だとしています。また、学校教育法第30条は「(小学校は)生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養う…」と書かれています。金融教育の定義を、この読解力や教育法が求める学力の要素に重ね合わせますと、より理解されやすいと思います。
学習指導要領をつくる過程では、教科書の中の知識と日常生活をいかに結び付けるかが議論されました。学校で「身につけた知識を整理して、日常生活で起こる金融に関わる問題を考える全体計画」をつくり、子どもたちに是非、「合理的で公正な判断ができる能力」をつけてもらいたいと思っています。
プロフィール
昭和28年生まれ 広島大学大学院修了、公立学校教員、広島県教育委員会指導主事などを経て、
平成9年
文部省初等中等教育局中学校課教科調査官(兼)
高等学校課教科調査官
平成13年
国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官
(兼)文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官(社会)
平成15年
文部科学省初等中等教育局視学官
平成19年より現職 『中学校学習指導要領<平成20年版>全文と改訂のピンポイント解説』、明治図書、 平成21年 ほか著書多数。
