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ニューノーマル時代に考える「移住」という選択肢

(支援金や制度の活用と移住後のリスクを事前に考える)

地方移住をサポートする支援金や制度

実際に移住して生活が軌道にのるまでは、引越しや住み替え時の住宅、自動車の購入費用などのさまざまな費用がかかります。

移住に際し発生するこうした負担を軽減して移住を促進するために、国や地方自治体の多くが支援金や補助金、サポート制度などを用意しています。

国の代表的な支援金制度が、政府の地方創生に関わる事業として2019年から6年間を目処に実施されている「移住支援金」、「起業支援金」の制度です【図表6】脚注6

【図表6】移住することで受け取れる支援金例
支援金名 移住支援金 起業支援金
金額 最大100万円(世帯の場合)
最大60万円(単身の場合)
最大200万円
条件
  • 移住直前10年間で通算5年以上かつ直近1年以上東京23区内に在住または通勤
  • 東京圏外に移住し、移住先で①支援金対象の中小企業等へ就職②テレワークにより移住前の業務を継続③地域で社会的企業のいずれかなどを実施。
  • 新たに起業する場合、①東京圏以外で起業する②国の交付決定日以降、個人開業届または法人設立③起業地に居住(①~③をすべて満たすことが必要)など
※東京圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県(条件不利地域を除く)

東京23区に在住または通勤する人が東京圏外へ移住して就職した場合は最大100万円の「移住支援金」が、起業した場合は加えて最大200万円の「起業支援金」が支給されます。

2021年度からは「移住支援金」の対象が拡充され、転職せず移住前と同じ仕事をテレワークで継続する人も対象になりました。

いずれの支援金も対象となる求人や起業に条件があるので、詳しくは、内閣府の地方創生サイトなどで確認しましょう。

https://www.chisou.go.jp/sousei/shienkin_index.html地方創生サイトへリンク

そのほか、自治体ごとに住宅、子育て、就労に関わるさまざまな支援制度があり、国の制度と併用することもできます。

10年以上の定住で、住宅取得費が最大400万円補助される福島県喜多方市や、空き家のリフォーム費用が最大500万円補助される愛媛県大洲市など、住宅支援に力を入れる自治体が多くあります。

(就労支援制度)

就労支援としては、農林水産省が就農支援に力を入れており、各道府県の農業大学校で就農研修を受け、要件を満たした人を対象に、最長2年間、年間最大150万円を支給するなど、手厚い支援制度が用意されています。

また、企業への就職支援としては、週末を利用した地元企業への訪問に補助金を支給する福井県福井市の「週末就活」など、ユニークなプログラムもあります。

支援金や補助金の要件は自治体によってさまざまですので、移住候補地を絞り込む際にはこうした自治体の制度をよく調べるとよいでしょう。

移住前に考えておきたい収入と支出の変化

実際に移住する前には、収入と支出についても考えておく必要があります。収入については、地方移住すると下がるケースも多いため、移住に二の足を踏む人も多くいますが、支出も含めた収支全体で考えることが大事です。

支出については、移住地の環境に影響されることが多いのが実情です。

例えば、交通の便の悪い地域であれば一家に複数台の車が必要となり、支出がかさむことも考えられます。

学校の少ないエリアであれば、学費以外に高校や大学に進学する際の下宿代を見込んでおく必要も出てくるかもしれません。

また、まとまった支出だけでなく、毎月かかる生活コストの確認も必要です。ここからは、都心から地方への移住を考えているAさんを例に、移住前と後の生活費を比較していきます【図表7】脚注7

【図表7】移住前後の家計比較

Aさん(会社員・30歳)、妻(専業主婦・30歳)、長男1歳の例

項目 移住前/月
収入 給与収入(額面) 320,000円
支出 住居費等 90,000円
生活費合計 142,000円
生活費内訳 食費 67,000円
日用品 7,000円
交通・通信費 17,000円
水道光熱費 15,000円
その他 36,000円
税・社会保険料 63,000円
支出合計 295,000円
収支(収入-支出) 25,000円

項目 移住後/月
収入 給与収入(額面) 225,000円
支出 住居費等 45,000円
生活費合計 125,000円
生活費内訳 食費 40,000円
日用品 7,000円
交通・通信費 27,000円
水道光熱費 20,000円
その他 31,000円
税・社会保険料 41,000円
支出合計 211,000円
収支(収入-支出) 14,000円

項目 移住前後での
増減額/月
収入 給与収入(額面) △95,000円
支出 住居費等 △45,000円
生活費合計 △17,000円
生活費内訳 食費 △27,000円
日用品 -
交通・通信費 +10,000円
水道光熱費 +5,000円
その他 △5,000円
税・社会保険料 △22,000円
支出合計 △84,000円
収支(収入-支出) △11,000円

まず、移住先のエリアの家賃帯を検索し、住居費は現在の半分になると想定しています。食費は、下調べした生鮮食品の値段と、外食を減らすことも想定して、2万7,000円減。

日用品費は据え置きとし、交通・通信費は、通勤や買い物など日常生活の移動に車を使うことを考え、1万円増としました。

地方で予想外にかさむことがあるのが水道光熱費です。

都心よりも広い家に移り住み冷暖房費が上がることや、地方で主流のプロパンガスは割高であるといったことを加味し、5,000円増を見込んでいます。

これに、その他の支出や税金・社会保険料を考慮すると、都心に住む今よりも、支出は8万4,000円減る計算となりました。

(支出の減少以上に収入が減ることもある)

しかし、Aさんの場合、移住後の収入が9万5,000円減と、支出の減少以上に減る想定のため、黒字は維持できますが、収支は今よりも厳しくなるという結果になりました。

住居費は大幅に減るものの、光熱費や交通費が増えるため生活費が思ったほど安くならないというのは、ありがちな落とし穴といえます。

このように、地方は生活費が安いという思込みで移住すると、後々移住を後悔することになりかねません。

毎月の固定費がどのくらいかかるのかといった情報を事前に収集し、移住先の収入で支出がまかなえるのかシミュレーションしましょう。

移住に伴うリスクに備え「想定外」を「想定内」にする

移住は生活拠点を変えることになるため、相応のリスクがあります。そうしたリスクへの備えも大事です。

例えば、仕事や地域と合わず再移住せざるをえなくなる場合に備えて、生活費の3~6カ月分のお金と転居費用を蓄えておくことや、地域との相性を確認できるまで、賃貸で様子を見るといったことなどが考えられます。

まさかの事態に備え、移住の「想定外」を移住前に「想定内」にしておくことが大切です。

脚注

1

(出所)内閣府「第4回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(令和3年)」を基に作成

2

(出所)財務省関東財務局ホームページ「経済調査レポート(コロナ禍における管内の人口移動)」を基に作成

3

(出所)内閣府「第4回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(令和3年)」を基に作成

4

(出所)監修者作成

5

(出所)監修者作成

6

(出所)内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局ホームページを基に監修者作成

7

日本FP協会発行「『地方移住』で気になるお金の話」を基に作成

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