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個人型確定拠出年金

ライフスタイル別・個人型確定拠出年金(iDeCo)の使いこなし方

iDeCoってなあに?

老後の公的年金には、国民年金から受け取る老齢基礎年金と、会社員や公務員経験がある人が上乗せして受け取る老齢厚生年金があります。その金額は、40年間保険料を納めた人の老齢基礎年金で月額約6.5万円、40年間平均的な会社員の給料で働いた人の老齢厚生年金(老齢基礎年金含む)で、月額約15.6万円が目安です。公的年金は、原則65歳から一生受け取ることができますが、老後の備えとして十分か不安を感じる人は少なくありません。

そこで登場したのが、iDeCoです。iDeCoは、老後の年金のために毎月積み立て、定期預金や保険、投資信託などで運用したお金を、60歳以降に年金や一時金として受け取る制度です。

図表1:確定拠出年金の仕組み

「iDeCoってなあに?」で説明した内容を図解しています。

iDeCoのメリットと注意点は?

①iDeCoのメリット

iDeCoの主なメリットは、「税制の優遇」と「掛金の調整」、そして「受取り方」にあります。

まず、税制の優遇メリットには、「掛金が全額所得控除の対象になる(税金軽減)」、「運用益に税金がかからない」、「受け取るときに税金の優遇がある」という3つがあります。iDeCoを活用することで、税金を軽減しながら老後の準備ができる点が魅力です。

※コラム欄に、掛金に対する税金の軽減効果とその計算方法を紹介しています。こちらをあわせてご覧ください。
コラムiDeCoで掛金に対する税金は、いくらぐらい軽くなるの?

次に、掛金の調整メリットです。毎月の掛金は、最低5000円から限度額の範囲内において1000円単位で決めることができ、1年に1回変更することができます。

また、家計の状況に応じて途中で積立てを休んだり、再開したりできる仕組みになっています。

最後のメリットは、受取り方です。iDeCoは60歳から年金を受け取ることができるので、60歳の退職から公的年金を受け取る65歳までの5年間をカバーすることができます。また、iDeCoで育てたお金を何歳から受け取るのか、一時金か、それとも年金で受け取るのか、さらに、年金なら何年間かけて受け取るのか、などの受取り方は、60歳以降70歳までの間に、老後の生活が具体的になってから決めることができるので、融通がききます。

②注意点は?

主な注意点は、「手数料」と「途中引出し」の二つです。

iDeCoは、銀行や証券会社、保険会社など、多くの金融機関が窓口となって扱っています。そのなかから一つの金融機関を選んでiDeCo口座を開設しますが、加入時手数料(2777円)が必要となるほか、その後は口座管理手数料や事務手数料などが毎月の積立金額から差し引かれます。手数料は、金融機関によって異なります(年間2000~8000円ほど)。例えば、30歳の人がiDeCoで積み立てる場合、手数料が年間1000円違うと、30年間では3万円の違いになります。

また、投資信託で運用する場合は、運用にかかる費用として信託報酬などが差し引かれます。投資信託の残高に応じてかかる信託報酬は、残高が増えるほど実質的に差し引かれる費用が増えるので、金融機関を選ぶときは、口座管理手数料と投資信託の費用の両方を確認しましょう。

もう一つの注意点は、iDeCoで積み立てたお金は、60歳になるまで引き出すことも、借り入れることもできないことです(一定の障がいや死亡時を除く)。着実に老後資金の準備ができる反面、iDeCoでの積立額を多くしてしまうと、教育資金や住宅取得資金などのまとまったお金が必要なときに、手元に現金がなくて困るかもしれません。

iDeCoを賢く使うには、メリットと注意点の両方を理解した計画的な準備がカギなのです。

ライフスタイル別老後資金の貯め方

iDeCoは、掛金に対する税金がかからないなど、税金面でのメリットが大きい制度ですが、60歳まで引き出せないお金だからこそ、ライフスタイルとの相性を考える必要があります。いろいろな考え方がありますが、ここでは老後資金の貯め方について、代表的な5パターンをご紹介します。各パターンの後でお示しする例では、積立額と税金の軽減効果を合算して、いくら老後資金を準備できるかを試算しています。このように、iDeCoを使って老後の準備をすると決めたなら、掛金に対して税金がかからなくなって浮いたお金をきちんと把握して、さらに老後のために蓄えていくことが重要です。

①20~30歳代の会社員

60歳までの期間が長く、結婚や転・退職などのライフイベントが予想されるほか、車やマイホームの購入費用などのまとまったお金が必要な年代です。その時期や金額が未確定なため、現金が必要なときに困ることがないように、老後資金については月額5000円または1万円などの少額から、会社の財形貯蓄や自動積立定期預金、そして、税金の軽減メリットがあるiDeCoやNISA、2018年から始まる予定の積立NISAを活用して、積立ての習慣をつけましょう。

(例)年収400万円(課税所得195万円以下)、30歳の人が毎月5000円を60歳までiDeCoで積み立てると、積立総額180万円と税金の軽減効果の合計額27万円により、合計約207万円の老後資金を準備できます。

②40歳~独身会社員・共働き世帯(子どもなし)

生活スタイルが安定し、老後の住居や生活などが具体化してくる年代です。積極的にiDeCoを活用しましょう。同じ掛金額なら、課税所得が高いほどiDeCoは税金の軽減効果があります。

iDeCoを上限まで活用しても家計に余裕がある場合や、個別の株式や投資信託に興味がある人は、運用益が非課税になるNISA(積立NISA含む)も老後の準備の選択肢に加えてみましょう。

(例)企業年金がない会社員40歳の人が、毎月2.3万円をiDeCoで20年積み立てた場合の積立額の合計は552万円です。20年間の税金の軽減効果の合計額は課税所得が195万円以下なら約83万円(積立額との合計は約635万円)。課税所得が330万円超~695万円以下なら、約168万円(積立額との合計は約720万円)にもなるのです。

③子どもがいる世帯

出産や子どもの進学、住宅購入などのさまざまなライフイベントがある世帯です。優先順位が高いものとして教育費がありますが、教育費は子どもが生まれた瞬間から、いつ、いくら必要かが分かるため、準備がしやすいお金です。児童手当をすべて貯めると約200万円になり、国公立大学4年間の授業料、約200万円が準備できます。私立大学文系費用の約400万円を準備したい場合は、児童手当+月額1万円の積立てを0歳から18歳まで行うと、約400万円の準備ができます。会社の財形貯蓄や金融機関の自動積立、あるいは、保険会社の学資保険などを活用して準備しましょう。

なお、教育費が不足するときは、奨学金や教育ローンを借りることができますが、老後のお金は誰も貸してくれません。そこで、月々5000円から積み立てることができるiDeCoを細く長く続ける、または、計画的に50歳からiDeCoを始める、あるいは、途中で現金化できるNISA(積立NISAを含む)を使って、株式投資で配当金や株主優待を楽しみながら、老後準備をする方法を検討しましょう。

(例)企業年金がない会社員30歳の人が、50歳までは毎月1万円、50歳から60歳までは毎月2.3万円をiDeCoで積み立てた場合の積立額の合計は516万円です。課税所得が195万円超~330万円以下なら30年間の税金の軽減効果の合計額は約104万円(積立額との合計は約620万円)です。

④個人事業主

個人事業主の公的年金は、国民年金部分のみのため、iDeCoの掛金の上限は月額6.8万円(ただし、国民年金基金に加入している場合はその掛金との合算)と多額です。同じ税率でも掛金額が大きいと、税金の軽減額も多いため、関心は高いようです。ただし、仕入れがある事業や売り上げの好調・不調の波が大きい事業の場合は、まとまった現金が必要になることも考えられるため、iDeCoよりも小規模企業共済を優先しましょう。小規模企業共済は、個人事業主や小規模な企業の退職金づくりができる制度ですが、iDeCoと違い、途中解約や借入れが可能なので、積立てをしながら事業の変化に対応できます。それでいて、掛金に対する税金の軽減は、iDeCoと同じだけあるのです。個人事業主の場合は、まずは小規模企業共済を優先する、あるいは運用益の楽しみがあるiDeCoと併用して老後の準備を行いましょう。

(例)課税所得が695万円超~900万円以下の個人事業主が、小規模企業共済月額7万円とiDeCo月額2万円を、20年間積み立てた場合の積立額の合計は2160万円です。20年間の税金の軽減効果の合計額は約723万円(積立額との合計は2883万円)です。税率が高くなるほど、税制の優遇メリットも大きくなります。

⑤主婦(夫)

専業主婦(夫)や年収103万円以下のパートで働く妻(夫)は、納税していません。納税額がないと、iDeCoのメリットである掛金に対する税金の軽減がないにもかかわらず、毎月の積立額から手数料などが差し引かれるため、実質的な資産が減ってしまいます。専業主婦(夫)にとっては、自分名義の老後の資金が作れることや運用中の利益に税金がかからないことがメリットといえますが、iDeCoよりは、個人年金保険やNISA(積立NISAを含む)のほうが適しているでしょう。

(例)手数料が月額約200円の金融機関でiDeCoを始め、毎月の掛金が5000円の場合の手数料率は4%です。10年後の残高が60万円になると、手数料率は0.4%に下がりますが、元本割れしないためには、手数料相当分の運用益を上げる必要があります。

2017年から対象者が広がったiDeCoは、納税者や高額所得者には加入メリットが大きいものの、専業主婦(夫)のメリットは小さいのが現状です。制度・商品の比較表(図表3)も参考に、自分にあった方法で、安心できる老後の準備を行いましょう。

図表2:老後資金の積立て方と家計

家計の全体収入の中から老後資金を積み立てていく場合、途中で引き出す可能性があるお金はiDeCo以外で運用し、60歳まで引き出さずに積み立てることができるお金はiDeCoで運用すると、iDeCoの所得控除により税金が軽減されるため、実質手取り収入が増えることになります。

図表3:老後目的の制度・商品の比較
  iDeCo NISA 小規模企業共済 個人年金保険
利用できる人 原則20歳以上
60歳までの人
20歳以上の人 個人事業主・
小規模会社の役員
誰でもOK
運用者 個人(定期預金、保険、投資信託から好きな商品を選んで運用) 個人(投資信託、個別株式などから好きな商品を選んで運用)※積立NISAは投資信託のみ 小規模企業共済 保険会社
拠出・運用期間 掛金の拠出は60歳
運用は最大70歳
拠出は2023年まで。運用期間は5年間(積立NISAは20年) 廃業、死亡、年金受取まで 自由(申込時に決定)
毎月の掛金額・
保険料
月額5,000円~
68,000円
(働き方により異なる)
年間累計120万円
※積立NISAは年間累計40万円
月額1,000円~
70,000円
自由(申込時に決定)
掛金額の途中変更 できる(上限・下限の範囲) できる(上限の範囲内) できる(上限・下限の範囲) 減額のみ
途中引出し 原則できない できる(売却) できる(解約・貸付) できる(解約・貸付)
将来の受取額 運用結果により異なる 運用結果により異なる 確定 確定
(保険会社により異なる)
掛金に対する控除 小規模企業共済等掛金控除 なし 小規模企業共済等掛金控除 生命保険料控除
(個人年金保険料控除)
月額2万円を積み立てた場合の1年間の所得税と住民税の合算軽減額 約36,000円~
134,000円/年
なし 約36,000円~
134,000円/年
約4,800円~
21,100円/年

出典:筆者作成
※積立NISAは、平成29年度税制改正大綱から、2017年2月時点での情報をもとにしています。

iDeCoで掛金に対する税金は、いくらぐらい軽くなるの?

iDeCoの掛金は、例えば会社員なら年末調整で小規模企業共済等掛金控除という控除が使えます。控除により、税金を計算するもととなる課税所得から掛金全額を差引くことができるので、所得税と住民税の金額が軽減されます。この時、源泉徴収票を使うと軽減額の目安が分かるのです。

図表4 : 個人型確定拠出年金額の掛金の上限額と、所得税と住民税の軽減効果
課税所得 自営業者 会社員・公務員 専業主婦(夫)
月額6.8万円 企業年金なし 企業型確定拠出
年金のみ
企業型年金
あり・公務員
月額2.3万円
月額2.3万円 月額2万円 月額1.2万円
~195万円以下 123,200円 41,600円 36,200円 21,700円 なし
(専業主婦・夫は納税額がないため、掛金に対する税金の軽減はありません)
195万円超~
330万円以下
164,900円 55,700円 48,500円 29,100円
330万円超~
695万円以下
248,200円 83,900円 73,000円 43,800円
695万円超~
900万円以下
273,200円 92,400円 80,300円 48,200円
900万円超~
1,800万円以下
356,500円 120,500円 104,800円 62,900円
1,800万円超~
4,000万円以下
414,800円 140,300円 122,000円 73,200円
4,000万円超 456,500円 154,400円 134,200円 80,500円

「給与所得の源泉徴収票」の例です。①の「給与所得控除後の金額」は2,660,000円、②の「所得控除の額の合計額」は1,461,040円となっています。

出典:「本気で家計を変えたいあなたへ ~書き込むお金のワークブック~ <第2版>」前野彩著、日本経済新聞出版社

図の源泉徴収票の❶-❷の計算結果が、税金をかけるもととなる課税所得であり、その金額を上の表の「課税所得」に当てはめると、税金の軽減効果が分かります。

例えば、上記の見本で示した源泉徴収票の課税所得は❶-❷=1,198,960円となり、表の課税所得欄では「~195万円以下」に当てはまります。「会社員で企業年金なし」の人が上限の毎月2.3万円を積み立てた場合は、所得税と住民税で合計41,600円分の税金が軽くなるわけです。普通預金で積み立てても税金は軽くならないので、iDeCoの効果の高さが分かりますね。

ただし、これらのお金は現金で戻ってくるわけではなく、納めるべき税金が少なくなった結果、手取り収入が増えることを意味します。そのため、せっかく安くなった税金分を気がつけば使ってしまっている可能性もあるので、軽減された税金分はボーナス一括貯蓄、あるいは、12カ月で割って毎月積み立てるようにしましょう。すると、先ほどの年間41,600円が30年で約124万円になって、老後の安心を増やしてくれます。

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