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2014年度 教員のための金融教育セミナー

2.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

高等学校分科会

進行およびコメント:
帝塚山学院大学 人間科学部 工藤 文三 教授

実践発表およびワークショップ(1)

「経済シミュレーションを活用してライフスタイルの確立をめざす
~経済的視点で『家庭基礎』に対する学習意欲を向上させる~」
福岡県立博多青松高等学校 山﨑 乃布子 教諭

実践発表

今回発表させて頂く内容は、私が平成19年度から「家庭基礎」で実践しているものです。家庭科では、従前より「家庭経済と消費」の指導を行ってきていますが、2単位という制約のある「家庭基礎」の指導で、問題解決能力の向上を念頭に取組んだ内容です。「消費者教育の推進に関する法律」第三条第7項の「環境教育、食育、国際理解教育その他の消費生活に関連する教育に関する施策との有機的な連携を図る」点で、「食育」と金融教育の実践として報告させていただくことができたことに、感謝申し上げます。

私は、予防医学を目指し学校栄養士として働き始めましたが、子どもの食を司るのは大人であると気付き、高校の教員に転職しました。生活習慣病が一般診療医療費の約3割を占めるなどの現状の打開に、食育を通した発症予防の取組みが必要であることは周知の事実と思われます。大人になる直前の高校生に、将来、バランスのよい食生活を実践させるためにどうしたらよいかと取組む中で、私は「健康より経済負荷の軽減や嗜好による食事選択」という優先順位を変えることが行動変容に有効ではないかと仮定し取組んだことが、この実践のきっかけです。

実践は、(1)年間指導計画の見直し、(2)「ポートフォリオ評価」を導入した評価方法の工夫、(3)ICT(プロジェクター)の積極的な活用、(4)問題解決型の学習方法を授業全体で展開させていることが、下地となっています。家庭科では、人の一生を「時間軸」としてとらえ、金銭などの生活資源と衣食住、消費など生活活動に関する事柄という「空間軸」としてとらえ指導します。この両視点を融合させて、(5)経済シミュレーションを導入として取組ませ、指導時間の削減を図るために複数の単元内容を合体させました。また、年度最後の授業でアンケートを実施し、生徒の授業評価を参考に、翌年度の指導の改善に努めています。

『これであなたもひとり立ち』は、生徒たちに1か月分の収支を考えさせ、経済観念を持たせるように活用しました。まず、一人暮らしをしている将来の自分の1日分の食事を考えさせることから始め、食費として計算させます。消費者としての経済視点を持たせ、生活スキルの習得意欲や関心を生み出すことを狙っています。実際に、生徒たちの多くは自らの課題に気づき、「よりよい生活を送るための方法」を検討することで、その後の学習への関心・意欲の向上を表しています。

ワークショップ

生徒になったつもりで、経済シミュレーションを体験していただきました。最初に、参加者全員に食事選択演習として、1日分の食事について、「20代の一人暮らしをしている自分ならば、どんなものを選んで食べるか」を考えてもらいました。間食も含めて1日の食事を考え、「内食(うちしょく)」、「中食(なかしょく)」「外食」の別で食費を計算します。その後、1日の食費を算出し、1か月の食費に換算しました。

次に、1か月の経済計画を考案していただきました。『これであなたもひとり立ち』の給料明細を収入として読み取ること、住居費、光熱水道費については選択肢(資料)を提供し、生徒の思考負荷の軽減を図っていることを体験いただきました。そして、それ以外の生活に必要となる支出は資料を参考にしながら大まかに記入し、支出合計及び、収支の過不足を算出しました。ライフスタイルや生活に対する価値観による支出の違いや、生活にはさまざまなお金がかかっていることなど、演習を通して生徒が得るさまざまな気付きを先生方に確認していただきました。最後に、グループごとに気付いた点を整理し、発表して頂きました。

コメント

工藤先生より、この教材の価値と、学習活動という方法がうまくミックスして、幅のある授業が展開されている、ひとり立ちする時期に近い生徒には是非このようなカリキュラムを経験してもらいたいとのコメントがありました。また、参加者からは、「食生活について経済的な視点から分析をさせるというのは新鮮な発想である」、公民分野の方から「食など生徒に身近な具体例を取り入れる発想は生徒に考えさせやすい」など、有意義な実践であるといった意見が多数聞かれました。

高等学校分科会の模様(1)

実践発表およびワークショップ(2)

「アベノミクスで学ぶ日本経済」
神奈川県立麻生総合高等学校 岩村 夏樹 教諭

実践発表

私は教員になって9年目ですが、前職は証券会社に勤務していました。もともと教員になりたいという夢が先にあったことから、教員採用試験を受けました。教科商業の一分野ではありますが、その必要性から前職の経験を活かした金融経済教育の分野で子どもたちに教えることになりました。本日の「アベノミクスで学ぶ日本経済」という実践報告は、前勤務先の厚木商業高等学校で2012年から現在まで行っているものです。教えている期間中も具体的な政策がニュースなどでリアルタイムに取り上げられるなど、授業で扱う材料としては格好であったと思っています。

時事ネタを扱う中で一番気をつけているのは、新しい内容だけを教えるのでは理解が不十分になるということ。教える対象となる子どもたちは、経済に対してどのようなバックグラウンドを持っているのかというのは年々違ってきます。例えば、「失われた20年」や、「リーマン・ショック」なども含めて経済が低迷していた時期があったからこそアベノミクスという打開策が生まれてきたという段階を理解させることが大切です。古い内容、その前にあった内容について、自身が行ってきた実践を含めて、そこまでの経過を伝えていくことが重要だと思っています。また、アベノミクスについては、「日本経済はこうすれば良くなる」という論理の道筋が分かり易く、前向きであったということ、高校で教えたい経済現象の基礎というものをちゃんと押さえていたことが、実践授業として取り上げた理由になっています。

授業では、生徒への学習計画と想定される効果を示した「学習効果モデル」を作成し、自分自身の指導の羅針盤として活用しました。また社会現象を理解させることを主眼にしますので「アベノミクス“を”教える」ではなく、「アベノミクス“で”教える」という発想を常に持ち、その考え方などをいかに楽しく教えられるかを意識しました。また、自らの立場をなるべく中立に置き、アベノミクスの賛否ではなく、生徒にも「客観的に物事を見る」、「複眼的に見る」ということを学んで欲しいという願いも指導方法に反映させました。

「今、何が起こっているのか」、「今後、アベノミクスがどうなるのか」は注目されており、これからも追いかけていく部分ですが、もし将来的に新しい動きがあったときには、過去の内容を探ってみるとどこかに原因が見えたりするものであり、そのようなことを含めていくと授業として扱い易くなります。

ワークショップ

模擬授業としてワークシートを使い、まず「最近、よく聞く経済用語」を順番に挙げて頂きました。その後、金融経済用語や仕組みを理解させる方法として、「アベノミクスとは何か」を考えさせる事例を使い、展開方法を解説しました。次に、「今、『景気』っていいの?悪いの?」との質問に回答して頂きました。「なるほど、人によって考え方が違うんだ」ということを知り、生徒たちがいろいろなバックグラウンドを持っていることをイメージして頂くためです。

最後に、指導上の悩み、課題、授業のアイディアをグループごとに発表して頂きました。難しい用語について生徒に関心を持たせる工夫、身近で自分に関わっていると認識させることの大切さ、時事問題を説明する上での中立性の問題など、様々な意見が出されました。また、参加者からは、本実践授業にかかる年間指導時間、教科書との関連、個別の経済事象に関する質問など多数寄せられ、関心の高さが窺われました。

本実践事例は、第10回 金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2013年)優秀賞作品として当ホームページに掲載されています。
第10回 金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2013年)

コメント

工藤先生からは、本日は、山﨑先生は、皆さんに生徒の立場に立って作業をして頂くという形で、また、岩村先生には、授業の構想、テーマの抽出ということを実践して頂き、それぞれ重要で貴重な問題提起を頂いたこと、皆さんで有意義な情報交換して頂いたことなど、実り多い成果があったと評価頂きました。また、最後に、最近はいろいろなリテラシーが取り上げられており、金融についても「金融リテラシー」ということが提案されているが、是非色々な観点から子どもたちの将来を考えて、ご尽力願いたいと述べられました。

高等学校分科会の模様(2)

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