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2017年度 先生のための金融教育セミナー

【高等学校・大学向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

高等学校分科会1

進行・コメント:
独立行政法人教職員支援機構次世代型教育推進センター
大杉 昭英 上席フェロー
実践発表およびワークショップ(1)

「少子高齢化社会における社会保障制度について多角的に考えてみよう」
(3年 政治・経済)
東京都立国際高等学校 宮崎 三喜男 主任教諭

実践発表

社会保障について、ここ5年ほど、実践を重ねてきました。厚生労働省の「社会保障の教育推進に関する検討会」で教材を作るチームに加わり、同省職員から社会保障の現状につきレクチャーを受けたり、逆に学校における社会保障教育の現状について説明したりしながら、大学教授や家庭科の先生と一緒に教材を作り、実践の改善も行ってきました。

都内の3高校でアンケートを取ったところ、社会保障に対する生徒の関心は高く、未習生徒でも「年金は何歳から払うか」、「何歳からもらえるか」の正答率は意外に高く、「積立方式」、「世代間格差」も「聞いたことがある」、「なんとなく知っている」が多くありました。生徒は、「支払った年金が戻ってこなかったら損ではないか」、「高齢者はもらい得。若者は損。給付と負担が不公平ではないか」との素朴な疑問を持っているようです。

都内の若い教員30人にアンケートしたところ、社会保障にかける時間は「1~2時間」が8割弱、「3~4時間」が2割強。社会保障の歴史や制度について教えるだけでも大変な中でも、積立方式と賦課方式、年金制度の課題、世代間格差のテーマもほぼカバーされています。

私の場合、昨年度は9時間をかけ、これらに加え、年金事務所の方の出前講義を受け、班別のテーマ学習やワークショップを行い、最後に厚生労働省の職員に来ていただいて社会保障政策について生徒が提言しました。班別のテーマ学習では、年金のほか、子育て・働き方、介護、生活保護もカバーしました。ワークショップは二つ行いました。これほど時間をとれない学校の方が多いと思いますが、選択して実施していただく方法もあります。

ワークショップは二つ行いました。一つは、「あなたが考える社会保障制度とは?」です。社会保障のサービスの負担は、誰かが負います。家族(F)への依存が高い「家族依存型」(日本型)、政府(G)への依存が高い「政府依存型」(スウェーデン型)、市場(M)への依存が高い「市場依存型」(アメリカ型)があります。

「家族依存型」は、国民負担は小さいが、家族の負担が重い。子育てや介護のニーズを家庭で満たし、女性の負担が大きい社会になります。「政府依存型」は、政府がニーズを満たすため、福祉サービスを誰もが比較的平等に利用できる社会になります。一方、国民負担は大きくなります。「市場依存型」は、国民負担は小さいものの、市場で福祉サービスを購入するため、個人の所得に応じて福祉サービスの利用に大きな格差が生まれる社会になります。どれがよいと思うか、また、FとGとMはどのような割合がよいと思うか、を問いかけます。

もう一つは「医療保険」がテーマです。イギリスの医療保険制度に関するコラムを読み、議論してもらいました。コラムの内容は、イギリスでは、高い薬は、その費用に見合う効果がある(治る、延命できる)場合しか出してもらえない、冷たい仕組みとも言われるが多くの国がこの制度から学ぼうとしている、との主旨です。

ワークショップ

参加者に、実践発表で報告があった「あなたが考える社会保障制度とは?」のワークを主に行っていただきました。グループ内で議論したうえで、結果を発表しました。多くのグループが「政府依存型」(スウェーデン型)を支持しました。「家族の形が変わっている」、「消去法でこれしかない」、「介護や子育ての大切さをもっと認識すべき」、「税金は取られるもの、との意識を改めていくべき」といった意見が相次ぎました。

宮崎先生からは、「1)このワークの後、生徒からは『税金や保険料が高いのは嫌だが、ちゃんと使われるのであれば構わない』といった意見が聞かれる、2)『財政赤字が大きいので、高負担をしても中程度のサービスしか返ってこないんじゃないか』と言う生徒もいる、3)自分の親にあてはめたり、自分の『長生きリスク』を考えてもらうと理解は高まりやすい、4)社会保障は『支え合い』『幸福の分かち合い』であることを理解してもらいたい、5)『支える人を増やしていくにはどうすればよいか』も考えさせたい」との説明がありました。

コメント

大杉昭英先生より、次のコメントがありました。

私たちのくらしには「生活リスク」があります。本当に困ったときに、生存するためのお金を確保することが必要です。社会全体の中で、そのような資金を流していくためには、「制度」を作る必要があります。制度を作る際には、その根底となる「考え方」が大事になります。

「考え方」の一つは「保険の原理」、もう一つは「非対価性」だと思います。まず、「保険の原理」は、誰も皆、明日はどうなるかわからない。だから一番困った人の状況を改善するために皆でお金を予め出しましょう。運悪く一番状況が悪くなった人にそのお金が回すという約束をしましょう、というものです。社会契約の一つで、これが社会保険、年金の背景にあります。状況が悪くなるという結果が出る前に約束している点がポイントです。

「非対価性」とは、「払ったお金が何に使われるのか」という関係性です。年金については、本来「払い過ぎて損をする」という問題ではないのです。最悪の状況になる前に契約をした、最悪の状況になった人にお金が回るようにした、ということであって、「払ったお金が返ってこない」ということは本来問題ではないはずなのです。

もちろん、異なる考え方もあります。結果を重視する考え方もあります。「考え方」ですので、どちらが正しいというものではありません。当然、議論になります。そして最後は「程度」の問題になります。「どの程度負担するか」という問題です。

つまり論点は二つあり、社会保険の根底にある「最も状況の悪い人を救うことを事前に約束できるか」という問題と、「お金を払うことと便益が返ってくるということが一致しないときに、どの程度まで我々は負担すべきか」という問題です。宮崎先生も「答えのない課題にどう答えていくのかが公民科の宿命。熟議し、合意形成を図ることは主権者教育としても重要」とコメントされていました。その意味で、この実践は、「議論になるように、うまく組んである」と感じました。

高等学校分科会1の模様①

実践発表およびワークショップ(2)

「商品開発や起業を学んで」(2年 政治・経済)
新潟県農林水産部漁港課管理係 澁谷 亮輔 主任
(前 新潟県立十日町高等学校 教諭)

実践発表

新潟県立十日町高等学校に勤務したあと、現在は県の行政(農林水産部漁港課)に出向しています。本日は、前任の十日町高校において、新潟県金融広報委員会から「金融教育研究校」の委嘱を受けて行った実践について発表します。

実践内容は、「十日町市ビジネスコンテスト」に参加することを通じて、商品開発や起業を学ぶ、というものです。政治・経済の「日本の中小企業」の単元に位置付けました。この実践を行ったのは、1)生徒に、家計や消費者の立場から経済について考えるだけではなく、「企業」や「生産者」の立場からも考えさせてみたい、2)町の人が一生懸命「町おこし」をしている中、生徒も地域の「宝」を学び、「起業」について考え、地域を支え得る人材として成長してほしい、と考えたためです。

十日町の有名な「宝」には、1)「雪まつり」(毎年開催。2017年で68回目)、2)「大地の芸術祭」、3)「国宝 火焔型土器」(新潟県唯一の国宝で、約5千年前のものとされる)、4)「きもの」(京都に次ぐ高級絹織物の製造地)があります。

「十日町ビジネスコンテスト」は、ビジネスプランを考えたうえで最終的には本選会でプレゼンを行う、十日町市が主催するイベントです。受賞作品は市内の企業とのマッチングを行い、商品化されることもあります。対象は大学生でしたが、十日町高校2年生チームもオブザーバー参加させていただき、本選で「チャレコン大賞」に選ばれました。応募作品は「土器ドキ最中」として商品化されました。

実践では、まず、夏休みの課題として、十日町の魅力を考えてみたうえで、「こんなものがあったらいい」と思う商品の「コンセプトシート」を提出してもらいました。夏休み後、授業でグループに分かれ、どんな人をお客様にするか、サービスやセールスポイントをどうするか、どのように宣伝して売るか、といったところまで考えてもらいました。グループの代表を決め、次にクラスの代表を決めました。学校代表(=学年代表)を決めるのは、市の産業振興課にお願いしました。クラス代表作につき、企画書を作り込んだうえで、振興課の審査を受けました。

学校代表は、コンテストの本選会で「火焔型土器発信プロジェクト」とのプラン名で「とおかまち どきどきまんじゅう」についてプレゼンを行いました。「チャレコン大賞」に選ばれ、間もなく商品化されました。商品化の際、コスト面から包装が「着物のような生地」から「着物柄の包装紙」になる、「まんじゅう」が「最中」になる、との変更はありましたが、「地元十日町産のもち米を使った、火焔土器の形のお菓子」との点は変わりありません。自分たちの企画が受賞し、商品になったことについて、生徒たちは大喜びでした。地元テレビの取材も受け、自信をつけたようです。

ワークショップ

参加者は、ワークとして、生徒と同じく「十日町市ビジネスコンテスト」への応募作を考えるか、参加者の地元で商品化したい商品を考えるか、どちらかを求められました。全グループが前者を選択しました。スマホを使って十日町市に関する情報を集めた後、グループ内で議論しながら案を練りました。

講師が説明しなかった「宝」が次々と発見され(酒・居酒屋、地元出身作家、姉妹都市など)、有名な「宝」の見学と組み合わせたツアーの案などが企画されました。各グループの発表時には、提案の斬新さに何度も拍手が起きました。

ワーク終了後、「こういう実践は楽しい。地元愛に結びつき、高校時代の良い思い出にもなる。人生にプラスの影響を与えると思う」といった感想が聞かれました。

コメント

大杉昭英先生より、次のコメントがありました。

次期学習指導要領では、学校教育が「社会と繋がる」という点が重視されています。また、次期中学校学習指導要領社会科公民的分野には「起業」も内容として加わっており、今後、この「起業」が盛んに扱われるようになるだろうと思います。

澁谷先生の実践は、市のコンテストに応募し、受賞作品は市内の企業から商品化されるという点で、まさに社会と繋がっています。また、クラス代表作品は、プロ(市の産業振興課)の審査を受けており、社会の厳しさもわかるようになっています。このように社会のプロと連携するというのはとても大事なことだと思います。

高等学校分科会1の模様②

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