金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
6.中学校における金融教育
(3)中学校における金融教育の指導計画例
ここでは、中学校における金融教育の指導計画例を紹介する。これまで見てきたように、中学校においても、社会科、技術・家庭科(家庭分野)、道徳、特別活動、総合的な学習の時間等において金融教育を効果的に展開することができる。ここでは、各教科等における単元の指導計画例に加え、評価規準、特徴的な授業の詳しい指導案を示すとともに、授業において使用するワークシートも掲載する。ここでは下記の指導計画例の特徴を簡単に紹介したい。
社会科の第1の指導計画例では、家計運営のシミュレーションと自家用車やマイホーム購入の模擬商談を行う。民間企業から講師を招き、活発な交流を持つことによって、これからはじまる金融や経済の学習に向けて、多くの気付きを促していく。
社会科の第2の指導計画例では、生徒たちが作ってみたい会社のプランを屋台村方式で発表し合い、評価する過程を株式投資に模してとらえることを通じて、各種資金調達の方法について理解を促すとともに、企業の社会的責任や社会貢献にも目を向けさせる。
技術・家庭科(家庭分野)、総合的な学習の時間の指導計画例では、地域への感謝を込めて、販売できるものを製作し、商品の値段を決めるための討議を行い、実際に販売活動を行う学習を紹介している。この学習では、「相手意識に立ったものづくり」を意識させ、生徒の自己肯定感を高めることも目指している。
技術・家庭科(家庭分野)の指導計画例では、生活に必要な物資・サービスの選択・購入について学ぶ中で、消費者に関する法律や最近の消費者トラブルの事例を学ぶとともに、サービスの一種である金融商品の選択の観点についても学ばせていく。
道徳の指導計画例は、おかねに関する作文コンクールの受賞作品を資料として活用して、高齢者に対する悪質商法は、家族の思いを踏みにじるものであり、中学生であっても様々な販売方法や消費者の権利についての知識や関心をもち、家族を守る気構えをもつことが大切であることを学ばせるための指導例となっている。
特別活動の指導計画例は、多くの生徒が日常的に利用しているインターネットや携帯電話をテーマとして取り上げ、外部講師の講話を聞いたり、クラスでアンケート調査を実施したりすることを通じて、現代社会におけるトラブルの実態を学ばせるとともに、望ましい使用方法やトラブルに遭った場合の対処方法を考えさせていく指導例である。
総合的な学習の時間の第1の指導計画例では、広く行われている調べ学習の指導において、暮らしに身近な金融サービスをテーマとして取り上げる。具体的な調査方法としては、インターネットや訪問調査、学校図書などの利用が想定されているが、お金や金融サービスを題材とする上での有効なツールについても言及している。
総合的な学習の時間の第2の指導計画例は、全国の中学校で広く行われている職場体験の指導計画例である。多くの手作りの資料やワークシートを使って、単に何らかの職場を体験するというだけにとどまらず、現実の社会における仕事のなりたちや経済の仕組みについての理解を深めさせるための指導計画例となっている。
これらはいずれも学校で実践された事例であるが、指導計画例として紹介している。なお、指導計画例の総授業時数は目安であり、各学校の実情に応じた配分が望まれる。これらの指導計画例の全体または一部を取り入れることに加え、これらの指導計画例に含まれるアイデアや工夫を取り入れることも効果的である。さらに、同一学校段階の指導計画例だけでなく、他の学校段階の指導計画例も参考にすることが期待される。
中学校における金融教育の指導計画例
*1 各指導計画例の概要(実施学年・単元の目標・学習の評価・展開の特色等)、指導計画、本時の展開、ワークシート及び資料等が閲覧できます。
*2 金融教育の授業で実際に使用するワークシート・資料等を掲載しています。
*3 ウェブのみの掲載としています。