2.金融に関する消費者教育の意義および目的

一般に消費者教育は、市場経済が円滑に機能するうえでの重要なインフラストラクチャーともいうべきものであるが、中でも金融に関する消費者教育の重要性は一段と大きいものと考えられる。

これは、前述したように、金融分野において消費者の自己責任原則が一層求められるようになってきたという金融環境の変化によるところが大きいが、さらにこれに加えて、金融商品が一般の商品と比べて特殊であることにも由来している。すなわち、一般の財・サービスの取引においては、消費者はいわゆる五感を使うことによりその特性を直接認識し、評価できるものが多い。これに対し、金融商品の取引の場合は、情報を通じてのみ、その特性を認識し、評価せざるを得ない。また、金融商品の持つ個々の特性は、金融経済情勢の変化に応じて大きく変動しうるため、常に最新の情報を必要としている。

このように、金融に関する消費者教育の意義は相対的により大きいと考えられるが、その直接の目的は、金融分野において消費者の合理的な意思決定能力を高めることにある。そして、これを通じて、次のような効果が期待できる。

（1）消費者は多様な金融商品・サービスを利用することによるメリットを十分に享受することが可能となる。
（2）金融を巡るトラブルの発生防止・消費者保護に役立つ。
（3）健全で合理的な家計の運営およびそれを通じた市場機能の強化に資する。

一方、米国連邦準備制度理事会のグリーンスパン議長は、2001年４月の講演（「今日の経済に関する教育の重要性」）で「金融に関する消費者教育は、金融部門における技術進歩や新しい金融商品開発の恩恵を消費者が享受することを可能にし、消費者の経済機会を拡大する。また、多重債務者の発生を防止し、消費者の合理的な生活設計を可能にすることを通じて経済的な豊かさを最大化する」と述べている。