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日本の「ワーク・ライフ・バランス」最新事情

(働き方改革と男性の育休取得の推進)

ワーク・ライフ・バランス実現のためのさまざまな施策

依然として課題の残るワーク・ライフ・バランスの改善に向けた施策の1つとして、働き方改革が推進されています。

働き方改革の具体策としては、長時間労働の是正、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)、柔軟な働き方(テレワーク、副業・兼業など)がしやすい環境整備、ダイバーシティの推進、再就職支援、ハラスメント防止対策などが挙げられます。

働き方改革関連法は2018年7月に公布され、2019年4月から順次施行されています。

最近では、2023年4月に、中小企業の月60時間超の時間外労働の割増賃金率が引き上げられました。

大企業・中小企業ともに月60時間以下の割増賃金率は25%、月60時間超は50%となり、長時間労働の抑制などが期待されています。

また、妻にかたよりがちな家事・育児を夫と分担できる体制づくりの1つとして、2022年10月に、子どもの出生後、男性が8週間以内に4週間まで休みを取得でき、2回に分割することもできる「産後パパ育休制度」が施行されました。

通常の育休は休業中の就業が原則不可なのに対して、産後パパ育休は労働者と事業主が合意した範囲内で休業中に就業できる(労使協定を締結している場合に限る)ほか、申出期限も休業の2週間前までとするなど、男性が育休を取得しやすい仕組みとなっています。

2023年4月からは、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主に対して男性の育休の取得状況を年1回公表することが義務づけられ、制度利用の促進が図られています。

さらに、2023年3月末に、政府が少子化対策のたたき台として「こども・子育て政策の強化について(試案)」を公表しました【図表4】。

【図表4】少子化対策の内容(一部抜粋)
経済的支援の強化
  • 児童手当の拡充(所得制限撤廃、高校生までの支給、多子加算)
  • 出産費用の保険適用の検討
  • 授業料後払い制度(仮称)の導入
子育てサービスの拡充
  • 保育士の配置基準を手厚く見直し
  • 「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設
  • 「小1の壁」打破に向けた受け皿の拡大
働き方改革の推進
  • 男性育休取得率を2030年に85%に
  • 育休を一定期間に両親ともに取得した場合、育児休業給付を手取り実質100%保障
  • 子どもが2歳未満の短時間労働者への給付創設
  • 週20時間未満の労働者に雇用保険適用
  • 自営業やフリーランスが国民年金保険料の免除を育児期間も受け入れられる措置
(出所) 
内閣官房「こども・子育て政策の強化について(試案)を基に監修者作成

「経済的支援の強化」、「子育てサービスの拡充」、「働き方改革の推進」を3本柱に、2024年度から3年間で、集中的に取り組むとしています。

この中では、男性の育休取得率の大幅アップが目標に盛り込まれています。

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、女性の育休取得率はここ数年80%台で推移している一方で、男性の育休取得率は2021年度で13.97%です。

従来の政府目標は、「2025年までに取得率30%」だったところ、試案では「2030年までに取得率85%」を目指すとしています。

なお、特別養子縁組をした親や里親も育休取得が可能です。

出産や育児で仕事を休むことで収入が減ってしまうという課題の解消に向けても、さまざまな施策が進められています。

例えば、2023年4月からは、それまで1児につき42万円だった「出産育児一時金」が50万円に増額されました。

少子化対策の試案【図表4】では、現在は、育休中の手取り報酬が実質80%程度(社会保険料の免除分を含む)となっているところ、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合、給付率を手取り実質100%程度に引き上げる考えを示しています。

また、子どもが2歳未満の短時間労働者に対する給付創設も検討されています。

このほか、2023年4月には「こども家庭庁」が発足。

これまで厚生労働省や内閣府などに分散していた機能が「こども家庭庁」に1本化されました。

多様な生き方・健康で豊かな生活ができる社会を目指して

ここまでワーク・ライフ・バランスの現状について解説してきましたが、仕事と生活の割合は50:50である必要はありません。

自分の状況にあったバランスの取り方があるでしょうし、バランスが取れないことも実際には多いでしょう。

だからこそ大切なのは、制度を上手に活用し、仕事のために生活を犠牲にすることなく、生活のために仕事をあきらめることもない社会にすることです。

多様な生き方が選択できたり、健康で豊かな生活のための時間が確保できるようにすることが目的なのです。

子育て期のみならず、病気の治療あるいは親の介護に充てる時間など、仕事と生活の両立が必要となる場面は幅広く、ライフステージなどによっても変わっていきます。

国や自治体、企業による制度や仕組みの整備、学校教育による個人の意識改革などを継続して進めていくことが求められています。


つづく


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