あなたの資産を守る金融商品の保護
Ⅶ.保険契約者の保護
3.会社更生手続き
(1)更生手続き開始の決定まで
会社更生手続き開始の申し立てを受けた裁判所は、保険契約や保険会社のその他の財産について保全命令を出します。この保全命令によって、更生手続き開始が決定されるまでに破綻保険会社ができることは制限されます。これまでの例ではおおむね以下のとおりとなっていますが、実際には、当該保険会社等の発表の内容で確認する必要があります。
認められること
- 更生手続き開始の申し立てが行われた日以前に保険事故(死亡保険においては死亡、生存保険においては満期など)が発生している保険契約の保険金その他の給付金・配当金の全額支払い(ただし、当該保険事故に係る保険金の支払いによってもなお保険契約が終了しないものは対象外です)
- 補償対象契約の保険金その他の給付金・配当金の支払い(補償対象契約の保険金等の残りの部分については、後日更生計画に定めるところによります)
補償対象契約
Ⅶ.5. (1) 責任準備金の補償
*なお、更正手続中の補償対象契約の保険金等の支払いについては、破綻保険会社と保険契約者保護機構との間で当該支払いに係る資金援助の手続きが必要となります。
認められないこと(停止される業務)
- 新たな保険契約の締結、特約中途付加、保険金額および給付金額の増額、企業保険の引き受け割合の増加
- 保険契約の転換
- 保険契約の解約受け付け、保険契約失効時の払戻金の請求受け付け
- 保険金額および給付金額の減額、保険契約の特約の解約受け付け、企業保険の引き受け割合の減少
- 契約者貸し付け
- 保険契約の払い済み保険、払い済み年金保険(団体年金を除く)および延長定期保険への変更
- 保険料払い込み回数の変更
- 年金開始日の変更
- 保険料払い込み期間の変更
- 保険期間の変更
- 保険・年金の種類の変更
- 年金の一括支払い
- 保険契約者の変更
- 上で認められる以外の保険金その他の給付金・配当金の支払い
*契約者の保険料払込は破綻前と同様に行わないと、保険料自動振替貸し付け扱いになったり、契約が失効したりすることになりますので、注意が必要です。
(2) 更生手続き中(更生手続き開始決定から更生計画認可確定まで)
更生手続きの開始決定後は、管財人が裁判所の監督のもとに決定するところとなります。これまでの例では、おおむね更生手続き開始決定までと同様となっていますが、実際には、当該保険会社等の発表を確認する必要があります。
(3) 更生計画認可後
管財人の作成した更生計画が裁判所によって認可されると、この更生計画が定めるところにより、保険契約の継続が図られます。
保険契約の移転・承継等にあたっては、保護機構が責任準備金の一定割合まで補償しますが、更生計画において、以下のように予定利率の引き下げ等の契約条件の変更がなされることがあります。また、保険契約の移転・承継等が行われた後は保険契約の解約が可能となりますが、更生計画により早期解約控除制度が設けられる場合があります。
Ⅶ.5. (1) 責任準備金の補償
契約条件の変更
通常は、契約期間中、予定利率の引き下げなど契約条件を変更することはできませんが、保険会社が破綻し、更生手続きまたは行政手続きにより処理が行われる場合には、保険契約を引き続き適正・安全に維持するため、契約条件の変更を行うことが、法律(保険業法および金融機関等の更正手続きの特例等に関する法律)によって認められています。
予定利率の引き下げ
保険会社は、払い込まれた保険料を運用する際に、あらかじめ一定の運用利益を見込んでいるため、その分保険料を割り引いています。この割引率を予定利率といいます。したがって、払い込まれる保険料が同じで、予定利率以外の条件も同一であるとすれば、予定利率が高いほうが、受け取る保険金は多いということになります。
保険会社が破綻した場合、仮に予定利率などの契約条件が変更されなければ、その後の責任準備金の増え方は変わらず、保険金・満期返戻金等は、責任準備金の補償割合と同じ割合まで保護されることになります。たとえば、下図のような保険契約の場合、責任準備金の補償割合が90%であれば、当初の契約による保険金・満期返戻金等の90%までの支払いが保証されます。一方、予定利率が引き下げられた場合は、その後の責任準備金の増え方が緩くなるため、保険金・満期返戻金等の補償割合は、責任準備金の補償割合を下回ることになります。
なお、具体的には、保険種類等によって責任準備金の積み立て方が異なること、契約時期等によって予定利率の引き下げ幅が異なることがありますので、実際に保険金・満期返戻金等がそれぞれ何割まで保護されるかについては一概にいえず、個別に確認する必要があります。
早期解約控除制度の適用
保険契約を解約する場合、あらかじめ保険約款で定められた解約返戻金が支払われますが、通常、その額は一定の解約控除が差し引かれた金額となっています。早期解約控除制度では、通常の解約控除とは別に、保険契約の移転・承継等の後、一定期間内に解約する場合、当初の契約による解約控除よりも解約返戻金が少なくなる(制度適用期間内に解約すると、当初契約よりも不利になる)、特別な解約控除を行うものです。
保険という仕組みは、多くの契約者が集まることによって成り立っています。保険契約の移転・承継等を行っても、その後すぐに契約者が少なくなると、保険金等を支払うことができなくなって(保険契約が継続しなくなって)しまいます。早期解約控除は、一定の契約者数を維持し、保険契約を有効に継続させるための制度なのです。