大学生のための 人生とお金の知恵
I. 人生のデザインとお金
1. これまでかかったお金
1) 高校を卒業するまでにかかったお金
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あなたが生まれてから高校を卒業するまで、どのくらいお金がかかったのでしょうか?
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「期間×金額」で考えてみてください。高校を卒業するまで、「期間」は月数でみると200か月を超えます(18年×12か月=216か月)。「金額」を仮に月5万円としても1千万円を超えます。月10万円とすると、2千万円を超えます。
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1つの試算を挙げてみます。
高校卒業までにかかるお金(試算) 教育費以外脚注2 約2,220万円 学校教育費脚注3 公立コース 約190万円 私立コース 約1,150万円 (出所)金融広報中央委員会『これであなたもひとり立ち』を参考に作成脚注4
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教育費以外で2千万を超えています。学校教育費を含めると、公立コースで2千万円台半ばです脚注5。私立コースでは3千万円を超えます(家庭教育費<習いごと、塾など>や学校外活動費は、上表の試算には含めていません)。実際にかかったお金は、人によって異なりますが、「大きなお金がかかった」ことは実感できるのではないでしょうか。
2) 大学を卒業するまでにかかるお金
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大学に入学し、卒業するまでの4年間には、どのくらいのお金がかかるのでしょうか?
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最も安い国立の自宅生で600万円弱、私立理系の自宅外生では1千万円強です。
大学4年間にかかるお金(試算脚注6) 自宅生 自宅外生(寮生除く) うち入学金・授業料等脚注7 国立 560万円 860万円 240万円 私立 文系 750万円 1,050万円 430万円 理系 910万円 1,210万円 590万円 (参考)医学部 2,720万円 3,020万円 2,400万円 -
なお、忘れがちな費用として、「機会費用」があります。大学に進学したことに伴い、入学金・授業料等のほかに、1千万円近い機会費用が発生しています。
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機会費用とは、何かの選択をして、「機会を得た」=「別の機会を失った」ことに伴う費用です。逸失利益とも呼ばれます。
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ここでは、「大学に進学する」選択をし、その機会を得ています。これは「大学に進学せず、就職して働く」機会を失ったことを意味します。仮に、高校を卒業して就職していたら年250万円の収入があったとすると、4年間では1千万円の機会費用が発生することになります。
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機会費用も含めて、大学進学にかかる費用は、さまざまな能力を高めるための「投資」と考えられます。大学に進学することは、多額の投資をしていることになります。大学進学にかかる費用を上回る能力を身につけることが望まれます。
コラム1奨学金
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すでにみたように、大学で学び、卒業するまでには、大きなお金がかかります(入学金・授業料、生活費など)。そのお金を、どのように賄っていますか?
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大学や専門学校に進学した人の約半数は、何らかの奨学金を利用しています。
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最も利用者が多いのが日本学生支援機構の奨学金です。同機構の奨学金は貸与奨学金が中心です。大学生の約2.7人に1人が利用しています。貸与奨学金は、返済(返還)する必要があります。
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*2017年度から給付奨学金(返済する必要がない奨学金)も導入され、その後、拡充されてきています。給付奨学金については同機構のウェブサイトをご覧ください。
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貸与奨学金には、第一種と第二種があります。第一種は無利息です。第二種は利息付です(大学在学中は無利息)。いずれも、卒業の半年後(7か月目)から毎月、口座引落しで返済することになります。
貸与奨学金=返済が必要 | 給付奨学金 返済が不要 |
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第一種=無利息 | 第二種=利息付 |
返済の例
借りた額 | 返す額 | 返す期間 | 毎月の返済額 |
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2,400,000円 | 2,400,000円 | 15年(180か月) | 13,333円 |
借りた額 | 返す額 | 返す期間 | 毎月の返済額 |
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2,400,000円 | 金利0.07%の場合 2,413,426円 |
15年(180か月) | 13,407円 |
金利3.0%の場合 3,018,568円 |
16,769円 |
*金利0.07%は2019年度卒業生の適用金利(2020年3月末)。金利3.0%は上限金利。
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23歳から返済を始めると、これらの例では返済が終わるのは38歳です。繰り上げ返済も可能です。
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返済できずに延滞した場合、延滞金利(年率3%)が課されます。3か月以上延滞した場合、信用情報機関に登録され、クレジットカードを作れなくなったり、住宅ローンを組めなくなったりします。延滞期間が長くなると、延滞金利によって返済すべき額が大きくなっていきます。
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経済的理由により返済が困難な場合、月々の返済額を1/2または1/3にしてくれる減額返還制度があります。返す期間は長くなりますが、第二種の利息の支払額は変わりません。返済が困難な事情がある場合、期限を先延ばししてくれる返還期限猶予制度もあります。猶予してもらうためには毎年申請する必要があります。猶予期間は原則として通算10年が限度です。
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3か月以上延滞している人は15.7万人です(2017年度末)。返済者に占める割合は3.7%です。
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貸与奨学金は、進学するために借りているお金です。社会人となってしっかり収入を得て、奨学金を返済できるよう、学生時代に能力を高めることに役立てましょう。
(出所)本コラム中の日本学生支援機構の奨学金に関する記述は、同機構の「奨学金ガイドブック2020」「給付奨学金案内(2020年度版)」「奨学金事業への理解を深めていただくために(平成31年2月)」などを基に金融広報中央委員会が作成
脚注
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「教育費以外」の内訳は、食費約500万円、こづかい・交際費約410万円、住居費約400万円、通信・交通費約340万円、教養娯楽費約190万円、水道光熱費約140万円などと試算しています。
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「学校教育費」のうち、「公立コース」は幼稚園から高校まですべて公立、「私立コース」はすべて私立に通った場合の試算です。幼稚園は2年として試算しています。
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『これであなたもひとり立ち』のワーク2「私の命を育んだお金はいくら?」は、生まれてから高校を卒業する18歳までの間に、どのくらいのお金がかかったのかを計算するワークです。同書の教師用『指導書』に、参考計数も掲載しています。上表の試算は、同書(2020年3月版)を参考にした試算結果です。
これであなたもひとり立ち
これであなたもひとり立ち指導書 - 5
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学校教育には、税金もかかっています。たとえば、公立学校の児童・生徒1人に、小学生では約88万円、中学生では約105万円、高校生(全日制)では約112万円が1年間に支出されています(2018年度)。これらを合計すると、小・中・高の12年間で1千万円以上の税金がかかっていることになります。
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金融広報中央委員会が『私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果』(文部科学省)および『学生生活実態調査』(全国大学生活協同組合連合会、2019年10〜11月実施)に基づいて行った試算です。
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「入学金・授業料等」以外の支出は、生活費です。自宅生で約320万円、自宅外生で約620万円と試算しています。