金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2020
実践発表・ワークショップ
「主体的・対話的で深い学びを実現する授業展開」
- 講師
- 東京都立西高等学校 指導教諭
- 篠田 健一郎氏
<実践発表>
今日は「主体的・対話的で深い学びを実現する授業展開」ということで、本校で長らく1年生の総合的な学習の時間を使って、主に12月から3月に行ってきた「NPOをつくろう」という活動をご紹介します。新学習指導要領では、身に付けた知識を用いて、課題や問題を見つけ、解決策を示す力が求められています。知識を身に付けて終わりではなくて、知識を身に付けたところから始まるということです。
この「NPOをつくろう」の活動で鍛えられる力を2つの観点から整理すると、一つは、新学習指導要領の目標でもある、身に付けた知識を用いて課題を解決しようとする力の涵養、もう一つは、他者との関係を良好に保ちながら、関係する人すべてに良き結果をもたらそうとする力の涵養です。教科教育では産み出せない総合的な力を経験すること、生徒一人一人が持つ英知を結集し、広く豊かな学びを展開することがこの活動の目指すところです。
これまでの本校生徒の作品例をご覧いただくと、「女性に護身術を教授する」、「農家が6次産業化できるよう応援する」など、柔らかい頭で自由な発想を生み出しているように見えながら、実は現実の社会に潜む課題に鋭く迫っていることが分かります。社会と自分との接点を感じることで、生徒の社会への関心は高まります。様々な教科でちょっとした工夫をすることによって、生徒は刺激を受け、勇気付けられ、自発的に学びの意欲を持つようになると私は考えています。
この「NPOをつくろう」の活動は、どの学校でも比較的取り入れやすいと思います。それでいて、色々な学びの要素がちりばめられています。この後、オンラインのグループワークで、実際にこの活動を体験していただきます。オンラインでのグループワークということで、不安な方もいらっしゃるかもしれませんが、生徒の学びにおいても、失敗こそが生徒を育てます。私は、生徒には取り返しのつく失敗をどんどんしてもらいたいと考えています。私たち教員も常に学びを継続しているわけですから、今回のグループワークもどうか失敗を恐れずにチャレンジして頂ければと思っています。
<ワークショップ>
ワークショップでは、オンライン上でグループに分かれ、「自校で社会貢献活動を行うNPOを立ち上げるとしたら」というテーマで案を出し合い、企画書づくりを行いました。企画書づくりにあたっては、コンセプトや内容だけでなく、企画の強みや継続性、資金調達の見通しまで盛り込みました。それぞれのグループの企画をオンライン上でプレゼンテーションし、最終的にどのプレゼンテーションがよいと思うかを投票しました。プレゼンテーションでは、「見て触って味わう」をテーマに、地元の伝統産業と食材、恵まれた自然を活かして地域活性化を目指すNPOや、すべての子どもが教育を受けられるように支援する目的で、使用しなくなった参考書などを無償で配付するNPO、子育てをしながら働いている保護者を支援するために、高校生が送り迎えやお弁当を届けるサービスを行うNPOなど、様々な着眼点でのアイディアが発表されました。
篠田先生からは、次のようなコメントがありました。
どのグループでも、ご自身の学校や地域の強みを生かしたよいアイディアがたくさん出されていました。また、この過程の中で、普段見過ごしていたことを改めて見直す機会になったり、他の先生のお話を聞いて、そういう考え方があったかと気づくきっかけになったりしたのではないかと思います。この「NPOをつくろう」の活動とグループワークの成果をぜひそれぞれの学校に持ち帰り、さらに工夫して実践していただければ嬉しく思います。
講師プロフィール
東京都立両国高等学校、蒲田高等学校、富士森高等学校を経て西高等学校公民科指導教諭。全国公民科・社会科教育研究会事務局長。金融広報中央委員会「学校における金融教育の推進に関する懇談会」高等学校分科会委員、『金融教育プログラム』指導事例執筆者、「先生のための金融教育セミナー」講師多数。