経済指標の見方
経済データの基本的な読み方
4.鉱工業生産指数
製造業に従事する企業(いわゆるメーカー)がどれだけの製品を生産したかを、量的な物差しで示すものです。ある月の生産量が前年同月に比べてどれだけ増減したかで表されるのが普通です。
どんな意味があるの
景気のいいときには消費が盛んになるため、これを見越したうえで企業は製品の生産量を増やすのが普通です。つまり生産量の変動は景気の動きを端的に示すバロメーターだとも言えます。わが国では産業全体に占める鉱工業の比率は趨勢的に下がってきていますが、今でも景気全体の動きを見るうえでは極めて重要なデータです。調査から1ヶ月程度で発表されるため、国民経済活動全体の変動を敏感に捉えるということで注目度が高いデータであり続けています。
鉱工業全体の動きを把握するために毎月集計される鉱工業指数(経済産業省発表)には「生産指数」「出荷指数」「在庫指数」などの指数から構成されています。このうちもっとも代表的でかつ頻繁に用いられるのが「生産指数」です。500を超える品目について、それらの生産水準を調査、基準年を100としたうえで指数化したものです。
5.機械受注実績
機械メーカーが他の企業等から機械の購入の注文をどの程度受けたか(受注)を示します。内閣府が毎月集計、発表します。この統計で明らかにされるのは、主に「外需」(海外からの受注)、「官公需」(官公庁からの受注)、「民需」(国内民間企業からの受注)です。このうち特に注目されているのは電力・造船会社からの注文を除いた民需です。これは電力・船舶の分野は景気に関係なく設備投資が行われがちであり、かつその受注量が非常に大きいため、景気指標として使う場合にはこれらを除いたほうが使い勝手が良いからです。
どんな意味があるの
生産に携わる企業はほとんどの場合、製品を作るうえで、機械設備を必要とします。生産活動が活発な時期には機械の消耗も早く、新規の機械設備への需要が高まります。あるいは増産の必要があるときには、より高機能の機械に入れ替えることもあるでしょう。この機械受注実績は、企業の設備投資の動きをとてもよく示すデータです。
しかも重要な点は、このデータが機械の納品(販売)時点で集計されるものではなく、受注時点でカウントされるデータであるということです。つまり、メーカーの設備投資、生産意欲をいち早く反映するという特性を持っているのです。「企業の設備投資の動きを半年程度先取りする」という意味でとても重視されるゆえんです。
6.貿易・サービス収支
我が国が一定期間の間に諸外国との間で行った経済取引を総合的に示すものが国際収支ですが、このうちモノの輸出入(貿易)とサービス収支を合わせたものが、貿易・サービス収支です。サービス収支は主に旅行と輸送に伴う収支から成っています。
どんな意味があるの
貿易収支は一次産品などの原材料、製品などの輸出入を示しますが、我が国が全体として海外にモノを売って経済を成り立たせているのか、それとも売るよりも買う量の方が多いのか等を示します。一方、我々が積極的に海外に旅行して、たとえばバリ島で現地のレストランで食事をすれば、これはサービス収支の赤字としてカウントされることになります。あるいは、海外から原油を輸入した場合には一般には外国の貨物船、タンカーなどでそれが運ばれるわけですが、この場合の輸送運賃を海外に支払うことになりますが、これもサービス収支の赤字要因としてカウントされることになります。財務大臣の委任により、日本銀行が毎月作成し、財務省と日本銀行により発表されています。
我が国は古くから輸出立国であるため貿易収支はほぼ一貫して黒字を続けていますが、サービス収支は逆に赤字傾向が続いています。